2-16-8.「情報交換は終わり、この場、解散となる」
「俺とシーラは、セグレスと一緒にアリオーネ団の根城に行く。ゼノンとミディアはその間、先にハーンの街に行って連中の情報を集めておく。ってのは?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」ミディアが慌てて、組んでいた腕を解いた。「私は戦えないのよ? これっぽっちも戦力になんてならないの! 知ってんでしょ!」
「あくまで情報収集だよ。正直今のままじゃ、四人で行ったって、何ならセグレスにも来てもらったって、ボズロ一人倒せないさ」
「って言ったって……」
「ンだよ。俺がそんなに頼りねーって言いてぇのかよ」
おろおろと困惑するミディアを、ゼノンが鋭く睨み付ける。当然でしょ、と答えるミディアも辛辣だ。
「あんたウェルにさえ負けてんだもん。あんたの背中に隠れていいって言われたって、こっちはちまりとも安心できないのよ!」
「っざけんなよこのクソ女。いつまでも負けた負けた言いやがって。次やったら俺が勝つんだよ。とにかく俺がウェルより弱いみたいに言うな」
まぁまぁ、と両手を上げ、二人のちょうど真ん中くらいに立って仲裁する。普段ならほっとくけど、今はハルトスやセグレスもいる。関係のないことで時間をもらうのは、ちょっと気が引けた。
「じゃあ、ミディアちゃんは一人でここに残ればいいんじゃないかな」
と、ハルトスが提案する。いやミディアには情報整理の役割を頼みたいんだ――、言いかけた俺の言葉は、頭三文字程のところでハルトスの手の平に制されてしまう。
「情報整理にはレマを連れて行くといいよ。それで十分事足りるでしょ」
「みぎゃっ? あちしも行くんでますかっ」
「さすがに出張手当出すよ。通常業務の五倍」
「どこへなりとお供するでます!」
お、おう、とゼノンが困惑を見せた。レマの仕事ぶりへの信頼にはもう疑問を挟む余地がないとはいえ、確かにレマとの二人旅は若干の不安を感じる。主に会話とかの面で。
一方で一人で待っていることを提案されたミディアも、口を開いての抗議はできないものの、幾許かの心配はある様子。「あ」とか「う」とか、口の形を様々に変えながら表情と首もくるくる動かし、反論が見付けられないかといろいろ考えている様子。
当たり前だけど、ミディアがシーラについてくるっていう選択肢はない。こっちの方がよっぽど剣呑とした状況だ。拠点もどこに置けるかわからない。
「うー……」
「ま、お前がついてこないってんなら身動き取りやすいから逆にラッキーだぜ。あの変態銃使いの名前がコルファスってのもわかったし、さっさと倒して例の本奪い返したら、もうお前との腐れ縁も終わりだな」
「うぐ」
珍しく言い負かされぐぬぬと奥歯を噛み締めているミディア。そして、更に珍しくつんけんした言葉ながらミディアを誘うように挑発するゼノン。確かにこいつら、いつの間にやらいいコンビになったなぁと感心してしまった。
「わーかった、わかったわよ! 私も行くわ。その代わりしっかり守んなさいよね!」
「何でそんな偉そうに指図されなきゃいけねーんだ。守ってくださいお願いします、くらい言えねーのかよ」
「あんたが、護衛させて頂き感謝の念に堪えません、って私に頭下げたら考えてやるわ」
「ふざけんな死ねクソ女」
ぐるるがるると喉を鳴らしながら睨み合う二人。
話がまとまってよかったと、俺も二人の中央から離れ近くの椅子に座った。うん、もう、話はまとまった。あとの二人がどれだけイチャつこうが、俺は知らない。
「誰がイチャついてるってのよ!」
「テメーの目は節穴かよっ!」
うん、知らない。
とにかく情報の交換は終わり、この場、解散となる。
シーラはセグレスに、今度は今まで自分たちがどうしていたかを話すつもり。これについては共有する必要はないので、宿の部屋に場所を移動するという。
ゼノンとミディアももうしばらく二人で話をするという。街を離れてからのことを話すのか、それとも罵声を浴びせたりないのか。好きにしろよと微苦笑で返した。
ハルトスは仕事に戻った。本当かどうかは知らないけど、とりあえず当人はそう言っていた。
そして俺はレマに声をかけられ、グァルダードの事務手続きカウンターに向かった。なんにせよ全員が拠点を移動することになるのだ。情報収集の依頼は、一度切り上げないといけない。書類仕事なんだろうしやっておいてほしいなぁとも思ったんだけど、「どうせ暇なら付き合うでます」と無理矢理袖を引っ張られる形だった。
どうせ暇だと受け取られるのも淋しいものがある。我流とは言えこれでも寸暇を惜しんで剣の訓練をしているんだけどなぁ。
そして翌日。早々に荷物をまとめ、シーラは北の、アリオーネ団の根城を目指してセラムを発っていった。
俺は、ゼノンとミディアと一緒に、彼女とセグレスの背中を見送った。




