第90話 黄色いポーション
隣にあった『生活を彩る魔導具たち』という本も手に取る。
魔力で冷える冷蔵庫や、自動で掃除をしてくれる箒。
人々の生活を豊かにするアイテムの数々。
夢が広がる。
錬金術の世界は、私が思っていたよりもずっと広くて、そして深い。
知見が広がりそうだ。
「でも、今は我慢ね」
私は名残惜しさを感じながらも、ゴーレムの本と魔導具の本を棚に戻した。
あれらはかなり難しそうだ。
今の私の実力では、基礎理論を理解するだけで何年もかかってしまうだろう。
まずは足元を固めないと。
ポーション作成は、錬金術の中でも比較的入りやすい入り口だ。
ここでしっかりと成果を出して、次のステップへ進む。
私は気を取り直して、再び棚を探し始めた。
ポーション、ポーション……。あった。
『ポーション大全 ~効能と色彩の神秘~』
辞書みたいに分厚くて重たい本だ。
背表紙の金文字が、重厚な輝きを放っている。
「これなら、求めている情報がありそう」
私はその重たい本を両手で抱え、近くの閲覧テーブルへと運んだ。
よいしょ、とテーブルに乗せる。
椅子に座り、重い表紙をゆっくりと開いた。
中には、数え切れないほどのポーションのレシピが載っていた。
一つ一つのポーションに、詳細な解説と、美しい挿絵が添えられている。
色んな素材で作られる、様々な種類のポーション。
回復薬。
解毒薬。
筋力増強薬。
効果も様々なら、色も様々だ。
基本の赤や青だけでなく、緑、紫、白、黒……。
見ているだけで楽しくなってくる。
「さて、私は何色を作ろうかな」
課題は『自分の好きな色』だ。
私は自分の髪を一房、指でくるくると弄びながら考える。
「……黄色、にするか」
温かくて眩しい色。
私が錬金術を使う時に放たれる、あの「光」の色にも似ている。
「うん、黄色いポーション。可愛くていいかも」
私はページをめくり、黄色のポーションを探した。
黄色い液体で、かつ、一年生の私でも作れそうな難易度のもの。
『麻痺の毒薬』 ……うっ、これは黄色だけど、ダメね。
課題で毒薬を提出したら、アイラ先生にどんな顔をされるか分からない。
「あら、誰を殺すつもりですか?」なんて、笑顔で聞かれそうだ。
『発光薬』 飲むと体が光る薬。 ……宴会芸にはいいかもしれないけど、実用性が微妙だわ。
私はさらにページをめくる。
そして、一つの項目に目が留まった。
『初級・魔力微回復薬』
説明文を読む。
精神を安定させ、枯渇した魔力をわずかに回復させる効果を持つ。
また、服用者の集中力を高める副次効果もある。
「……これだわ」
魔力回復。
今まで私が作ってきたのは、主に身体の傷や疲労を癒す「回復ポーション」だった。
肉体へのアプローチ。
対して、これは精神と魔力へのアプローチ。
全く違う分野だけど、錬金術師として魔力を扱う私にとっては、喉から手が出るほど欲しい効果だ。
「よし、これにしよう」
私は決めた。 黄色い、魔力微回復薬。
これなら、私の「好きな色」という条件も満たせるし、実用性も高い。
何より、作っていて楽しそうだ。
私はレシピを食い入るように確認する。
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