エピソード22 打ち上げをしよう
昨日は眠たい状態で勢いで作品を書いてしまって申し訳ありませんでした。
今回のパートからは、お宅訪問が中心になります。
「太一君! 初めて50位以内に入れたよ!」
「先輩、私もです!」
休み明けにはじまったテストが終わり、その1週間後全てのテストが返ってきたことで、順位が確定したため、いつものカフェの2階で結果発表をしていた。
水城と京はこの1週間いつもより元気がなかった。どうも俺が休みの間勉強を見たのにそれで結果が伴わなかったら申し訳ないということでかなり気にしていたようだ。
今日までも成績を随時報告してくれて、今日順位が確定したので、それを持ってはしゃいでいたのだ。
水城の成績表には49位/200人、京の成績表には48位/200人と書いてあり、結果が出たことを示すものであった。
「分かった分かった。よくやったな」
無邪気に2人に褒められ、両方から腕をつかまれる。わるい気はしないが。
「テストで喜ぶなんて、私には考えられないな」
「2人共すごい。 100人も抜く なんて」
杏里と由美は本人の点数には興味がないようだが、杏里は4位、由美は5位だったりする。
「はいお疲れさん。生徒会の仕事が終わったから来たよ」
生徒会の業務があることで遅れていた先輩も到着した。
先輩は学年1位です、一応。
「100人抜き……、うふふ、手を抜かずに手で抜いて、テストで高得点、それで褒められる特典、私の国語は69点、そして彼が私にご来店」
「これで私も才色兼備になれますよ。もっといいお嫁さんになりますからね。なりますからねなりますからね」
両脇にいる2人が大暴走した。
「水城、はしたない……」
「杏里? 杏里は何言ってるか分かるのか? 私も太一から説明を聞いたのだがなんのことか分からない」
「あー、意味は分からない……。ちょっと声が大きすぎるという意味だ」
「京ちゃん、落ち着いて」
下ネタ好きの水城と少し曲がった愛情表現の京は休みの間に他の3人にも知ることとなった。
俺は話したわけではない。というか、隠さずに2人が堂々とやっていればわかる。プライベートを仲良く過ごすと、今まで見えなかったその人が見えることは良くあることだが、明らかに今回の例は例外的だと思う。
別に他の3人はこれを知っても気にすることはなく、今までどおりの付き合いをしていた。
だが、この5人と過ごしている上で、比較的まともであった2人が暴走することが多くなったため、ナイーブ杏里、フリーダム先輩が突っ込みに回らざるを得なくなる展開になることがよく見られるようになり、ちょっとだけ関係に変化が現れた。
後由美がかなりピュアであることが分かった。
「それで、せっかくテストも終わったし、打ち上げでもしない?」
2人が落ち着き(落ち着かせ)先輩がそう話をする。
「じゃあとりあえず集合場所は太一の家で……」
「おい、俺のうちは少し勘弁してくれ」
休みの間騒ぎすぎて怒られたのだ。勉強をしていて比較的水城と京が大人しかったのにも関わらずだ。……、大人しかったかな? 今思うと。
今回は打ち上げという形になるから100%前回より騒がしくなるに決まっている。
俺が断ったことにより、由美は自分が迷惑かと悲しそうな顔をしたが、事情を話すと納得してくれた。本当に面倒くさい。
俺にとって困るのはちょっと睡眠不足になる程度であるし、せっかくの打ち上げに騒げないというのも嫌であった。
だがそうなると場所の問題が出てくる。
このカフェの2階であまりに騒ぐと1階のカフェに迷惑になる。
そして、普通の店に行くのは俺が女子5人をつれて回ることになるので居心地が悪すぎる。後お金がすごいかかる。
と、なると他の家ということになる。
先輩の家は1人暮らしで狭いから、皆が遠慮した(俺も1人暮らしだがそれはスルーされた)
京の家は当然家族が多く向いていないし、ここから遠い上に実家暮らしである由美の家も難しい。
と、なると2択になる。杏里の家か水城の家である。
「じゃあ水城の家ってどうだ?」
とりあえず俺は水城の家を提案した。水城の家は父親が官僚であり、そこそこ大きな家であると聞いていたため、人を呼びやすいと思ったからである。
杏里は仲良くなっているが、基本的には内気なのであまり無理に家に行くのはよくないと勝手に思っていた。
「え、えーとね。私の家はよくないと思うな」
ところが水城はこれを否定した。
いつも間延びして柔らかい声で話し、ほとんど笑顔の水城が、真顔ではっきりと話したため、全員が驚いていた。
