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エピソード34 結果が欲しい

「はい、冷たい紅茶です。他の人もどうぞ」


京が1階のカフェからみんなのお気に入りのドリンクを持ってきてくれる。


「ありがとうな、京は気が利くな」


「今日も暑いですね」


彼女達と出会って、3ヶ月。今はいわゆる夏休みの時期である。


基本的にカフェは休みは行っていないが、夏休みでも教師は仕事をするし、部活動や生徒会活動もある。


そのため、夏休みでもカフェが空いているいる日があり、俺達はここに集まっているというわけだ。


「あれ? 杏里ちゃんこの人攻略したの? 前こっちのキャラの方がいいって言ってなかった?」


「別にいいだろ。やってる途中に気が変わることもある」


「私まだこのキャラ攻略してないのに~」


「先にやったもん勝ちだ」


杏里は教室では落ち着いているが、このメンバーの中ではキャラを隠さない。


ついでに先輩のクリアしてないゲームやるとか、ちょっと図々しくなってるし、表情も生き生きしてる。何だあのドヤ顔は。


「ご主人様、御用を申し付けてくれ」


「間違ってる。頼むからその呼び方をやめろ」


「す、すまない。太一様。何かして欲しいことはないか?」


「それも違う。前みたいに呼び捨てで呼べ」


「そんなことをしたら嫌うだろう。この太った私に!」


由美はモデルの仕事をしたり、親から俺との関係を応援されたのに、相変わらず後ろ向きだ。


それだけでもそこそこ面倒くさいのに、俺がメイド好きってことを杏里が由美にばらしたものだから、俺に嫌われないように、メイド風のしゃべり方をし始めるというカオスな行動に出た。


はじめは、常時このしゃべり方で、メイド服まで持参しようとしたので、全力で説教した。


そのたびに少し揉めたが、ちょっと太っているスーパーネガティブモードでない限りは、普通にしゃべってくれるようになった。


つまり今はスーパーネガティブモードということである。面倒くさい。かといって無視しても面倒という悪循環。相変わらず由美への対処は正解がない。



「太一君、縛ってくれていいんだよ」


「何を言ってんだ!」


水城がどこからかロープを持ってきて、俺にそれを渡す。


「太一君、最近拘束にはまってるんだよね。イメージだけじゃつまらないでしょ~」


水城は暴走がひどくなった。


下ネタを水城が言っていると絶対に俺は構う。そしてそれがうれしいのか、最近では下ネタだけでなく純粋に俺に何かを求めてくるということをし始め、性癖をさらに向上(ある意味下落)させてしまった。


しかもどこから情報を得てくるか知らないが、最近の俺のお気に入りを的確に当ててくる。


メイド服といった衣装から、状況ネタまで仕込んでは俺に見せ始めてくる。


水城はこの性癖を一応は隠しているが、性癖が強くなったため、時々クラスでも暴走しそうになるので、俺がフォローしなければならない。フォローすると彼女は喜んでさらに暴走する。

なぜ俺の実害があることに、俺がフォローしなければならないのか。自転車操業。



「今日のお弁当はどうでしたか?」


京は俺に質問してくる。


学校が休みでも、約束どおり週に2、3回は昼食を作ってくれる。


家で作るのではなく、京が自分で作ってきたものを、俺の家に持ってくるだけだ。


なんでも、約束したことは守りたいとのこと。確かに俺とした約束はそうだ。それでも長期休みの場合は例外だろうといったのだが、これを止めると、俺の争奪戦に不利になるということで、断らない。だが、家に上がって料理をすると有利すぎるから、それはやらないとのこと。真面目すぎるわ。


来てもらって何もしないのは悪いので、やはりお茶の1杯くらいは出す。

すると、ちょっと散らかった部屋を綺麗にしていくので、かえって申し訳ない。


俺が昼食に使ったごみも全部持って帰る。ただ、箸が使い捨てじゃないのに、時々変わっているのは気になる。きっと清潔にしてるだけなんだよな。そういうことにしておこう。


「たっくん、昨日は手伝ってくれてありがとね」


先輩は他のメンバーと比べると俺に甘えることが多くなった。水城とは違う意味で俺に構ってくる。


受験シーズンで、生徒会の仕事の引継ぎもある先輩は結構忙しく、相変わらず女子力0の生活を送っていたので、京とは逆で、俺が先輩のお手伝いをしていた。


生徒会の仕事を少し手伝ったり、家事を手助けしたりした。

先輩ほっとくと、ジャンクフードだけの1日を過ごしているときもあったからな。

お母さんだけでなく、お父さんにも任された以上は、体調不良で倒れるようなことだけはあってはいけないのだが、この人基本的には人に頼らないので、こっちから助けるか、明確な理由がないとなかなか甘えてくれなかった。


