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七つの鍵の物語【悪徳貴族】~ぼっちな僕の異世界領地改革~  作者: 上野文
第五部/第六章 ネオジェネシス戦争
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第340話 勇者の面影

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 復興暦一一一一年/共和国暦一〇〇五年 晩樹の月(一二月)三一日夜。

 ネオジェネシス幹部の一人にして、気象兵器〝風の冬〟を取り込んだ『ストレンジ・ニーズヘッグ』の融合体、エカルド・ベックは、レーベンヒェルム領北部の遠洋にて爆発、死亡した。

 いくつかの無人島が爆風に飲み込まれ、小規模な津波が押し寄せたものの、警戒態勢に入っていたレーベンヒェルム領にさしたる影響は無かった。

 クロードがファヴニル戦を見据え、堤防を増築し運河を整備するなど、入念な災害対策を事前に行っていたからである。

 領都レーフォンを中心とした混乱も、姫将軍セイの命により、マラヤ半島から派遣されたロロン艦隊とイヌヴェ隊の救援活動によって鎮まった。

 

「……キミは、最高に楽しい玩具だったよ。エカルド・ベック」


 他者の人生を道具としてしゃぶり尽くした詐欺師は、邪竜の玩具として弄ばれて一生を終えた。

 しかし、エカルド・ベッグが犯した、良心をかなぐり捨てた凶行。

 その爪痕は、大きかった……。


―――

――――――


 復興暦一一一二年/共和国暦一〇〇六年 芽吹の月(一月)一日未明。

 本来ならば、新年を祝うはずの年明けだが……。

 クロード達は深夜を回ってなお、事態収拾に追われていた。

 

「国主様。領主館の防備は万全です。どうか大事をとってお休みください」

「いいや、辺境伯。そういうわけにはいかないよ。彼らは、私の為に命を賭けてくれたんだ。私がこうやって無事な姿を見せることで、少しでも力になれるかも知れない」


 幸いなことに、川獺かわうそのテル、銀犬のガルムという高位契約神器と、兵士達に守られた国主グスタフ・ユングヴィ大公は、『暴食機構ストレンジ |はじまりにしておわりの蛇雪ニーズヘッグ』を受けてなお、軽症で済んでいた。

 しかし、ベッグの奇襲によって、式典に参加した大同盟の精兵一〇〇〇のうち半数、五〇〇人が死亡。

 その後の、顔なし竜(ニーズヘッグ)撃破までの戦闘で、レーベンヒェルム領からの援軍を含めて三〇〇人が亡くなり、行方不明者も含めれば一〇〇〇人近い戦死者が出ていた。

 負傷者に至っては、軽傷者重傷者あわせて三〇〇〇人を越えている。

 新年休暇に入ろうとしていた医師や治癒術士達は叩き起こされ、重傷者を避難させる宿泊施設等も寝耳に水の騒ぎにてんやわんやだった。

 そして、激戦を乗り越えたばかりのクロードと、自らの半身を奪われて親指姫のような大きさになってしまったレアも休むことなく手当てを続けていた。


「鋳造――。クロードさま、こちら担架を用意しました」

「ありがとう、レア。僕は荷車を作ったんだ。強化を頼めるか、一緒にやりたいんだ」

「はいっ」


 それはそれとして、戦場を駆け回る二人は見るからに仲睦まじく、森も街道も砂浜も氷結して汚泥に沈んだ灰色の世界で、一服の清涼剤となっていた。


「レア……」

「大丈夫です」


 クロードが何かにつけて侍女を手のひらで抱きしめるのも、生き残った兵士達は暖かい目で見ていた。

 二人が生き残ったことこそ、彼らが命をかけて得た成果だった。


「……ヨシ」


 隻眼隻腕の傭兵ドゥーエは、そんなまばゆい光景を見て鼻をすすると、さりげなく姿を消そうとした。が――。


「あははっ。どこへ行こうっていうんだい?」


 完全にすわった目の桃色がかった金髪の少女ミズキに、喉元へ銃口を突きつけられた。


「……お、オレに聞いてるでゲスか?」


 ドゥーエは、冷や汗を流した。

 滅びを迎えた並行世界。

 彼がそこで結ばれた嫁は、浮気を疑ったり、本気で激怒した時、こんなぶち切れた瞳をしていた。


「ち、ちょっと、小便でゲスよ」


 ドゥーエがとってつけたような方便で誤魔化し、一目散に退散しようとしたまさにその時……。

 彼はまったく気にも留めていなかった足下から飛び上がった二匹の獣に、顎へアッパーカットを食らい、鳩尾みずおちには頭突きを受けた。


「くそっ。カワウソとイヌが、いったい何をしやがるでゲス?」


 ドゥーエは、ベックとの決戦と救助活動で疲労していた。

 しかし、それ以上に想像もしなかった相手だったからこそ、手痛い直撃を受けた。


「バウッ!」

「ソレは此方の台詞ダ。てめえ、ナンでチンドン勇者と同じ顔してやがル? その巫山戯ふざけた語尾、いいや〝翼〟と〝刀〟は何ダ? いったい何ヲ企んでやがル?」


 ドゥーエが隠しておきたかった事実が、白日の下にさらされた瞬間だった。

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◆上野文より、新作の連載始めました。
『カクリヨの鬼退治』

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