其の五十九「幽霊ですけど質問ありますか?」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
「幽霊ですけど質問ありますか?」
とあるSNSに、そんな書き込みがあることを彼は最近知ったそうです。
怖い話が好きで、オカルトを程よく楽しむ彼は、さっそくそのSNSを探しました。
それに関する情報はすでに多く出回っていたため、彼はほとんど苦労せずにそのアカウントを見つけることができたそうです。
プロフィールには「幽霊ですけど質問ありますか?」という名前。
自己紹介はなく、ただ質問に淡々と答えていくような内容。
フォロワー数は彼の予想に反して意外に少なく、オカルト好きなら飛びつきそうな「ネタ」だと思っていた彼としては、その数字に少し肩透かしを食らった気分だったそうです。
タイムラインには、様々な質問がリプライされていました。
「幽霊って眠るの?」「幽霊は食べ物を食べるの?」──そんな他愛もない質問に、幽霊を名乗るユーザーは淡々と答えていく。その内容は、どこにでもあるような、当たり障りのない幽霊的な回答ばかり。
ユーザーたちも、幽霊を名乗るその存在と、この場を楽しむようなノリで質問を書き込んでいたようです。
しかし、その中で一つ、空気を変える質問が投げかけられました。
「あなたが本当に幽霊なら、証拠を見せてくれ。」
しばらくして、そのアカウントから一枚の画像が投稿されました。 暗い部屋の中を映したように見えるその写真には、誰も映っていない。 どこにでもありそうなただの部屋の写真。
「ほら、やっぱり何もないじゃないか。」 質問者はすぐにそう書き込みました。
しかし、このあと、コメント欄に「ヤバい」「見える」「これは本物だ」と書き込む人が続々と現れ始めたのです。
見える人には見えていた。そこには本当に誰もいなかったのではない。
「写ってる!!女の幽霊が写ってるよ!!」
その画像には、不敵な笑みを浮かべる「若い女性の幽霊」が、確かに写り込んでいたのです──。
毎日、怖い作り話のアイデアを探すために友人から体験談を聞いたり、ネットに流れる怪談を拾ったりしている私に、彼はこの話をしてくれました。
彼自身は「見えなかった」と言いましたが、コメント欄の騒ぎは本物だったと。 「見える人には見える」──その言葉が、妙に記憶に残ったそうです。
私はその話を聞きながら、ゾゾゾと背筋に冷たいものが走るのを感じました。
何気ないネットの書き込み。 ただの遊び半分のアカウントと思っていたそれが
もし本当にこの世ならざる者の残したメッセージだったとしたら──。
「幽霊ですけど質問ありますか?」
その言葉を見た瞬間から、幽霊はあなたに何かを語りかけているのかもしれません。
これが彼から聞いた怖い話です。
彼が作った怖い話のように思えるかもしれませんが、
私は「この話、本当なのかもしれない」と思っています。




