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エピソード32 なんか言い方がおかしいな?

「先輩、ありがとうございます」


俺は京と一緒に買い物を終えて歩いている。


今日突然、京の両親と度会うことになったのである。


「すいません、急に呼んじゃって」


「いや、もっともな話だと思う。俺のうちに泊まってるしな」


5人同時とはいえ、思春期の娘を同じくらいの年頃の男子の家に泊まらせたのである。


一応許可はもらったとはいえ、1度挨拶をしなくては。


しかもなんだかんだで、京以外のメンバーは、家に行ったり両親に会ったりとしているので、京だけ断るのは公平性がない。


仮に誘われなくても俺から提案する必要はあった。


「家の前には何度も来てもらってるんですけどね、家に呼ぶのは初めてですね」


「あ、そうか」


京は家を知っていたので新鮮味が薄いかと思ったが、確かにいわれてみると、他のメンバーと大差ない。


「ゆっくりしていってくださいね、ゆっっっっっくりしていってくださいね」


「今日は着替えとかも持ってきてないから、夕食だけしか無理だなー」


なんか笑顔で言われたのに、ゆっくりしていってくださいが怖かった。2回言った上に、2回目に力を込めているのも怖い。


「あ、お姉ちゃん、お帰り」


「ただいま、今日はいい子にしてた?」


京の家まで行くと、女の子3人と男の子2人が出迎えていた。


京は下の子に好かれてるんだな。


「そっちの人は? あ、もしかしてお姉ちゃんがいつも言ってる人?」


「うん、挨拶して頂戴」


京はしつけもきちんと教えているのか。本当にきっちりしてるな。


「「「「「はじめまして、おにいちゃん」」」」」


本当に小さい子から、中学生くらいの子まで声が揃ってきちんと挨拶してくる。


「なんか新鮮だな。俺兄弟姉妹がいないから、こういう感じで呼ばれるのはむずがゆい」


「そうですか? じゃあ、もう1回呼んであげよう」


「「「「「これからよろしくね、お義兄ちゃん」」」」」


「京。今なんかちょっと言い回しが違わなかったか?」


なんか1回目のおにいちゃんよりも、心がこもっていたというか、純粋だったというか。


「気のせいですよ。先輩」


そう言って空いている手で、俺の腕に絡み、頭を肩に預けてくる。


「お姉ちゃんが甘えてる」

「お姉ちゃんがお父さんじゃない人に甘えてる」

「お姉ちゃんがお母さんじゃない人に甘えてる」

「お姉ちゃんが申し訳なくなさそうに甘えてる」

「お姉ちゃんがとっても自然に甘えてる」


下の兄弟姉妹達が俺と京を見て驚いている。


「京は家でもあまり甘えないのか?」


「うん、お父さんとお母さんがいても、私達に譲ってくれるから、お姉ちゃんが甘えてるのなんて見たこと全然ないよ」


「お友達にも頼られてて、遊んでてもせかせか世話をやいてるんだもん。そんなお姉ちゃん初めてみた」


「お姉ちゃん可愛い~」


「こーら、からかわないの。先輩ごめんなさい」


「い、いや、別に大丈夫だから」


「お義兄ちゃん、遊んで~」


「ああ、付き合ってやるよ、だけどそのお義兄ちゃんというのはなんとかならないのか?」


「えー、じゃあお義兄さん?」


「全く意味がない!」


「太一お義兄ちゃん?」


「後半何とかならない?」


その後色々思考しましたが、あきらめました。さすが京の兄弟姉妹、1度思った考えを変えるのは難しいようだ。



「はじめまして、岩瀬太一です」


「はっはっは、堅い堅い。そんなに畏まらんでもいい」


「ええ、京の好きな人に1度会いたいって呼んだのは私達だから」


俺は夜に、食卓の中心に案内されていた。


家族全員で囲む食卓は非常に広く、にぎやかだった。


「私とお母さんで料理を作りました! 先輩是非召し上がってください!」


京と京のお母さんが沢山の料理をどんどん置いていく。


京の料理は基本的に学校でもらう弁当と、1度だけ世話になった勉強会のときのハンバーグ。


だが、いずれも本気ではなかったようだ。


京は自分の家ではなくても、あたかも自然に調理する。


それはつまり自分のホームであれば、もっと自然に料理が出来るということ。


しかも京に料理を教えた母も協力して作っているのだ。お金を取れるレベルのクォリティに仕上がってしまっている。外食する必要性を感じないレベルだ。


「わーい、すごい豪華だ。今日誰か誕生日なのー」


