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君はjunkie   作者: ケシゴム
第八章
35/48

翌朝

 LINEが届いた音で目を覚ました。画面を見ると時刻はまだ午前七時を少し過ぎた程度だった。

 誰だこんな時間にと思いながらも昨日のやり取りでなかなか寝付けず眠気眼だったが、霧崎からの“今日は部室で麻雀がしたい”というメッセージを見て一気に目が覚めた。そして一分もしないうちに理香から“OK! 今日は七時半に部室に集合!”という返信に度肝を抜かれた。しかしすぐさま天満からの“九時にして下さい”に助けられた。

 これにより霧崎との告白を賭けた戦いは九時からとなった。


「――おはよう」

「あ、おはよう優樹! 来るの遅いよ!」


 約束の時間三十分以上前に部室に着くと、やはりというか当然理香はもう到着していて、開けた窓辺で優雅に踊るカーテンに見守られながら既に一人で牌を並べ麻雀をしていた。 


「い、いや……まだ八時半前だから……」

「何言ってんの! 私なんて七時半前から来てるんだよ?」


 来るの早ぇ~……


「そ、そうだったのか……それはすまん……」

「良いよ別に。じゃあみんな来るまで二人で麻雀してよう?」


 何故霧崎が麻雀をしたいとLINEを送ったのか理由を知らない理香は、謝ると爽やかな笑顔を見せ嬉しそうに言う。その笑顔は眩しいくらい可愛く、朝の陽ざしと匂いと共に夢のような不思議な空間を作った。


「あぁ。じゃあみんなが来るまでやろう」

「うん! じゃあ座って座って!」


 これから始まる霧崎との戦いを考えると、とても憂鬱だった。だが朝から理香と二人きりの部室は気持ちを穏やかにしてくれた。


 その後しばらく理香と二人麻雀をしながらウォーミングアップしていると、舞ちゃんがやって来た。


「おはよう」

「あ、おはようマイ!」

「お、おはよう舞ちゃん……」


 戦いの事ばかりに気を取られていたせいか、舞ちゃんの顔を見た瞬間霧崎と戦う理由も昨日の事も思い出し、急に心音が高鳴った。そして一気に気持ちが重くなった。


「あれ? 霧崎君とリイチはまだ来てないの?」

「うん。あれ? もう九時になった?」

「ううん。今八時四十五分くらい」

「え? あぁもうそんな時間。何やってんだろうねあの二人」

「うん」


 理香と舞ちゃんが何も知らず普段通り会話するのを見ると、なんか良く分からんがまるで二股をかけているような気分だった。


「それよりさマイ。二人が来るまで一緒に麻雀しよう?」

「うん良いよ。なんか今日は私も麻雀したかったんだ」

「えっ! ほんとに!?」

「うん」


 鞄を置き準備をする舞ちゃんの後姿は、まだ何もしていないが浮気の証拠が見つけられるかもしれないというひっ迫感を与えた。そして何も知らない理香の嬉しそうな声は、この後修羅場になるんじゃないかという緊張感を与えた。


「じゃあやろうか!」

「うん」


 舞ちゃんが俺を好きだとはまだ確定したわけじゃないのに、超気まずかった。しかしそれはまだまだ序の口だったようで、舞ちゃんが卓に着くとまるで両者に笑顔で睨まれているかのようなプレッシャーを感じ、ちょっとした吐き気に襲われた。


「でもさ理香、なんで霧崎君急に麻雀したいって言ったのかな?」

「実は隠してるけど、霧崎君も麻雀大好きなんだよ! だけど今までそれを知られたくなかったんじゃない? 霧崎君ってプライドって言うかなんて言うか、そういうニヒルなとこあるじゃない?」

「ニヒルはちょっと違うと思うけど、確かにそうだね。なんかミステリアスって感じ」

「そうそう! それ! なんか隠し事あるみたいな」


 牌をかき混ぜながら女子トークをする二人が阿修羅に見えた。多分というか絶対二人は今日俺達が告白を賭けて戦う事など知らないはずなのに、実は全てを知っていてどう俺を料理しようかと考えているように感じた。


「ねぇ優樹もそう思わない?」

「えっ! ……あ、あぁ……うん……」

「どうしたの宮川君? 急に大きい声出して?」

「えっ、いや……牌混ぜるのに集中してて良く聞いてなかった……ごめん……」

「も~宮川君ったら」


 この二人は今日完全に俺を殺す気だ! いや、恐らく二人は霧崎がエロ神だという事も知っていて、霧崎もろとも殺す気だ!


