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異聞 第4話 受け継ぐ者


「スサノオノミコトとか呼ばれた男が最初に手にした武器は、火かき棒だ!」

「HA?」


 カムロが火かき棒を一閃させるや、赤黒いムカデミミズ竜が繰り出す、べたべたと毒のしたたる長針が数百本まとめて折れた。


「ば、バカナAAA!?」


 ミミズ竜は自分が傷つくことを毛ほども想定していなかったらしい。

 痛みのあまり山の木々を押し倒しながらのちうちまわり、恨めしそうに声をあげた。


「き、貴様。せっかく我が道具として使ってやろうとしたのに、どういう了見だ。さっきまで戦う理由など無いと言っていたではないか?」

「他の誰でもない、お前が僕の戦う理由を作ったんだろ、ドラゴン野郎。ぶっころしてやらあ!」


 カムロは本当の理由を、オウモが自分を助ける為に戦ってくれたことを言わなかった。この世界の住人もそんなに悪くないんじゃと思ってしまったことが、妙に照れ臭かったからだ。


「ええい、ならば袋叩きにするまでよ。いでよ、我が眷属けんぞく!」


 ムカデミミズ竜が、全身に生えた針の根っこから、赤い霧と黒い雪を噴き出した。

 それらは中空で魔法陣を形成し、一〇〇センチほどの同型のムカデミミズが二〇〇体ほどドスンドスンと降ってくる。


「一騎打ちで負けるから、大勢で襲うって? 情けない奴だなっ」

「勝てばいいのだ、勝てば。貴様がいくら強くても、たった一人で二〇〇体を相手に戦えるものか!」


 カムロは『オリジナルのクロードであれば出来たよなあ』と思ったが口には出さなかった。記憶を継承していても、〝ヒトを模した邪竜(ニーズヘッグ)〟である彼には〝竜殺しの冒険譚〟は使えない。


「そうはいくものか。カムロ、こんなことあろうかと狼煙のろしを焚いておいたよ」


 オウモがなにやら色の違う焚き火を使って、援軍を呼んでいたらしい。


「さっきは逃げ出してすみませんでした」

「カムロ様、オレ達も一緒に戦います」


 オウモが焚いた連絡が届いたのだろう。

 村人達が石や竹槍を持って山道を登り、小型のムカデミミズ竜を相手に大立ち回りを始めた。


「へえ、案外やるじゃないか」


 地上の生命を再生する際に、ネオジェネシスの技術を利用したからか?

 それとも、ドラゴンの汚染が残る世界で独自の適応進化を遂げたからか?

 よくよく見れば村人達の身体は、所々獣のように異形化しており、数人前の怪力や人間離れした足の速さを発揮していた。


「なるほど、身体能力が高いから、石投げや竹槍でもそこそこやれるのか。いいぞ、一緒にぶちのめそう!」

「なぜだっ、なぜ戦う? なぜ抗う? 我らはこの世界の支配者なるぞ。奴隷は奴隷らしくはいつくばればいいのだ」

「その傲慢ごうまんさがむかつくんだよ。いい加減くたばれ!」


 カムロは鋳造魔術ちゅうぞうまじゅつの要領で、ガチガチに硬化させた火かき棒を何度も叩きつけて針をへしおり、うろこを割り砕いた。


「見えたぞ、ここが揺らぎだああ!」

「おのれ、おのれえええ」


 カムロがむきだしとなった脆い部分を横薙ぎにするや、ムカデミミズ竜は真っ二つになり、赤い霧と黒い雪に変わって溶け消えた。


「ふん、奴らの正体は呪いが結晶化した霧と雪か。だととしても、クロードの技術を使える、ニーズヘッグの肉体なら倒せるさ」


 カムロは記憶にある、竜殺しと彼の宿敵を思い浮かべた。


(ああそうか、僕はクロードだけでなく、グリタヘイズの龍神ファヴニルの再来といったところか)


 カムロは、改めて村民たちに向き直った。


「みんな、お疲れさま」

「カムロ様こそありがとうございました」

「やっと一矢報いることができました」

「俺たちの手で母や、娘を守れたんです」


 カムロは村人達の笑顔を見ながら、奇妙な満足感を感じていた。


(どうやら今度の残業は、長くなりそうだ)


――――――――――――――――――――――――

 拙作をお読みいただきありがとうございました。

 本章は、七つの鍵の物語【悪徳貴族】が終わった後


 新作 『カクリヨの鬼退治』との空白を埋める、〝もしも〟の異聞です。


 〝異聞の世界と繋がった地球〟を舞台に、新たな主人公達が活躍する新作も是非どうぞ!

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◆上野文より、新作の連載始めました。
『カクリヨの鬼退治』

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― 新着の感想 ―
[一言] カムロは記憶を継承しているだけで、能力的にはクロードではないのですね。 本編のニーズヘッグはほとんど生前より強かった上、皆自分が本人であると自覚していたので、その辺りも少々違いがあるのとも読…
[一言] >どうやら今度の残業は、長くなりそうだ とある悪徳貴族量の幹部達「「はは、残業に終わりがあるはずないだろう?」」
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