「違うって、今日はお義兄さんの歓迎会よ」


「お義兄ちゃん、毎日来てよー」


「普段の料理だって、美味しいだろう?」


「美味しいけど、2人で一緒に作ってることなんてめったにないんだもん。楽しそうで料理ももっと美味しくなるからー」


「お父さんとお母さんも一緒にいるのは、珍しいしねー」


そういえば京が家事をきちんと覚えているのは、両親が忙しいからだったな。


「俺のために無理に時間作ってくれたんですか?」


「そんな顔をしなくていい。今日は私も母さんも元々休みだ」


「皆が楽しそうでいいわ。太一君すっかり懐かれてるわね」


元々京が俺のことを紹介してくれていたこともあって、非常に家族全員が友好的であった。


「あ、お姉ちゃんはお義兄ちゃんの横だよねー」


ちょっと上の子が気を使って俺の横を空ける。


「もー、でもありがと」


そして俺の横に京が座る。


「じゃあ皆手を合わせて」


「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」


「はい先輩、お箸です」


「あ、ありがとう」


「ん~、これおいしー」


「うん、こっちはお母さんが作った奴だね」


「あ、それ2個目だろ! 9個しかないのに2個食べるなんて!」


「落ち着いて、私のをあげるから」


「先輩嫌いなものここにあります?」


「い、いや何でも食べられるから」


「じゃあこれも食べてよ」


「こら、すいません先輩」


「ごめんね、何でもっていった俺が悪かった。さすがに皿は食べられない」


「じゃあこれを食べて~」


「こーら、嫌いなピーマンを押し付けない!」


「はっはっは、いつも以上に盛り上がっているじゃないか」


「ええ、すごく楽しいわね」


「いつも騒がしくないんですか?」


「普段は私や母さん、それに京に気を使ってか、ちょっと大人しめだ。私達が3人ともいて、さらに甘えられる兄がいることで、皆安心しているのだろう。君のおかげだ」


「京ちゃんから話を聞いただけだったけど、すごく太一君のこと気に入ったわ。うちの子たち性格バラバラなのに皆あなたに懐いているんだもの」


そして盛り上がるまま、食事が進んでいった。


そして食事が終わると、京とお母さんが片付けをしていて、お父さんが俺に話があるということで、食後のお茶を飲みながら、話をする。


「時に太一君、君は京以外の女子にも人気があるそうだね」


「あ、ご存知なんですか?」


「うむ、京は全て隠さず話してくれているからな。君のところに外泊を許したのもそのことが理由にある」


ああ、なるほど。男子の家に泊まるとしても、女子が他に4人もいればよほど何もないだろうということか。てっきり京が、もう完全に家族に関係を納得されてるかと思った。



「まぁ仮に1人でもOKを出したがね。京はもう十分すぎるほど人を見る目はあると思うからな」


違った。やはり外堀が完全に埋まっている。


「あのー下の子も俺と京のこと知ってるんですか?」


「うむ。京が話しているからな」


京まったく隠す気ないな。


「俺を皆がお義兄ちゃんって呼ぶんですけど、すごく親しみがこもっててまるで本当の兄みたいな呼ばれ方なんですよ」


気になることを聞いてみた。


「皆楽しそうだな。京の次に年上なのはは13歳だから、まだ甘えられるよりは、甘えるという年齢だ。やはり兄と姉ではまた甘え方が違うのだな。特に弟たちは嬉しそうだ。ありがとう」


「それは結構なんですが」


「京も君には甘えているようだ。あの子はしっかりしているし、気遣いをしすぎて甘え方が下手だった。しかし、最近は、しっかりしながらも、自然に私達に甘えてくれることがある。もちろん弟たちの前では見せないがね。あの子のことをよろしく頼むよ。できるならば、うちに来てもらって、一緒に過ごしたいと思っているが」


俺婿養子なんですか?


とりあえず、あまり高津家に来過ぎると堀がどんどん埋まってしまいそうで、埋まりすぎて山を作りそうだ。

だが、危険であることを感じつつも楽しく過ごせた。


普段1人で食べているご飯よりも温かみがあって美味しかった気もする。他のメンバーの家と比べると、すごく家族愛を久々に感じて懐かしくもあった。









ちょっと今回会話が多めで読みづらかったらすいません。


ただ、大家族のガヤガヤ感があるみたいでいいと思ったので、このまま書きました。

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