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エピソード24 これが彼女の本当のもの

この回はどうしようかものすごく迷いました。

これを投稿するとかなり物語が制限されますので、勢いで書く自分には少し大変になりますので、どこかで毎日投稿ができなくなるかもしれないです。



「お嬢様ですか? 先ほどお兄様と一緒にあちらに行かれましたよ」


「ありがとうございます」


周りの人に聞いてみると、1人の使用人が杏里の行動を知っていたので、教えてもらった。


お兄さんと一緒と言うことは、何か話すことがあったのかな?


「えーと、多分この辺だよな?」


方向を示してもらった方に向かうと、大きな木が立っている場所についた。


その木の向こうには入るときに見た大きな壁しかなく、周りには建物もない。この辺りにいると思うのだが、人の家の地理はよくわからん。


「ん? あれか?」


大きな木の下に、2つ影が見えた。1つはとても大きな影で、1つは小さいなんとなく見慣れた影。


その小さい影はなんとなく杏里のような気がして、近づいていく。


「…………!」


「…………!」


なにを言っているかは分からないが、ずいぶんと激しく口論している。


「杏里じゃなかったか?」


杏里との付き合いはものすごく長いわけではないが、杏里は基本的に由美と同じように落ち着いた話し方をする。


それは先輩や水城、京が自分を見せるようになっても変わらなかったので、杏里と由美はそういう話し方をするものだと思っていたので、その影が杏里とは別人と考えた。


「なぁ杏里~、俺も参加させてくれよ~。現役女子高生の空気を感じたいんだよ~」


「黙れ! 変態お兄ちゃんが! お前に私の大事な友人を汚させてたまるか!」


だが、その口論をしていたのは杏里とまだ紹介されていないが、おそらく彼女の兄であろう人だった。


「大体な! お前は大人びた顔をしてるくせに女性関係に関してだけは、子供みたいにがっついてかっこ悪い!」


「お兄ちゃんの頭を叩くんじゃない! 俺の頭は優秀なんだぞ。日本の未来に影響が出るぞ!」


「うるさい! そんなに大事な頭なら金庫にでも入れて閉まっとけ! どうせ左脳しか鍛えてないだろう! 右脳はサル並みだろうが?」


「えーと、杏里と、お兄さんですか?」


口論が終わるまで待ってようと思ったのだが、いつまでも終わらないようだったので、あきらめて声をかけた。



「な、た、太一……」


杏里はさきほどまでの怒っていた表情から、いつものように戻る。



「む? 君が岩瀬太一君というのか。私は杏里の兄で藤川俊と言う。こんな姿勢で申し訳ない。


「ええ、俺は見てはいけないものを見てますね」


俊さんは正義さんをそのまま若くした見た目の人である。


つまり、見た目はすごく仕事のできそうな好青年なため、そんな彼が、杏里に足蹴にされてうつぶせになっている姿は、あまり見たくないものである。


「君のことは杏里から聞いているよ。父は君のことを気に入っているようだが、俺はそうでもない」


「はぁ」


唐突に言われたがそれは分からなくもない。


杏里はこれまで男子と仲良くした経験がほぼないと聞いているし、このようにつれてくることなど初めてだろう。


正義さんが寛容すぎるだけで、普通のお父さんは17歳の娘の男の友人に対しては多少は不安に思うものであろう。


「杏里と仲良くしているのに、他にも可愛い女子を4人もつれていてうらやましい! 俺もあの打ち上げに参加したい! 女子と仲良くしたい! あわよくば俺が1人ほしい! しいて言うなら杏里がいい!」


ボカ! 


そんなことを言っている俊さんを杏里が棒で殴った。どっから棒を持ってきた。


「痛っ!」


「何最低なこと言ってんだ!? 参加するのは1億歩譲って許すが、後半2つの発言は許されない。何私の大事な友人に手を出そうとしてんだ?」


「だ、だから俺は杏里でいいって、杏里は俺のだし」


「誰がお兄ちゃんのものだ? どこかに名前でも書いてあるのか 1回死ね。そして生き返ってもう1回死ね」


そのまま無表情で、俊さんが叩かれる。杏里は基本的には無表情だが、本当に無の表情だった。


「ちょっと待て! それ以上はまずいだろう」


慌てて俺は杏里を止める。


「あ……、太一」


俺が後ろから止めると、大人しくなる。


「あ、メイドさん! こっち来てください」


ちょうどその時1人のメイドが目の前を通りかかったので呼ぶ。


「あら、お嬢様……と岩瀬様でしたか? どうされました?」


「どうされましたじゃないですよ、見えてますよね」


俊さんは俺と杏里の目の前に倒れている。俺達が見えているのなら俊さんも見えているはずである。


「ああ、また俊様が暴走されたんですね? 俊様のことは私にお任せください。他の皆様がお2人を探されてますよ」


そう言うとメイドさんが他のメイドさんを何人か呼んで、俊さんを連れて行った。慣れてんな、よくあることなのか?