「そ、そうか。あまり人は呼ばないのか?」
「私の家って、お父さんが官僚だから、機密情報とかもたくさんあったり、要人の人が出入りするから、昔から家に人を呼ぶことはずっと駄目なの」
「そうか。家がそういうのだと大変だな」
「お金持ちも楽じゃないわね~」
由美と先輩が水城に同情し、特に先輩は水城を心配して頭を撫でていた。
だが俺はちょっとだけ引っかかった。水城の言ったことは嘘ではないだろうが、この内容なら普通に水城は話せるはずだ。
さきほど水城が見せたあまりにも真面目な表情には、それ以上に何か意味があるように感じた。もちろんそれを聞こうとは思わないが。そのうち分かることか。
「えーと、うち来ていいよ。お父さんも喜ぶと思うし」
俺がそんな疑問を持っている中、杏里が俺の袖を引っ張ってそう言ってきた。
「いいのか杏里」
「うん。来てくれたら私もうれしい」
「どうする皆?」
「杏里は私の友人。断る理由はないが、私のようなものが行って大丈夫か?」
「う、うん。私も行ってみたいな~」
「面白そうだし私も賛成」
「私も失礼していいなら」
他の4人も断ることはない。
「じゃあ明日学校の前に来てくれないかな? 学校からはそんなに遠くないし、そこから案内する」
今日は金曜日であり、明日は土曜日で休み。京の参加が気になったが、土曜日は母が家にいるため、自由に動けるため問題ないらしい。
そのままその日は解散となった。
「ふ~、俺が1番乗りかな?」
時間は午前11時。夜ではなく昼に打ち上げをすることになったため、集合時間は午前となった。
俺の格好はいつも春に着る適当なズボンとシャツに軽く薄めの上着を羽織ったもの。普通にいつも外に出るときの格好だ。
「太一……」
と思ったら、先着者がいた。由美である。
「おお由美って、何だそれは?」
由美の制服姿とジャージ姿以外の格好は初めて見た。食事を一緒にしたときも、このどちらかの格好しかしていなかったので、てっきりどちらかの格好だと思っていた。
しかし、由美の格好は、シャツの上に膝の上までいく長いカーディガン、長い足が分かりやすい黒い細めの長ズボンは、モデル体系の彼女には似合っていた。
道行く人がちらちらと彼女を見ている。
「に、似合わないか?」
「いや、似合いすぎだよ。それは姉さんのものか?」
由美のお姉さんはモデルだと聞いている。自分に自信を持っていない彼女が自分でこういう服を買うとは失礼ながら思わなかったのだ。
「い、いや。これは私が選んで買った。とても緊張したが、調べて買った」
「へ~、すごいな」
「私と仲良くしてくれている皆にも私のこういう姿を見てほしかった」
彼女はネガティブな思考は直っていないが、最近少しずつ前向きな発言を聞けるようになった。
「後もちろん太一にも見て欲しかった……、褒めてくれてうれしい……」
相変わらず表情は読めないが、頬が赤いのは分かる。俺も恥ずかしい。
ペシペシ。
「こらこら。何いい雰囲気醸しだしてんの?」
俺が由美と話していると、頭を叩かれる。
「なんすか」
そこにいたのは先輩であった。
俺と土曜日に会うときは正体がばれないように地味な格好をしているので、今日もそうかと思って気楽に振り返った。
しかし、そこにいた先輩の格好はホットパンツにジャケットシャツのと動きやすそうな格好で、いかにも流行の格好というものだ。
ただ、テンプレートな格好とはいえ、先輩自身のスペックがテンプレートではないので、恐ろしいほど見栄えのいい格好になっている。
特にジャケットシャツを羽織っている上と比べて、ホットパンツの下半身はちょっと露出が多すぎではないだろうか。
「んん~? 何見てるの?」
あ、ばれた。先輩は学校ではきちんとしてるし、スカートは結構長めなので、ちょっと普段見れない部分だったため、つい見てしまった。
「何々? いつも他の子といちゃいちゃしてて、私は興味ない的な態度取ってるのにさ~。でもちょっとうれしいんだけどね」
からかっているくせに、顔が笑顔で赤いのはずるいな。何も言えない。
「どうも、先輩方」
俺が先輩にからかわれていると、京が到着した。
京の格好は買い物の時に見た白色のワンピース。やはり彼女にはとてもよく似合っている。
「おう京。今日もワンピース似合ってるな」
「ええ、だってこれは私と先輩が始めて会ったときの服装ですから忘れるわけないじゃないですか? 先輩ももちろん忘れていないようで安心しましたよ。もし忘れてたら……、どうしようかと……」
どうなったんだろう?
