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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の五十5「卒業アルバム」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

思い出さなければ、いつまでも忘れていたかもしれない。 今日はそんな話を一つ、私からお話させていただきます。


それは、高校の卒業アルバム。


断捨離というわけでもないのですが、部屋の大掃除をしているときにそれを見つけた私は、懐かしさと共に、25年ほど前に起きたこと、そしてその直後に気付いたおかしなことを思い出しました。


高校を卒業し、地元の会社に就職した私。あれは確か6月末頃、梅雨時の休日だった記憶です。


小雨の降る中、私は買い物のため市内へ車で出かけました。デパートの駐車場に車を停めようと入ると、見覚えのある人が誘導棒を振っていました。彼が高校時代の同級生だと分かり、卒業後半年ぶりに見る姿に思わず窓を開け、声をかけました。


彼を仮に、F君とします。


「うわー、風間さん久しぶり!元気?」 学生時代と変わらない調子で声をかけてくれたF君。卒業後は専門学校に進学し、この日は駐車場誘導員のバイトをしているとのことでした。


「またクラスで集まりたいね!それじゃあ、気を付けて!」


そう言って、彼は空いている駐車スペースへと誘導してくれました。 その時、私はそれが彼と交わす最後の会話になるなど、想像もしていませんでした。


それから半月後。私はF君の訃報を聞きました。十九歳。死因は急性心筋梗塞。 休日とはいえ、あまりに起きてくるのが遅いため不審に思った母親が部屋を訪ねると、すでに冷たくなっていたといいます。


久しぶりに顔を合わせてから間もないこともあり、この知らせを聞いたとき、私の口から最初に出た言葉は「は?」でした。 うそでしょ、どうして?でもなく、ただ「は?」。あまりに驚いたとき、人は言葉を失うのだと、この時初めて知りました。


卒業して半年。たくさんの同級生と顔を合わせるきっかけが彼の葬儀という、何とも言えない空気を今でも覚えています。


帰宅後、私は卒業アルバムを開きました。卒業後半年、開くのはこの時が初めてだったと思います。最初のページから順番に、同級生の集合写真、クラス写真、部活動の写真……その時、私はある違和感に気付きました。


それは、F君の写っている写真。そのすべてで、彼の顔がどことなくぼやけて見えるのです。 集合写真、クラス写真、どれもそんな印象を受ける中、特に部活動の写真では顕著でした。


ただ私はこの時、「偶然だ。こういうことがあったから、そう見えるだけだ」と思い込もうとしました。


しかし、それから数年後。二十代半ば、イベントスタッフの仕事をしていた私のもとに、また同級生の訃報が届きました。Mさん。親しい仲だった彼女。突然の知らせに、この時も私は「は?」以外の言葉が出ませんでした。


彼女は自らこの世を去る決断をしたそうです。誰もが口々に、その前兆には全く気付かなかったと話していました。


葬儀に参列後、上司に連絡すると「今日は休んでいい」と言われ、私はそのまま帰宅しました。


そして、この時もまた、卒業アルバムを開きました。卒業後数年、開くのはF君が亡くなった時以来でした。


最初のページから順番に、同級生の集合写真、クラス写真、部活動の写真……その時、私は再び違和感に気付きました。


F君の写っている写真。その全てで、彼の顔がどことなくぼやけている。 そして、Mさんの写真も……。


え……何これ?F君の時もそうだった。卒業アルバムに載っている彼の写真は皆、顔がぼけてしまっている。そして、Mさんの写真も。


そしてその時、私は気付いてしまったのです。


卒業アルバムに写っている、Mさんの葬儀に参列していた同級生、S君の集合写真の顔だけが、どことなくぼやけ始めていることに……。


もしかして……亡くなった人の写真がぼやけて見えるのではなく、これから亡くなる人の写真が、集合写真、クラス写真、部活動の写真の順番で?私は怖くなり、静かにそれを閉じました。


これが私の、思い出さなければ、いつまでも忘れていたかもしれない話。


この話は、本当です。


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