其の六十1「そまつかなう」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
「むらさきかがみ」──これは有名な都市伝説だと私は思っています。
その内容は、「むらさきかがみ」という言葉を二十歳まで覚えていると呪われる、あるいは死ぬ、結婚できないといった様々な不幸に見舞われるというもの。
最近、怖い作り話を書くためのネタ探しに見ていた動画の中で
この話を目にした私はふと、自分の小学校時代に一時的に広まった
似たような都市伝説?迷信?を思い出しました。
それは──「そまつかなう」。
「そまつかなう」という言葉の意味を二十歳までに解き明かさないと呪われる、あるいは死ぬ、結婚できないといった様々な不幸に見舞われるというもの。それが流行ったのは、私が小学六年生の冬だったと思います。
初めてその言葉を耳にしたとき、私は全く意味を解くことができませんでした。
「そまつかなう?何それ?」と尋ねても、言った男の子はニヤニヤと笑い、私が「教えて、意味を教えて」と怖がる様子を楽しそうに眺めているだけでした。
結局、私はその意味を解けないまま小学校を卒業し、中学、高校と時は過ぎ、今は四十歳半ば。
呪われもしなければ、死んでもいません。 ただ、私は今も独身です。
それも自分で選んだことなので、不幸だとは思っていません。
だから、この「そまつかなう」という都市伝説?迷信?は……
まあ、そういうものなのだろうと、今では思っています。
ただ、あの頃は冬の教室で、誰かがぽつりと「そまつかなう」と呟いた瞬間に、背筋にゾゾゾと冷たいものが走ったこと、サーッとその場の空気が変わったように感じたこと、そして意味も分からない言葉なのに、なぜか心の奥底に妙な不安を感じていたことを、鮮明に覚えています。
さて、みなさん。この「そまつかなう」の意味、解き明かせますか?
私にはできませんでした。そして、解き明かせないまま二十歳を過ぎても、特に何かが起きたとは感じていません。なので、安心してください。解き明かせなくても大丈夫。きっと何か起こることはないでしょう。
……だって、このお話、「真っ赤な嘘ですから」。




