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【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第二章

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第92話 温かな帰路

学園の鐘が鳴り響く。


一日の終わりを告げる音だ。


私はユリと別れた後、重たい鞄を持ち直して正門へと向かう。


夕暮れの空は茜色に染まっていた。


長く伸びる影を踏みながら石畳を歩く。


周りには迎えの馬車を待つ生徒たちが溢れている。


「……疲れたぁ」


思わず本音が漏れる。


初日から怒涛の展開だった。


入学式での騒動。食堂での出会い。


図書館での勉強。


そして何よりアイラ先生からの難題。


頭の中がパンクしそうだ。


でも不思議と嫌な気分じゃない。


充実感で満たされている。


正門を出ると見慣れた馬車が停まっていた。


少し塗装の剥げた古い馬車。


周りのピカピカな貴族の馬車に比べれば見劣りするかもしれない。


でも私にとっては一番安心できる馬車だ。


「エリス様! お疲れ様でございました」


御者台からミレイユが降りてくる。


その笑顔を見た瞬間、張り詰めていた糸がふっと緩んだ。


「ただいま、ミレイユ」


「お帰りなさいませ。初日はどうでしたか?」


「いろいろありすぎて、話しきれないくらいよ」


私は苦笑いしながら、馬車に乗り込む。


ふかふかの座席に体を沈めると、どっと疲れが押し寄せてきた。


馬車がゆっくりと動き出す。


窓の外を流れる景色をぼんやりと眺める。


きらびやかな学園都市から、少しずつ庶民的な街並みへ。


夕闇に包まれていく王都の風景が、なぜかとても愛おしく感じられた。


家に帰れる。


待っていてくれる人がいる。


その事実だけで心強くなれる。


馬車に揺られること数時間。


やがて見慣れた屋敷が見えてきた。


窓から温かい光が漏れている。


馬車が停まると、同時に扉が開いた。


飛び出してきたのは白い弾丸だ。


「きゅーん!」


「わっ、ポム!」


馬車から降りようとした私の胸に、ポムが飛び込んでくる。


一日中会えなくて寂しかったのだろう。


私の顔をぺろぺろと舐め回す。


「ただいま、ポム。いい子にしてた?」


「きゅるん!」


尻尾をちぎれんばかりに振っている。


なんて可愛いんだろう。


一日の疲れが一瞬で吹き飛んでいくようだ。


「おかえり、エリス」


「お帰りなさい、エリスちゃん」


「お姉ちゃまー!」


玄関にはお父様とお母様、そしてリアが並んで待っていてくれた。


みんな心配そうな、でも安堵したような顔をしている。


「ただいま戻りました」


私は精一杯の笑顔で応えた。


私の帰る場所はここにある。



夕食のテーブルには、温かい湯気が立ち上っていた。


今日のメニューは野菜たっぷりのポトフと焼きたてのパン。


素朴だけど、どんな高級料理よりも美味しそうだ。


「いただきます!」


私が一口スープを飲むと、体の中から温まっていくのが分かる。


美味しい。


ミレイユの料理は世界一だ。


「それで、学園はどうだったんだい?」


お父様が待ちきれない様子で尋ねてくる。


お母様もリアも、興味津々といった顔で私を見ている。


私はスプーンを置いて、今日一日の出来事を話し始めた。


「まずは食堂なんだけど、すごく広くて綺麗だった! ご飯も美味しかったし、パンがおかわり自由!。そこで友達もできたの」


「まあ、お友達が?」


お母様が嬉しそうに手を合わせる。


「うん、入試の時に一緒だったユリっていう子。魔法科の天才なんだけど、すごくいい子なの」


ユリとの再会や、一緒に大盛りランチを食べた話をすると、家族みんなが笑ってくれた。


「それから図書館! もう、すごいの! 天井まで届く本棚がずらーっと並んでいてね。錬金術の本もたくさんあったわ」


私は身振り手振りを交えて、あの圧倒的な知識の殿堂について語った。


リアは目を丸くして聞いている。


「本がいっぱいあるの? 絵本もある?」


「ええ、きっとあるわよ。今度探してみるね」


「わーい!」


そして話は、一番の難関へと移る。


「……でもね、先生がちょっと変わっていて。錬金科の担任なんだけど、アイラ先生っていうの。見た目はすごく綺麗な人なんだけど……」


私は言葉を濁しながら、あの鬼のような課題について説明した。


好きな色のポーションを作ること。


素材は自分で調達しなければならないこと。


そして分厚いレポートの束。


「初日からそれは……なかなか厳しいな」


お父様が苦笑いする。


「でも、先生は言っていたわ。それが錬金術師の基本だからって」


「ほう……良い先生じゃないか」


お父様は深く頷いた。


「厳しさの中に、確かな信念があるようだ」


「うん。だから、絶対にいいものを作って、先生を驚かせてやりたいの」


私が拳を握りしめると、お母様が優しく微笑んだ。


「エリスなら大丈夫よ。あなたは自慢の娘だもの」


「お姉ちゃま、がんばって!」


リアも口の周りをスープで汚しながら応援してくれる。


足元ではポムが、私の足におでこを擦り付けていた。


「きゅぅ」


僕も応援してるよ、と言ってくれているみたいだ。


家族の応援を背に受けて、私は改めて決意を固めた。


絶対に課題をクリアしてやる。


そして特待生の名に恥じない結果を出してみせる。


楽しい夕食の時間はあっという間に過ぎていった。


お腹も心も満たされて、私はポムと一緒に部屋に戻った。

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