 まだな~んにも始っていないが、不安が不安を膨らませ、俺は既に二人と肉体関係を持ってしまったと思い込むほどだった。


「まぁとにかく早く麻雀しよう? 二人が来ちゃうよ?」

「そうだね。ほら優樹も早く山積んで」

「あ……うん……」


 理香と舞ちゃんはただ麻雀をしたいだけのはずだが、「二人が来る前に早くカタを付ける」と言っているようにしか聞こえず、一層恐怖心が膨らんだ。それが体にまで伝わり、震える指先は舞ちゃんよりも山を積むのを遅らせた。


「じゃあ時間無いから私親で良い?」

「それで良いよ理香」

「優樹もそれで良い?」

「え……あ、うん……」


 やたら上機嫌に見える二人は、休日の爽やかな朝と相まって不気味だった。


「でさ、理香。“昨日言ってたやつ”なんだけどさ、来週の土曜日にしない?」

「うんいいよ!」


 局が始まり配牌が配られると、やはり二人は機嫌が良いようで何か秘密の話をし始めた。それは理香にとっては喜ばしい話だったらしく、舞ちゃんの言葉を聞くと目を広げ明るい声を上げた。しかし今の俺にとっては怖い話にしか聞こえず、一体来週の土曜日に何が起きるのか不安だった。


「じゃあさ……」


 何か言おうとした理香は、途中で俺がいる事を思い出したかのように顔を見ると、舞ちゃんと目を合わせ二人して俺を見ながらニヤリと笑った。


 こ、殺される! 恐らく二人は来週の土曜に俺を処刑する気だ!


 背筋がぞわっとした。いつもは可愛いと思う二人の笑みも、今や甘い息を吐く魔女のように見えた。

 

「マイ、やっぱりこの話は後でしない?」

「そうだね理香」


 二人は既に同じ憎しみを抱き結託している。それはもう俺を処刑しようと思う程強く。

 一切憎しみの片鱗すら見せず笑みを振りまく二人は、恐怖そのものだった。

 

「でもさマイ、マイはやっぱりコンタクトにした方が良いよ」

「え? でも私実はそれほど目が悪いわけじゃないんだよ。あ、それポンね」

「そうなの? じゃあなんで眼鏡してんの?」

「一応目が悪いのは確かなんだけど、私って小説書くようになってから目が悪くなったの。でもそれって、あ、それポン」


 何気ない話をしながらでも確実に手を進める舞ちゃんは、まるで漫画とかで見る超大物医師のようだった。


「でね。最近夢縫部に入って麻雀するようになったじゃん。そしたらちょっとずつだけど目が良くなったみたいなの」


 麻雀は意外と目を使う。それが起因しているのはあると思った。だが麻雀をしていて目が良くなったという話は聞いた事が無い。


「それホントマイ!?」

「うん」

「良かったじゃん! マイって眼鏡取った方が可愛いんだから!」

「えっ! ……そ、そうかな……?」

「うん! あ、リーチね」


 確かにそう言われれば舞ちゃんは眼鏡を取った方が可愛いのかもしれない。舞ちゃんは丸顔で目がくりっとしている。だが何故だろう。今は舞ちゃんの眼鏡が力を押さえる為の封印にしか見えず、それが解放されるのは俺に甚大な被害をもたらすような気がした。って言うかリーチ早ぇし!


