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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
1部 蒼
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竜魔法について~講義&訓練

 そのまま30分ほどのんびりして、特訓を再開する。

 時刻は3時くらいだろうか。6時には帰ると言っていたから、できてもあと3時間。


 ついに、魔法の特訓の時間だ。

 ティオはなぜかメガネをかけている。形から入るタイプなんだろうなぁ。


 俺は教師モードのティオの前に体育座りして準備する。使うかもしれないから魔宝剣も傍らに置いておく。


「じゃあはじめましょうか。まず魔法について簡単に説明するわ。魔法、正しくは竜魔法は、契約竜から魔力を受け取ることによってはじめて使うことができるの」


「はい、先生。ということは人は自分で魔力を生み出すことはできないということですか?」

「そのとおり! この世で魔力を生成することができるのは竜だけ。だから竜は国にとっての宝で、最大戦力でもあるの。だから、戦場では竜騎士の数によって勝敗が決まるといっても過言ではないわ」


「はい、先生。竜にも個体差があって、それによって魔力や使える魔法も変わってくるのでしょうか?」

「んー良い質問よソーマ! もちろん個体差はあるわ。例えばメイルなんかは青竜族の中でもトップレベルの蒼竜で、供給される魔力量も使える魔法も並の竜に比べたら段違いね」


 それにしてもこの教師、ノリノリである。教えることが好きなのかな。教師とか保母さんとか向いてそうだ。


「はい、先生。具体的な魔法の発動方法を教えてください」

「その言葉を待っていたー! 魔法は本来竜だけが使えるもの。竜たちが空を飛べているのも魔法のおかげなの」


 そういえば元の世界の文献に載っていたな。竜の巨大な体を翼だけで浮かせるのは困難だって。鳥類の翼は腕が発達したものだけど、メイルを見てみると、腕が2本、翼も2枚ある。では、翼はなんのために存在するのだろう。

 ああいかんいかん、今は魔法の話だった。せっかくティオも気合い入れて説明してくれてるんだから集中集中!


「で、その魔法を人間が使えるよう詠唱する必要がある。詠唱の内容は竜が教えてくれて、魔法名の前文は大体同じね。一部例外はあるようだけど」


「はい、先生。魔法にもいくつか種類があるんですか?」

「もっちろん! 代表的な魔法は主に強化魔法、防御魔法、攻撃魔法の3つで、後は特殊な幻覚魔法や魔獣使役魔法などがあるわ。発動できる魔法は契約した竜の性質によって大きく異なるの」


「はい、先生。それでは俺の契約竜はどのような性質も持っているのでしょうか?」


 それまで嬉々として質問に答えていたティオが、急に大人しくなった。


「私もずっと考えてたんだけど…あの時ソーマの使った魔法は間違いなく攻撃魔法。でも、性質がわからない。これは推測に過ぎないんだけど。おそらく希少種の聖属性を持った竜だと思う。確証は持てないけど」


「そんなに珍しいのか?」

「ええ。竜契約者が100人いたとして。その中に1人いるかどうかね」

「あれ、けっこう多いような」

「いえ、少ないわ。そもそも竜契約者が、このマテリア王国みたいな大国でも500人ほどしかいないもの」

「絶対数が少ない、ってことか」

「そう。確かこの国には4名ほどしかいなかったはずよ」


 俺はそんな希少な竜と契約していたのか。そもそも本当に契約しているのか? 記憶が全くないからいまいち信用できない。

 仮に契約していたとして、その竜は今どこにいるのだろう。


「じゃあ話はここまでとして、そろそろ実践的な訓練をしていきましょうか。攻撃魔法は確認できてるから、防御魔法が使えるか試してみましょう」

「お手柔らかにね」


 グレン帝国兵との戦闘の時のような魔法を使われたら防げる気がしない。


「わかってるわよ。さあ、50mくらい離れて私の正面に立ちなさい」

 ティオはもう準備万端といった感じで身構えている。あの時はとっさに発動できたが、もう1度できるかどうかわからない。正直不安だが、できるようにするための訓練だ。リーサがいなくても、やってみせる!


「よし、準備完了! いつでもいいぞ!」


 でも、念のため魔宝剣を持ちながら訓練することにした。お守り代わりというか護身用というか。


「いくわよ! 一応手加減するけど、万が一魔法が発動しなかったらメイルを呼びなさい。守ってくれるから! ーー顕現せよ。契約に従い其の力を我が元にーー三つ首のハリケーン!」


 3つの小型竜巻が出現し、不規則に動きながらこちらに向かってくる。

 これで手加減してるっていうのか!? 竜巻が発している音も風圧も尋常じゃないレベルなんだが。


 ビビるな俺! あの時だってできたじゃないか。今回だって乗り越えられるはず。思い出せ、以前発動した時の感覚を。


 両手の【竜の爪痕】に意識を集中させる。


 彼方から何かをたぐり寄せるように。


 念じるは、自らを守護する盾。


『おーおー良い感じね。もう経路は開いてるから私の助けなしで発動できそうね。感心感心』

「そうそう、俺だって成長して…ってリーサ? 今まで何してたんだよ!」

『私は魔力を借りてるだけだからねー。そんなにしょっちゅう現れるわけにはいかないのよ。まだこの剣に蓄えられている魔力量は少ないんだから』

「おま、それを先に」

『それより今は魔法を発動させるのに集中なさい。話は後にしましょ』

「そうだな、また後で」


 リーサのことは後回しだ。まず目の前に迫るこの竜巻を何とかしないと。

 イメージはつかめた。後は詠唱の内容を読みとるのみ。


「……顕現せよ。契約に従い古より君臨する其の偉大なる力を我が元にーー銀鏡のイージス・ミラー

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