12 適性を調べよう
説明っぽくなってしまいました。
すいません<(_ _)>
「…イ様、お……ござ…す。朝でございます。」
うん?
朝?
いつの間に寝てたんだろうか?
しかも寝台にきちんと寝てる。
とりあえず寝台から下りようとすると手から何かが落ちた。
よく見てみるとそれは昨日もらった本のようだ。
着替えてから何となくその本を持ち寝室を出ると食事の用意が既にしてあり、アリシアたちもいた。
「あら、マイ様おはようございます。」
「おはようございます。」
「おはよ。」
「ああ、おはよう。」
アリシアたちに挨拶をしてから食事をとった。
「ところで、その本は何なのか教えてくれないかしら?」
舞が食べ終わったのを見計らってアリシアがにまにましながら聞いてきた。
他の3人も興味津津である。
「魔王様からもらったのは分かっているのよ。でも、どんな経緯でもらったのか気になるわ!」
「いや、ただ昨日魔法が使えなかったから、くださっただけだよ。」
アリシアの迫力に少し引きながらそう答えると4人は見るからに落胆した。
「魔王様でも落ちたかと思ったのに!!」
その言葉に残りの3人も頷く。
「魔王様が物を渡すなんて初めてだから期待しましたが、やはり魔王様は魔王様ですね。」
「ミシェナの言うとおりですよ。西の魔国の美女たちがいくら迫っても無視していましたし、実は不能とかではないんですか?」
「不能じゃなくて男色かも……?」
最後のアーシアの言葉にみんな目を見開いた。
「「「男色!?」」」
男色か……。
確かにあり得なくはない話かもしれない。
魔王のあの顔ならいけるだろう。
自分で考えている事になぜか少し落ち込んだ。
そんな舞に気づいた4人は明るく声をかけ食器を下げて行った。
気を使わせてしまったか……。
っていうか、なんで私は魔王の事をこんなに気にしているんだ!?
別に魔王が男好きでも不能でも良いじゃないか!
一度頭を振ってからソファに座り、『魔力があれば猿でも使える魔術入門編』を開いてみた。
えーっと、魔力とは生き物すべてが持っている目に見えない力である、か。
そういえば文字が読めるな。
ヴィルカイン王国にいたころは気にしていなかったが、かなり便利だ。
まあ、もうけものだとでも思っておくか。
まずは目を閉じて魔力が体内をめぐっているのを感じてみましょう……。
書いてある通りに目を閉じて体内に意識を向けてみた。
すると、血ではない何かが流れているのを感じた。
「これが魔力か!」
嬉しくなってつい叫んでしまった。
しかし、あまりに子供っぽい行動に恥ずかしくなり周りに誰もいない事を確かめた。
そして再び本に視線を戻す。
次は適性を調べましょう、か。
大きめの球を持つような手の形にして調べるとやりやすいんだな?
まず膜のようなものを作って、次に魔力を流し込むのか。
膜が作れるかが不安だな。
昨日は魔力が溢れていたらしいし。
とはいえ魔王のくれた本に書いてあるのなら大丈夫かもしれない。
不安になりながらも目を閉じ、魔力を意識してやると不安定ではあるが膜が出来た。
よし!!
昨日とは大違いだ!
すごいな、この本。
昨日は貶していた本を褒めつつ魔力を膜の中に流した。
すると膜の中で魔力が紅、蒼、翠、茶と緑の混じった色、黄、紫、白、黒、金、銀と変わって透明になった。
その後、役目は果たしたとでも言うように膜は消えた。
えっと、赤は火、青は水、緑は風、茶は地、黄は雷、紫は毒、白は光、黒は闇、金は治癒、銀は補助の魔法適性があるのか。
それで、火、水、風、地は使用出来る者が多く、火の上級は炎で紅、水の上級は氷で蒼、風の上級は竜巻で翠、地の上級は植物が操れ松葉色になっている、と。
適性者の少ない雷、毒、光、闇は上級がなく、色の濃さで適性の強さを判断。
雷や毒、光や闇よりは適性が多いがやはり希少であり、価値の高い治癒と補助もまた色の強さで判断。
2つの適性を持つのは魔術師の中でも4分の1程度で、3つの適性を持つ者は国に1人程度、4つは人間の大陸で2、3人程度、5つ以上は伝説級となっている。
自分の使える種類と数により自分の希少性を理解しよう。
って、どうすればいいんだ!?
何だか10種全部使える。
しかも火、水、風、地はすべて上級で雷、毒、光、闇、治癒、補助も強い適性だ。
私は人外か!?
ん?
人外?
ちょっと待てよ。
ここは魔の大陸だから、人間の大陸用に作られたこの本とは多少異なっているんじゃないのか?
となると10種使えるのも珍しくないのかもしれない。
後でミシェナにでも聞くか。
とりあえず納得して本を見ると、そのページの最後に追加で何か書いてあるのが見えた。
追伸、膜を作るのは危険な上難しいので師匠にやって貰いましょう。
……、これは追伸とかで書く類のものじゃないだろう。
危険って分かってるなら“適性を調べましょう”の次の行にでも書くべきだ!
