其の五十八「禁断の図書館」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
これは、私の考えた怖い作り話です。作り話なので気楽に読んでください。
私は時々、市内の図書館で記事の執筆や、小説の執筆をしています。
書店もそうですが、図書館という場所は、そこにいるだけでとてもリラックスできる。
静かでスンとした落ち着いた空気感。紙の香りが漂い、
時の流れが緩やかになるような空間だと思っています。
それはそれとして。
──禁断の図書館。
図書館に「禁断」と付けると、何やら怖い雰囲気が出ると思いませんか。
では、ここからは、私の考えた禁断の図書館のお話をさせていただきます。
◇◆◇
その図書館には、様々な「超常現象」を記録した文献が並んでいる。
オカルト、怪談、UMA、SCP……たくさんの方々が恐怖と好奇心で書き残した記録の数々。
そしてそこを管理するのは、どこか儚げに見える若い女性の司書と、仙人のような姿をした老人の館長。 彼らは静かにその図書館を守り、来館者が一番必要としている一冊を差し出します。
司書の女性が静かに微笑み、あなたに一冊の本を差し出しました。
それは「禁断の図書館」と題された本。
あなたは震える手でその本を開きます。
そこには、あなた自身がこれまでに書いたあらゆる文字が、記録されています。
しかし、あなたはその内容に違和感を覚えます。
なぜならそこには、現実には存在しない出来事が書き加えられてたからです。
まるで、あなたが知らぬ間に「禁断の図書館」によってあなたの記録を書き換えられているかのように。
そこに館長と思しき老人が近づき、あなたの耳元で、低い声で囁きます。
「この記録は現実になるのですよ。」
あなたの手にあるその本。恐る恐る背表紙を覗くと、そこには、あなたの名前が記されているのです。
◇◆◇
「禁断の図書館」
これは、私の想像上の図書館。私の考えた作り話です。
当然ですが、この図書館は存在しません。
ですが……禁断の図書館、この言葉を見た時から、あなたはそれを無意識に作り出し、探していることでしょう。
それは、本当なのです。




