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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の壱「出るらしい」

これから語るのは、もしかすると、これから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない、「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。けれど、その中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、時に、見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そして、ひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。けれど、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

出るらしい。私がそんな話を聞いたのは、ある建設関係者との何気ない雑談の中だった。


場所は、某県某市に新しく建設中のごみ焼却施設の現場。市の中心から少し離れた、山のふもとに広がる広大な敷地。そこに建設中の、最新設備を備えた焼却施設。環境対策も万全で、地域の未来を担う施設として期待されていた。


だが、その現場で、妙な噂が流れていた。


「地下2階で、幽霊が出るらしい」


最初にその話をしたのは、現場で働いている作業員のひとりだった。彼は、夜間作業の休憩中に仲間の作業員にぽつりとこう言った。


「何と言うか、白い影を見たんだ。人の形をしてるようで、してないようで…でも、確かにそこにいた。」


話を聞いた作業員たちは、最初は笑っていた。疲れすぎて幻でも見たんじゃないか、と。だが、数日が過ぎると同じような証言をする者が、次々と現れた。


「俺も見た。地下2階の奥、白い何かが動いてた。」


「誰もいないはずなのに、足音が聞こえた。振り返っても誰もいない。でも、気配だけは残ってるんだ。」


証言はどれもどこか似通っていた。彼らが見たのは「白い影のようなもの」。それは人の形をしているようで、していないようで、ただそこに「在る」だけ。そんな話だった。


地下2階は、焼却施設の中でも特殊な場所だった。酸欠危険作業区域ということで一般の作業員が頻繁に立ち入ることはなく、コンクリートの壁に囲まれたその空間は、空気が重くまるで何かを閉じ込めているような雰囲気があった。


私はその話を聞いたとき、正直なところ半信半疑だった。幽霊なんて、非科学的だし、作業員の疲労やストレスが見せる幻覚だろうと思った。だが、話はそれだけでは終わらなかった。


後日、別の関係者から、ある事実を聞かされた。


その焼却施設の建設地。かつて、そこには古い病院があったという。戦後間もなく建てられた精神科病院。閉鎖されたのは数十年前で、取り壊された後は長らく空き地になっていた。病院の地下には、隔離病棟があったらしい。記録はほとんど残っていないが、当時の患者たちがどんな扱いを受けていたかは、想像に難くない。


そして、その病院の地下2階が、ちょうど今の焼却施設の地下2階にあたる場所だった。


偶然なのか、必然なのか。それは誰にもわからない。


だが、あの白い影を見たという作業員たちは、病院の存在など知らなかった様子。誰も教えていないし、現場にはそんな過去の痕跡は残っていない。にもかかわらず、彼らは口を揃えて「地下2階で白い影を見た」と言った。


嘘か本当かは、わからない。


でも、私は思うのだ。


この話、本当だったんです。


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