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ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う  作者: ジェロニモ
タイムループ編

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速さを求めて

 我が愛すべきクラス、一年B組の教室は校舎三階に位置している。

 我が校では二年のクラスは二階、三年のクラスは一階と、学年が上がるほどに階段を登らず楽に教室に辿り着けるという社会のカーストを分からせてくれる親切設計となっている。

 

 早く三年生になって後輩しか存在しない誰にも気を使わずとも良いユートピアに行きたい。

 なぜなら僕は先輩よりも後輩派、さらに言えば姉よりも妹派だからだ。控えめに言って年下系女子って最高だと思う。


 僕も「先輩」って呼ばれたい。と妄想したところで、部活に入っていない僕が下級生と関わることなどないから、後輩女子に「先輩」などと呼ばれることは未来永劫ないだろうなと気づいてちょっと凹んだ。


 気を取り直して、とにかく僕が毎回毎回10分ごとに問答無用で戻される教室は三階に位置しているということである。

 

 つまり外に出ようとした際、必ず階段を降りなければならない。その移動時間は、一度のループで10分間しか猶予のない僕にとってはとてつもなく大きいタイムロスになるのだ。このタイムロスのせいで行動範囲が大幅に制限されているといっても過言ではない。

 僕はどうにかして10分を可能な限り最大活用できる手段を探究し始めた。


 ループした瞬間の開幕ダッシュ。これは一見良い方法に見える。しかし実際は授業中に教室を飛び出した生徒を許さんと星野先生が地獄の果てまで鬼のような速さで追っかけてくる。

 めちゃくちゃ怖いし、あまりに先生の足が速すぎて確実に捕まってお説教されるハメとなり、逆にタイムロスが増えるという罠である。

 しかしこの度罠を回避する方法を思いついたのでそちらを試してみたいと思う。


 チャイムが鳴りループした瞬間に僕は全力ダッシュをした。そして、教室を出て行く刹那、「うんこ漏れそうなんで!」と叫んでそのままダッシュを継続。


 授業中、皆に注目された中でのうんこアピール。これが僕の出した答えだった。唐突な全力ダッシュもうんこが漏れそうなら仕方ないよねと先生も多少はドン引きしつつ許してくれるに違いない。

 

 通常時ならば公然の前でうんこアピールをする度胸はないが今なら違う。

 どうせ何をしようとも僕の言動は皆の記憶から消え失せるのだ。あだ名が「うんこ漏れ蔵」になる心配もないので、僕は目的のために堂々と、むしろ嬉々としてうんこアピールをした。

 

 普段なら絶対に言えない恥ずかしいことを叫ぶ背徳感がたまらん。今度は皆の前でお漏らしとかしちゃおうかなと僕の中でいけない扉が開きかけたところで我に返った。

 そして立ち止まって後ろを振り返る。廊下には追ってくる先生の姿は有らず。


「よっしゃい!」


 息を切らせながら拳を天に突き上げる。開けてはならない性癖の扉を開きかけたことと引き換えにして、僕は先生に勝利した。


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