「だからさマイ。マイは眼鏡取った方が良いよ。そしたらさ」


 そう言うと理香は俺を見てニヤリと笑った。そして舞ちゃんもそれを受けて照れくさそうに眼鏡をいじりながらチラリと俺を見た。


 超怖かった。まるで俺の内蔵のどれを貰うのか吟味するような二人には超怖かった。そして舞ちゃんはこの勢いで波に乗る気なのか、俺の捨てた牌をポンして理香に超危険なドラを打った。当然結託している理香はそのドラをスルーし、俺を殺すための布陣を完成させた。

 そのときだった。この窮地に救世主が現れた。


「おはよう」


 満を持して現れたのは天満だった。


「あ、おはよう」

「おはよう」

「お、おはよう天満」


 初めて天満が逞しい騎士に見えた。しかしここである疑念が過った。それは昨日のフキノトウ事件で険悪になった筈の天満と舞ちゃんが普通に挨拶を交わした事だ。

 いつもなら喧嘩をすれば翌日でも何かしらの確執を感じるのに、今日は一切それが無い。どちらかと言えば逆に仲が良いくらいだ。

 これにはまさかと思った。


「あれ? 霧崎君は?」

「まだ来てない」

「そうなんだ」

「でももう九時になるからすぐ来ると思うよ?」


 理香と天満の何気ない会話だったが、気配から既に天満は二人に取り込まれている感じがした。そして天満が「じゃあそれまで見てる」と言って俺の後ろに立ち壁役(卓の外から仲間に手牌を教える役割)になった事で、確信に変わった。


 馬鹿な! 昨日あの後何があったんだ! 天満が飼いならされている!


 絶体絶命だった。昨日俺が霧崎と対峙したのに対し、舞ちゃんは理香と天満を味方につけた。これはもう霧崎すらも取り込まれている危険性があった。そして俺の手牌に安パイ無し。色々な面で追い詰められていた。


 こうなるともう冷静な判断など出来る筈も無く、考えに考えた末に捨てた牌が理香にヒットした。


「ロ~ン! 一万二千!」


 なんだか何千万も借金を背負わされた気分だった。そしてそれを待っていたかのようなタイミングで霧崎が登場し、俺は最悪の状態で対局を迎える事になった。


 残念ながら第八章はまだ完成しておりません。しかしこれ以上投稿を遅らせるのは忍びなく、出来ているところまで投稿致します。ちなみに理由は下記のとおりです。


 題名 全然執筆しない作者


 いつも通り起床し、いつも通り出勤した。しかし今日はいつもと少しだけ違った。


 ”ピロピロリン! ピロピロリン!”


 出勤していつも通り始業までのひと時を雑談しながら過ごしていると、普段は鳴らないはずの時間にスマホが鳴った。

 これには一瞬首を傾げた。しかし電話の主を見ると叔母からのもので、何か良からぬ不安を感じた。


「もしもし」

「もしもし! お母さんが倒れた!」

「えっ……」

「くも膜下出血で今から緊急手術する!」

 

 まさかと思った。確かに母は高齢だったが、こんな事が起こりえるとは思ってもみなかったからだ。それでも体は直ぐ動いた。


「分かったすぐ行く! どこの病院!」

「○○病院! 緊急外来で聞けば直ぐ分かる!」

「分かった!」


 それだけ聞くと電話を切り、病院へ向かった。


 という感じです。ただ実際は……


「もしもし、今大丈夫?」

「うん。叔母さんどうしたの?」

「あのね。お母さん具合悪くなって今病院にいてね、調べて貰ったらくも膜下出血で手術しないといけないんだって」

「ふぅ~ん」


 明日自分の病院を控えたうえ、今月は色々休まなければいけないため、私はこれ以上仕事を休みたくなかった。それに、私が行ったところで何かできるわけでもないし、叔母も来いとは言わなかった為このまま仕事をするつもりだった。そしたら普通に社長に怒られた。


 というわけです。時間が掛かっても必ず最後まで仕上げますので、よろしくお願い致します。

 

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