もし、失敗してたらどうする!
城が吹き飛んでいたかもしれない。
まあ、最後まで読んでなかった私が悪いのだろうが……。
知らず知らずのうちに危ない橋を渡っていた事に気づき、どっと疲れが出て舞はソファにもたれ掛った。
次の瞬、扉がノックされる。
驚きつつも姿勢を正して返事をするとミシェナが入ってきた。
「本日なさりたい事はございますか?」
ああ、やりたい事か。
ちょうどいいタイミングだな。
別に見計らった訳ではないだろうに。
「そうだな、とりあえず、魔法について教えて欲しい。それから時間が余ったら魔法の練習をしたい。」
「魔法の練習、ですか……。」
ミシェナが顔を引きつらせた。
その時また扉がノックされ、舞の返事とともにアリシアたちが入って来る。
「あら、ミシェナ。どうかしたのかしら?」
「……、へんな顔。」
3人ともミシェナの表情を見て首を傾げる。
それを見てミシェナはため息をついた。
「変な顔とは失礼な。私は少し魔王様にお伺いしなければならない事が出来ましたので、マイ様の魔法についてのご質問はアリシアたちにお願いしますね。」
「「「えっ?」」」
何が起っているのか分からずに困惑する3人を残し、ミシェナは部屋を出て行った。
ミシェナが去っていくのを見た後アリシアたちは舞をみつめる。
いや、何がどうなっているの?という目で見られても逆に困る。
だがおそらく、ミシェナが不機嫌そうに出て行ったのはアーシアの変な顔という発言のせいだぞ。
何でミシェナが魔王に聞きに行ったのかは私も知らん。
あ、いや魔法の練習をしたいと言ったせいかもしれないな。
「とりあえず、ミシェナが戻ってくるまで聞きたい事を聞いて良いか?」
「ええ、かまわないわ。」
「ミシェナもそう言ってましたし。」
「うん。」
舞がそう言うと気持ちを切り替えたのか3人は普段の表情に戻った。
「では、魔術と魔法の違いはなんだ?」
これは何となくは分かるが、はっきりと分からなくて困っていたやつだ。
魔法を使う上で知らなければならない事だろうが差異がわからない。
「それは、そこまで重要な事じゃないわ。ただ単に魔力量の違いだもの。」
「姉さまの言うとおりで魔術は魔力量が少ない者が魔法を使うために呪文や魔法陣を必要とします。魔法は魔力量が多い者が無詠唱無魔法陣で行うものです。」
「もともと魔族が使っていた魔法を人間が使おうとして生み出されたのが魔術。」
アリシア、アニシア、アーシアの順で3人が次々と答えた。
うん、3人いると良いな。
特に聞き返すことなく疑問が解決する。
「へえ、そうだったのか。では魔族だと10種すべでの魔法を使えるのか?」
感心した目で3人を見つつ、今1番気になっている質問をさりげなくする。
「それはないわ。魔王様でさえ9種の適性だもの。だいたい、光魔法が仕える魔族なんて存在しないわ。だから魔王様の9種が一番すごいわね。」
「上級魔族はだいたい5~8種の適性、下級魔族は3~6種の適性です。」
「あと、得意とする魔法をそれぞれに持ってる。」
「得意とする魔法?」
「そうね、わたくしは火かしら。」
「わたしは毒です。」
「アーシーは水。」
得意とする魔法か。
3人とも別々なんだな。
驚きだ。
「それは、魔法を使ってみれば分かるのか?」
「ええ、そうね。」
「そうです。」
「うん。」
おもしろそうだな。
得意魔法だと威力が上がったりするのだろうか。
楽しみだ。
いや、それよりも問題なのは私が10種の魔法を使える事だろう。
魔王でさえ9種。
確かに魔族のほうが複数の適性を持つとはいえ、さすがにやばい気がする。
10分の9と10分の10ってかなり違うと思うし。
「どうかしたのかしら?」
悩み始めた舞を見てアリシアが話しかけてきた。
縋るような気持ちで舞はアリシアを見る。
「過去に10種使える者はいなかったのか?」
「さすがに10種は、わたくしの知る限りいないわ。おそらく存在しないのではないかしら。」
過去に居ない!?
どうすれば良いだろうか。
隠すべきか?
いや、もしかしたら魔族と人の属性の調べ方が違うのかもしれない。
それなら使える属性が変わってくるだろう。
もうこれだけが頼みの綱だな。
これが駄目なら私は人外だ。
「気になるのでしたらマイ様の属性を調べてみますか?」
変に悩んでいる舞を見てアニシアが心配そうに問いかけてきた。
それに頷くと、先ほど舞がやったのと同じやり方で調べ始める。
膜はアニシアが作ってくれたが。
「えっと……、これって全種類で適性が出てるわよね?」
「じゅ、10種すべて強い適性ですか!!」
「……すごい。」
ああ、やっぱり全部に強い適性なのか……。
これが昔美羽の言っていたテンプレってやつなのだろうか。
しかも、ばれてしまった以上隠しようもない。
舞は頭を抱え込んだ。