「私もいるよ~」
水城は白Tシャツにミニスカート。露出は多いが、元気な彼女にはよく似合っている。
「おお、水城も私服初めてか。その格好は寒くないのか?」
「うん、別に寒くないし、可愛いからいいでしょ~」
「まぁ似合ってていいけど。あまりお嬢様っぽくないな」
「お嬢様の格好とか動きづらいもん~」
「まぁそうか」
全員の服を褒めるのは大変だ。全員にあっているから褒めていることそのものは本当なのでまだいいのだが。
「後は杏里ちゃんだけね。そういえば、杏里ちゃんの家って行ったことあるの?」
「ああ、そういえば知りませんね」
「私も途中までしか行かないから知らない」
「私も知らないよ~」
先輩が杏里のクラスメイトである俺達に聞いてきたが、俺達の誰も知らなかった。
杏里とはあくまでも途中まで帰っただけである。1番杏里と一緒にいるのは由美だが、由美は駅の近くで杏里と別れてそのまま走って帰るため、最後まで行くことはなかったらしい。
「どんなおうちなんでしょう?」
京も気になるようだ。
ブーン。
そうして話していると、集合時間ぴったりに大きな車が止まる。
「わぉ、超高級車じゃん」
先輩が驚いているが、それは俺達もみれば分かる。
いわゆるリムジンっていうやつだろう。黒くて無駄に縦に長い。
ガチャ。
すると運転席のドアが開き、中から人が出てきて、後ろのドアを開ける。
「皆、お待たせ」
するとリムジンから人が降りてきたが、それはドレス姿の杏里であった。
「杏里? 杏里はお嬢様だったのか?」
皆が驚く中、俺が杏里に問いかける。
「その話はまた後でする。とりあえず皆私の家に招待するよ」
そう言って杏里がドアに促す。
俺達は困惑しながらも、そのリムジンに乗り込んだ。
「わ、すごくふんわりとした椅子だわ」
「ジュースが置いてあるんですね。すごい……」
「こ、こんなところは落ち着かない(そわそわそわ)」
先輩、京、由美はかなり困惑してきょろきょろとし続けていた。
「太一君は落ち着いてるね?」
官僚を父に持ち、彼女自身もお嬢様である水城は多少落ち着いていた。
「いや、慌ててるけど、他の3人が慌てすぎなんだよ。杏里、説明してくれるか?」
「ああ、私の父は藤川正義。世界で活躍する大手メーカーの社長なんだ」
「藤川正義ってあの人か、杏里のお父さんだったのか」
藤川正義。日本はおろか世界でも圧倒的なシェアを誇る電機メーカーの社長で、大富豪である。
メディアにも顔を出しているため、俺も顔を知っていた。
「私はもしかしたらって思ってたんだけどね~。藤川さんっていう人がうちに来ることもあったんだ~」
皆がいろいろ困惑している中、リムジンは杏里の家に向かっていった。
感想ありがとうございます。
ブックマークも評価もうれしいですが、やはり具体的に意見がいただける感想はかなり原動力になります。
私も作品をいくつか読んでいますが、感想を書くほど気に入っている作品は1作品だけです。
ある程度本文をきちんと読んでいただいて、その上何行か文を打つという手間がかかるため、感想をもらうということは、かなり貴重なことだと思っています。
本当にありがとうございます。