はじめは断っていたが、今はなんとなく自然になってくれた。


そんなこんなで1学期が終わり、今の夏休みに至るというわけである。



「このままってどうなのかしら?」


先輩がそう言ったのは、夏休みの序盤が終わりかけの頃である。


「なんのことですか?」


「今のままでも楽しいけど、そろそろ結果が欲しいの」


「美香先輩、それは今の関係のことですか?」


京が尋ねた。彼女も先輩と同じで、学年が違うことに不安を感じているので、いち早く気づいたのだろう。


「ええ、私は夏休みが終わったら、生徒会の引き継ぎをやって、推薦を貰ってる大学の受験をして、万が一不合格だったときのための大学選びに、合格しても、新しく住む場所を探したりしているうちに大学生になるわ。年明けには、実家に戻っていろいろやらなきゃいけないし、時間がないの。だから、どういう形でもいいから、1つ決着をつけたいの」


俺と先輩以外の4人はまだ1年以上付き合いがあるが、先輩はそうではない。話を聞く限りでは、夏休みが終わればこうしてカフェに来れることも減る。


先輩は時間的に圧倒的に不利ではある。そういう焦りから、今の発言があったということか。


「美香先輩」

「美香先輩様……」

「美香先輩~」


杏里、由美、水城の3人も複雑な表情を浮かべた。


ゲームして、メイド言葉を使って、ロープを持ってという絵面は最低に近いが。


「でも、いきなり先輩に、5人の誰がいいですか? って聞くのは無理ですよね」


「まぁ、それが出来ないからこうなってるんだし」


この3ヶ月、多少の誤差はあれども、大体皆色々秘密を知って、家族にも嫌われることなく、同じ感じで5方向の外堀が埋まっていて、全く差がついていない。


「だから、6人でどこか行きましょう。他の人の邪魔が入らないところで何日か親密な時間を過ごして、たっくんに答えを出して欲しいの。わがままでごめんなさい。でも、自分の知らないところで、結果が出るのが怖いから、お願いできないかしら?」


「…………。美香先輩のいうことは最もだと思う。時間で勝負したら、確かに不公平だしな」

「け、結果を出すのか? それでも皆と一緒にいられるのか? それだけは心配だ」

「わ、私は太一君がいいなら~」

「私もそうですね。学年違いますし、美香先輩と同じ気持ちです」


「ありがとう……」


「でも今から6人も旅行できるところってありますかね?」


水を差すようで悪いが、俺は先輩に聞く。


「そうね……、予算のこともあるし、それに高校生だけじゃ厳しいかしら? こういうときゲームだとお嬢様が別荘を持ってるものだけど、杏里ちゃんか水城持ってない?」


「あることはあるぞ」

「私もあるけど~」


「そうよね、都合よくそんなのはない……、ってあるの?」


さすがお嬢様、そして謎のノリ突っ込み。


「でも美香先輩~、多分杏里ちゃんの方かいいと思います~。場所がお父さんが海外に出るときに使うものだから、海外にありますし、面倒です」


「杏里の別荘はどこにあるんだ?」


「私のじゃないけどな。場所自体は遠くない。だが、場所が公共交通機関を使う場所じゃないから、車は必須だ。うちには遊びで使える車はおいてないから、場所しかない」


「あ、だったら赤堀さんにお願いできるよ。あの人車持ってるから、時々送迎してもらえるんだ~」


「それは水城の家の車じゃないのか?」


「ううん、赤堀さんの私物。だから、もし予定さえ空いてれば多分乗せてくれるよ。赤堀さん車に乗るのが大好きで、ドライブが趣味だから。ちょっと聞いてみるね~」


そう言って水城が携帯電話を取り出して、電話をする。


「あ、もしもし赤堀さん。実は……」


その様子を俺達はドキドキしながら聞いている。


「うん、うん! ありがと~」


水城が電話を切る。


「で、どうだった?」


先輩が尋ねる。


「うん、大丈夫ですって~」


「やったー、なら行けるね」


「そうか。じゃあ後は私が日程を確認しておく。少し時間をくれ」


その日は杏里は正義さんと連絡を取れなかったので、話は一旦後日になった。









感想、アクセスありがとうございます。


前回も書きましたが、この全員回で最後の話になります。


まだ書いておりませんが、大体何を書くかは決めていますので、おそらくエピソード40前後になります。


よろしくお願いします。

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