表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/70

其の五十参「幽石引魂」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

怖いもの見るのが苦手なのに、怖い話を聞くのが大好き。

そんな私は何故か中学生時代、クラス内で「オカルトに精通している」という印象を持たれていました。


霊感もなく怖がり。そんな私がどうしてなのか。

その理由は当時も今も私自身、何故だかわかりません。


それはそれとして。


これは、その頃の私が友人から聞かされた怖い体験談。

夏の野外授業で一泊した地元のKキャンプ場(場所名は伏せさせていただきます)での

キャンプ中の出来事でした。


川沿いのキャンプ場で、この頃はまだ今ほど夏でも暑くなく快適な時間を過ごせていました。

テントを張り、夕飯を作る前まではのんびりと友達と談笑し、非日常を満喫していました。


陽も傾いた夕暮れ時。そろそろ夕食の準備と、周りが動き始めた頃、私たちのところにどこか神妙な顔をした三人の男子が私たちのところに来てこんな話を始めました。


「風間さん、こいつなにかに憑かれてない?」


いきなりそんな話をされて、私は思わず「え?」と驚き首をかしげました。

前述した通り、その頃の私は何故かクラス内で「オカルト少女」という印象を持たれており、怖い話や不思議なことがあるとそれについて「これってホントかな?」「何か見える?」とよく聞かれたり相談されていました。

でも、私は、霊感があるわけでもなく、「怖いものを見る」のは大の苦手。

ただ、私は「怖い話を聞く」ことは大好きなこともあり、彼らの話は興味を引きました。


三人の男子の中には、一人、霊感が強いと言われている彼(仮にA君とします)がおり、この話の中心はA君を中心にB君、C君が、今体験した出来事でした。


彼ら三人も、私たちのようにテントの設営が終わり、その周りにあった大きめの石に座って談笑していました。そのとき、いつの間にか石に座ったままA君がコクコクと居眠りしていることに気付いたB君は彼を起こそうと軽く肩をゆすりました。しかし、深く寝入っているのか全く起きません。


「おいおい、A!起きろよー!」


B君はA君の方を強くゆすったのですが、それでもやっぱり起きません。ゆすってダメなら叩いてみようと肩を軽く叩き、強く叩き、それでもA君は一向に目を覚まさない。悪いと思いながらも挙句の果てには靴で頭をパカーンと叩いてみたが、それでもA君は目を覚ましません。これだけしても起きないA君の様子に、B君は何かおかしいと大慌て。


その時、C君はA君の後ろに回って、彼の両肩を掴み、ぐっと後ろに引っ張ると、ビク!っと体を震わせA君は驚いたように目を覚ましました。


「おいおい、A!どうしたんだよ。」


B君はA君にここまでの経緯を話しましたが、A君は寝たふりをしていたわけでもなく、あれだけゆすられたり叩かれたりしたことに全く気付いていませんでした。彼が気付いていたのは、後ろから両肩をグイッと引っ張られたことだけだと話します。


「なんだか、きれいな景色の川辺を歩いていたら、急に肩を掴まれて後ろに引っ張られた。」


それを聞いたB君とC君はゾッとしました。二人は「きれいな景色の川辺を歩いていた」というのを「三途の川を歩いていた」と解釈したからです。そして、これはオカルト好きな私に話した方がいいという事になり、三人で私のところに来たというのです。


いや待って、だからどうして私なの?と思いましたが、彼らがたった今した体験の話にはとても興味を惹かれました。


A君は霊感が強く、これまでもいくつかの心霊体験をしていることは知っていました。そんな彼に何があったのか。私と私の友人、A君、B君、C君の五人で話し合った結果……


これはA君の臨死体験だったのではないか。A君を引っ張ったC君が霊感的に強かったから、この世に引き戻せたのではないか?ということで、結論に至りこの話は終わりました。


いくらゆすっても叩いても起きない。その意識がない。そんなこともあるのだと、私は不思議に思っていましたが、それより私は、去年のこの野外行事のとき、一つ年上の先輩から聞いた怖い話のことを思い出し、背筋がゾゾゾと冷えるのを感じていました。


先輩から聞いた怖い話。


このKキャンプ場では昔から、落ち武者の霊が出るという噂があるらしいよ。

この場所は、昔の古戦場に近く、ここでなくなった武者の怨念がこもった石があるみたいだから、石に座るときは注意しないといけないよ。


もしかするとA君は、たまたまその石に座ってしまい、あの世に引き込まれかけたのかもしれません。


あれから三十年。今、そのキャンプ場は改修され奇麗なオートキャンプ場になっています。

それ以降、その場所の心霊話は聞かなくなりましたが……最近は別の意味での怖い話を耳にします。


オートキャンプ場の近くで、熊が出た。


この話、本当なんです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