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蒼銀の竜契約者  作者: 深田風介
1部 蒼
12/187

戦闘終了

 空中に銀色の光で構築された剣が出現し、グレン帝国兵の元へ飛来する。

 使えた。使えたぞ、魔法を!

 なぜ使えたのか、他の魔法は使えるのか、魔力が小さいのはなぜか。疑問は尽きないが、考えるのは後にしよう。

 相手はこちらが魔法を放ったことに気付き、間一髪でそれをよける。が、よけきれずに胸部に傷をおったようだ。


「くっ、ただの一般人かと思ったら、よもや竜魔法使いだったとは。2対1ではさすがに不利だな。ここは退かせていただこう」

「あら、ずいぶん早いお帰りね」


 荒い息を吐きながらティオは言う。

 強がってはいるが、そうとう疲弊しているようで戦闘を続けられそうもない。


「戦闘において引き際を見極めることは最も重要なことの1つだろう? お前もよくわかっているはずだ」

「ええ、そうね。賢明な判断だと思うわ。今回は見逃してあげる」

「それはありがたい。だが、次はこうはいかんぞ。……しかし、一匹狼のお前に協力者ができたとは。また報告事項が増えた」

「それはご苦労様。こっちは一生会いたくないけど」

「嫌われたものだ。では、失礼させてもらう」


 そう言い残して森の中に消えていった。魔法による強化が続いているのか、あっという間に見えなくなった。


「ふう、何とか、なったわね」


 強化魔法を解いたティオは、ふうと一息つき、こちらに向きなおる。


「ティオ、大丈夫か!」

「ええ、大丈夫よ。ほんのかすり傷だし。」


 確かに外傷はたいしたことなさそうだ。だが、随分疲れているように見える。


「本当か? かなり疲れているように見えるけど」

「私はもともと攻撃魔法主体で戦うんだけど、ここはせまくて大きな魔法は使いにくかったから、仕方なく強化魔法と剣で戦ったのよ。一応剣術も修めてるんだけど、私もまだまだね」


 もしかして俺が足を引っ張ってしまったのだろうか。もし1人だったらどんな魔法でも周りを気にすることなく使えたのではないか。


「なあ、もしかして強い魔法を使えなかったのって俺のせ…」

「いや、そんなのじゃないからあんたは気にしなくていいわよ。そ、れ、よ、り!」


 ティオは焦ったかのようにそう言うと、肩をがしっとつかんでくる。


「あんた、竜と契約してたの!?」

「いや、そんなことはない、と思うけど」

「うーん、契約なしで魔法を使えるなんて聞いたことないけど……ちょっと【竜の爪痕】見せて」


 俺の手の平をまじまじと見つめ、つっついたり引っ張ったりしている。ちょっとくすぐったい。


「この色、形、見たことないわね」

「あ、もう一方もあるぞ」

「両手!? ますますわからなくなってきたわ」

「そんなに変か?」

「ええ、相当に変だわ、イレギュラーすぎる。異世界から来たことに何か関係があるのかもしれない」


 ぶつぶつ言いながら思案するティオさん。思案している表情もサマになるなぁ。


「あ、そうだ、リーサがなんか竜と離れてるせいで魔力が小さいとかなんとか言ってたぞ」

「リーサってその魔宝剣の中にいる人だっけ? ちょっとその人と話させなさいよ」

「いや、それが魔法を使ったっきり反応がないんだよ」


 そうなのだ。さっき話しかけても全く反応がなかった。また話せるといいのだが。


「それは困ったわね…でも竜と離れてると魔力が小さくなるっていうのは本当よ。私たちは【竜の爪痕】を介して竜から魔力を供給されてるんだけど、距離が離れていればそれほど供給される量が減るの。きっとソーマと契約しているはず竜は相当、それこそこの惑星の反対側くらいにいるかもしれないわ」

「そんなに…どうしてわかるんだ?」

「だって、竜の声を聞いてないんでしょ?」

「全く聞いてない。てか竜って話せるのか」


 思い出した。そういえば竜舎でティオとメイルが話してたような気がする。あのときは人間が犬に話しかけているのと同じようなもんかな、と思っていたが、まさか本当に意志の疎通が取れていたとは。竜ってなんなんだよ賢すぎるだろ。


「まあ契約した竜とだけだけど。話がそれたわね、とりあえずここで話していてもらちがあかないから一旦町に戻りましょう」


 来た道を引き返していくティオにあわてて着いていく。即決即断、すぐに行動に移す彼女に少しあこがれる。


「肩貸そうか?」


 疲れのせいか少しふらついていたのでそう言ってみた。


「いいわよ。あんたもしんどそうだし」

「おっと、バレてたか」

「そりゃわかるわよ。私もはじめて魔法を使ったときめちゃめちゃ疲れたもの。あ、あと言い忘れてたけど」


 そこでティオは唐突に振り向き、ニッと笑いながらこう告げた。


「あの時は助かったわ。ありがとう。さすが私の相棒ね。ちょっと、ほんのちょっとだけカッコよかったわよ」


 このとき俺がどう思ったかは、あえて言うまい。

 

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