其の四十五「静寂亡痕」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
これは、私の日課である「取材」という名の動画視聴中に耳にした話です。
その中で「人が亡くなった場所は音がしなくなる」という言葉がありました。
私はその時初めて聞いたのですが、なぜか妙に納得してしまったのです。
なぜなら、私自身が似たような体験をしていたからです。
それはこんな話です。
その日、私は取材のため車で移動していました。普段なら出来るだけ近道を選ぶのですが、なぜかその日はいつもとは違う遠回りのルートを選んでいました。
そして、その道では三〇年以上前、死体遺棄事件がありました。
事件の詳細は記憶していません。ただ、当時小学生だった私は、比較的近い場所で起きたその事件にとても驚き、子供心に強い恐怖を覚えたことだけは鮮明に覚えています。
さらに、その道で心霊体験をした霊感の強い友人がいました。
(この話はまた別の機会にお話しします)
彼女の話を聞いたとき、その場所がかつての事件現場であることを思い出し、私は再び驚きました。
それなのに、なぜかその日の私は、そんな道を選んで通り抜けていました。
周囲は木々に囲まれているのに、陽当たりは良く、見た目には明るい道。
そこには「なんとも言えない静けさ」が漂っていたのです。
そう、まるで「人が亡くなった場所は音がしなくなる」という言葉通りに。
鳥の声も、風の音も、車の走行音さえも薄れていくような感覚。
ただ、スンとした静けさだけが辺りを支配していました。
私は背筋がゾゾゾと冷えるのを感じ、気持ちアクセルを踏み込みました。
一刻も早く、その場所を通り抜けたかったのです。
私は霊感などありません。 だから、その場で何かを見たわけではありません。
それでも、あの時の静けさは、見える見えないに関係なく「何かがいる」「何かがあった」ということを示しているように思えました。
その場に漂う空気そのものが、過去の出来事を語っているように感じられたのです。
「人が亡くなった場所は音がしなくなる」という言葉は、私の体験と重なりました。
私は今でも思います。 あの静けさは、ただの偶然だったのでしょうか。
それとも、本当に「亡くなった人の痕跡」がその場の音を奪っていたのでしょうか。
妙な静けさのある場所は、どこにも確かに存在します。
もしあなたがそんな場所を知っているなら、その過去を調べてみてください。
きっと何かしらの事件や事故の情報が出てくるはずです。
ただし、この話、本当なので、調べるのは自己責任でお願いします。
静けさの裏にあるものを知ってしまった時、
あなたはもうその場所を単なる「静かな場所」とは思えなくなるでしょう。