「…………、ちらっ」


そのまますぐに戻ろうと思ったのだが、杏里が動こうとしない。


いっそのこと目を逸らしてくれればいいのだが、ちらちらこっちを見てくるものだから、逆に俺もどうしていいか分からない。


「えーとね、太一、これはな、兄が、兄で実は、それで……」


杏里が何か話そうとするので、俺は一応待ってみる。


「………………、うっ」


しかしうまい説明ができず、嗚咽を漏らしてしまう。


「はぁ……、おい杏里」


俺は杏里の頬を両手でつかんでうつむいた顔を正面に向けさせ、俺自身も少ししゃがんで目線を合わせる。


「な、何?」


杏里は急に俺と目を合わせたからか、驚いて目を見開く。


そのせいで、目から涙が大量にこぼれてしまったが、それは仕方ない。


「ちゃんと本当のことを話せ。きちんと聞いてやるから」


「…………、うん。もう泣かないし、慌てないから手を放して……。顔が赤くなって恥ずかしい」


そう言って手を放すと、顔を振って落ち着きを取り戻す。


「その話しかたもやめろ。今まで言わなかったが、その話し方は何か杏里らしくない」


「え。変か? 話し方が丁寧な人の話し方を真似ているんだが、似合わないか?」


「いや、そう言うことじゃないんだけど……」


杏里の見た目は小さく顔も童顔だが、お嬢様という感じが伝わる気品のある仕草も手伝って、今の丁寧な話し方は彼女の見た目と間違ってはいない。


だが、なんとなく無理があるように感じていた。例えるならば、ものすごく日本語をしゃべるのがうまいアメリカ人のようである。


確かに綺麗な日本語をしゃべるのだから、別に会話そのものには違和感はないが、やはり見た目がアメリカ人で日本語を綺麗に話せることには、日本人から見れば多少違和感を感じるだろう。


うまく例えられないが、そういうことを感じていた。似合っているのに違和感があるという、もやもやはずっとあったのだ。


「はぁ。今日お兄ちゃんがいるからやな予感はしてたんだよ。お兄ちゃんが気持ち悪すぎて、自分を隠すのは絶対に無理だから。お兄ちゃんがいるって聞いてたら家には呼ばなかったんだけど」


杏里は右手を上げて後頭部にあててペラペラ話す。


杏里は自分から話すことは少なく、言葉が多いわけでもない。だが、今の杏里は自分がそうさせたとはいえ、かなりたくさんしゃべっていた。


「それが杏里の本当の話し方か? お嬢様とは思えないほど、乱暴じゃないか」


基本的な話し方は大きく変わっていないが、声が大きくて激しくなり、たまに見せる女子らしい口調が全く出てこない。物静かささ清楚さを全く感じることができなかった。


「ああ、これが私が普段話すときの口調だぞ」


「どうして隠してたんだ?」


「これは本当に知られたくなかったんだ。こんな話し方をする女子ははしたないだろう」


「そもそもお嬢様の杏里が何でそんな乱暴な話し方なんだ?」


「これは、お母さんの話し方なんだ。水城がお父さんを尊敬しているのと同じで、私はお母さんを尊敬してるんだ」


「杏里のお母さんは何をしている人なんだ?」


「テレビにはあまり顔を出さないんだが、お父さんを支えて、副社長をしている」


「それでお母さんは何でそんな話し方なんだ?」


「お父さんはすごく優しい人なのは分かるか?」


「そうだな」


正義さんは大企業の社長とは思えないほど話し方はおだやかであった。


「社員の人が大好きで、全然怒ったりしない。だから、お母さんが厳しく指導をして、お父さんがアメ、お母さんがムチという関係でずっと会社を守ってきていた。だが、お母さんは女だ。どうしても男の人に舐められてしまうところはある。だから、こういう男勝りの口調で、厳しい指導をしていた」


おおかっこいい。働ける女性という感じだ。


「私はそんなお母さんに憧れて、お母さんのやり方をまねてみた。いつか、自分がお母さんのように誰かを支えられる人になりたいと思ってな」


「それでまねしているうちに、口調が移ったのか」



「そうだ。だが、この話し方は家でしか使ってはいけないと言われていたんだけどな。子供のときはきちんとした話し方を学び、お母さんのように周りに認められるようになってから強い口調を使うように怒られたんだ」


女性が一般的に同世代の男性よりも仕事ができたりすると、尊敬の対象よりも、妬みの対象になる。

なので、まずは女性らしさを使って、うまくあしらえる技術を身につけてから、うまく相手を使えるようになり、その上で舐められないように、口調を強くする。


それが、杏里のお母さんのモットーであったらしい。


「でもやっぱり私には似合わないと思ってるんだ。お母さんみたいに、うまく自分の話し方をコントロールできないし、できるだけ話さないように気をつけるしかない。そしたら、いつの間にかお姫様扱いで、今の状況になって、どんどん話すのが下手になっていった」


「なるほど、内気というわけじゃなくて、ぼろが出るのが嫌だったのか」


杏里と話していると、きちんと会話になっているし、内気であるとはあまり思えなかった。会話になってないこともたまにあるが、それは杏里に限ったことではないので。


「太一、さすがにこれは駄目だろう。こんな口の悪い女と一緒にはいたくないよな?」


ぽかっ。


「いったい!」


俺は杏里の頭を叩く。


「お前の悪い癖だ。勝手に俺の意思を決めるなって。俺は杏里のその話し方が好きだよ。作った口調でしゃべられるような相手との方がよっぽど一緒にいたくない」


「…………」


「そんな顔するな。別に他の人の前では合わせてやるし、由美達にも黙っててほしいなら言わないから」


パチパチパチ。


「はっはっは。さすが娘の見込んだ男だ。あの口調の杏里にそこまで言えるか」


俺と杏里の話が終わったところに手を叩きながら出てくる男と、不服そうな顔をして出てくる男がいた。



正義さんと俊さんである。


「なんですかこれは?」


「はっはっは。ちょっと君をためさせてもらったよ。杏里は家ではいつもこんな話し方だが、さきほどの友人とのやりとりを見たところ、まだ学校ではこれは見せていなかったようだったからね」











感想ありがとうございます。


この作品についてですが多分長くても30万文字は行かないと思います。

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