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遙かなるユイス・ゼーランドの軌跡  作者: 乾 隆文
第二章 第二十節 (章題未定)
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2-20 断節 ゼノン・エイド=エンポリル.1

お久しぶりになってしまいました。

まずは新年あけましておめでとうございます(2.14.)


なかなか、筆が進まない毎日を過ごしております。とりあえず新年から体壊しすぎです。

どうにかこうにか、短く4パートのみ更新。

今回は4日置きの更新です。どうぞよろしくお願い致します。







 ち、つまんねぇ。


 悪態吐きながら、俺は奴らのアジトを奥へ奥へと進んでいった。


 途中、敵の姿はほとんどなかった。ウェルと別れて以降、ここまでであった敵の数は僅かに三。全員が単身で動いてて、首を落とすのに五秒もいらなかった。


 やっぱり戦力の大半は、ザード団の襲撃に対し表に集まっちまってるみたいだ。この中は蛻の殻。何かを盗む目的だったら、俺たちの潜入作戦は大成功だったろうな。


 あいにく、目的は連中の命だ。首領が雑魚どもと一緒に表に出てっちまったなら、追うためには雑魚どものド真ん中に向かわなきゃいけない。望むところって言いたいけど、さすがに数百相手に一人で立ち回るのは避けときたい。正面側には壁の穴もある。どの程度魔法が飛んでくるのかもまるで計算できねぇ。


 あぁ、ホントつまんねぇ。


 あのスカした女はハドラに譲っちまったし、剛腕男はウェルと一騎打ちをご希望。なら俺は一人でアタマを、と思ったけど、恐らくアタマは正面玄関で百を超える雑兵どもに守られてる。あと探すのは銃使い(クソ道化)か……。こんだけの騒ぎでまだアジトの奥でぬくぬくしてるとも思えねぇけど。ってーかあの道化(ペルロ)、調子っぱずれでやりづらいからヤなんだよな。


「な、何だおま――」


 ゴギ。


 横道から鉢合わせした緩い服装の髭面の男。


 言葉の途中で、柳葉刀を一振り。体と頭とを両断する。


 イライラしちまってるせいか、それとも躊躇なく殺して回るのが久しぶりなせいか、どうも肩に変な違和感が残る。調子悪ぃ。


 あぁ、早く俺も思いっきり暴れてぇ。この際クソ道化でも構わねぇ、一振り避けられる奴と戦って、すっきりしてぇ。


 そんなこと考えながら、ひとまずはアジトの表の方――、外から見た記憶から多分こっちだっていう方角だけ当てを付けてる表側の方に向かって進んでいくと、途中で大きな部屋に突き当たった。地下のあの部屋と同じくらいの広さ。天井も、――いや天井なんてものは全体的に無いんだけど、天井が崩れた跡の位置も、ここまでの通路と比べて格段に高い。目算で三メトリくらいあるか。


 とはいえ、部屋のど真ん中に大量の石が積まれ、山になって置かれてて、あんまり広いとも感じられない。正に「倉庫」そのものって感じの場所だ。


「んだ? こりゃあ。ずいぶんたくさんの石っころだな」


 試しに一つ、手に拾い上げて見てみた。ゴツゴツとした、岩砂漠ならそこらにいくらでも転がってるだろう、真っ白いだけのただの石。なんかの宝石の原石、ってわけでもなさそうだが。


「初めて見る? 加工後のものなら、市場に行きゃゴロゴロしてるよ、今どき」


 声をかけられるまで気付かなかった。迂闊さに舌を打ちつつ、気配の薄さに驚きつつ、声の方に刃を向ける。


 石の山の向こうから姿を見せたのは女――、確かデリダとか言ったか。数日前にここの地下で会った、アミラともう一人の女だった。


「罠のつもりかよ」


「は? あんたこの石の価値わかってないんでしょ?」


 牽制したつもりだったが、怒気交じりに鼻で笑われた。


「あんたたちを罠で釣るなら、頭領かボズロさんでも置いとくわ」


 そりゃそうか、と俺も息を吐いて構えを解いた。罠なんて発想が、そもそも馬鹿馬鹿しかった。仕掛けるつもりなら、もっといいタイミングがここまででいくらでもあった。俺等が釣られやすいエサも。


「じゃあ、何の用だ」


 愚問ついでにもう一つ聞いてみる。


 デリダはくすりと鼻を鳴らして。


「一応倉庫番なんだよ、私」


 ごっこ遊びの役柄を明かすように、石ころの山を指差しながら言った。


「こんな石ころに倉庫番つけんのかよ」


「あんたにゃ価値わかんないかもしれないけどさ。こんだけ量があるとそれなりに貴重品なんだよ? 何より、上の連中の目的のためには欠かせない」


「上の連中? お前らの、じゃなくてか」


「ま、そこはいろいろさ」


 ふふん、と口許を複雑に歪めながら笑うデリダ。含んでんのは自嘲か、厭世か。ま、二百人も超える団となりゃ、どんなとこだって一枚岩で固まるのは難しい。昔の俺らラナマーヴェだって、二十人くらいしかいなかったけど、みんなバラバラなこと考えてたもんな。


「とはいえ、要は私は外に出てくるなってのが、ボズロの本音っぽいけどね」


 今度は露骨に愚痴めいたことを言ってきた。よく喋る女だ。


「表に来てんのがアグロなのは知ってるかい? あんたはあいつのこと覚えてるか知らないけど。曲がりなりにも私の旦那だからね。ボズロなりの気遣いらしい」


「……覚えちゃいなかったが、街で見かけた。嫌な奴だったぜ。あんなのを選ぶとは、お前、相当趣味が悪いな」


「趣味じゃないよ。ミルレンダインの頭領になれるならってんでくっついたんだ。ここに来てからも特に別れる理由がなくて一緒にいたけど、だからって一緒に離反するつもりもなきゃ、あいつのバカさ加減に絆されるつもりもない」


 ベラベラ喋った後、何やらに気付いたように、わざとらしく一つ咳払いをした。言い訳がましい自分の話に思い至ったか。


「ま、まぁ。情もないけど別にこの手で殺してやりたいとか思う程嫌ってもないから、別に倉庫番でいいんだけどさ」


「どうだっていいさ。倉庫番ってことは、俺がここの石ころに手ぇ出さなきゃ、お前も戦う気はねぇってことだろ?」


「んー……」


 前にもコイツは俺のことを見逃した。どうせ今回も、やる気なんてねぇんだろ。そう思って首を振ってみたところ、しかしこの女、即答はしなかった。


「そりゃ、あんたの出方次第かな」


 剣も構えず長閑に言ってきやがる。


「あんたが私たちの目的の妨げになるなら、さっさと殺しちまった方がいいかもしれないからね」


「お前たちの目的?」


 聞き返したけど、それには答えない。デリダはほんの少しその楽しそうな笑顔に影を落としながら、しかしやはりのほほんとした態度を崩そうとしなかった。


「言えよ、お前たちの目的ってのは何だ。お前たちってのは、お前と誰のことだ」


「気になるのかい?」


 顎を上げ、大して高くもないその背丈で俺のことを見下してきやがる。


 クソうぜぇ女だ。さっさと切り刻んでやるか……。


「あんたは話が早そうだ。話す条件は、『力尽くが適うなら』でどうだい?」


「いい度胸だ。手加減はしねぇ」


 眼球に力を込め、女を睨み付ける。




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