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【書籍化決定】転生処理ミスで貧乏貴族にされたけど、錬金術で無双します!~もふもふとお金を稼いで家を救います~  作者: 空月そらら
第二章

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第85話 錬金術師としての腕

男子生徒の一人が、悲鳴のような声を上げた。


アイラ先生が「よいしょっと」と軽々しく机に置いたもの。


それは、分厚い紙の束だった。


一センチや二センチじゃない。


辞書くらいの厚みが、一人分として用意されている。


私たちの顔色が、一斉に真っ青になった。


血の気が引く音が、聞こえてきそうだ。


「では、帰る際はこの紙を持って行ってくださいね! こちらには、来週からの授業スケジュール、今後についての注意事項。そして、レポートの提出用紙です! あと、ほとんど必修なので、全員同じ授業ですからね!」


にっこりと微笑む先生。


その背後に、ドクロマークが見えた気がした。


「ええ……」


「嘘でしょ……」


あちこちから、絶望のうめき声が漏れる。


なんて課題を持ってくるんだ。


入学式で疲れた体に、追い打ちをかけるような仕打ち。


これが、錬金科の洗礼か。


「では、これにて説明会を終了とします! 皆さん、気をつけて帰ってくださいね!」


アイラ先生はそう言うと、颯爽と教室から出て行った。


嵐が過ぎ去った後のような静寂が、教室に残される。


私たちはしばらくの間、動くことができなかった。


現実を受け入れるのに、時間が必要だったのだ。


やがて、ギギギ、と錆びついた機械のように、誰かが立ち上がった。


それを合図に、私たちもゆっくりと立ち上がり、その紙の束がある場所に向かう。


「……重い」


手渡された紙の束は、物理的にも、精神的にも、ずしりと重かった。


これだけの量を、読み込み、書き込まなければならないのか。


「うう、こんなにあるのか」


「嘘……。初日からこれ……?」


「帰り、素材買いに行くかな……」


生徒たちはみな、そんなことをつぶやいている。


肩を落とし、足取りも重い。


もちろん、私も同様だ。


あんなに綺麗で優しそうな先生なのに、言っていることはかなり鬼だ。


スパルタなんてレベルじゃない。


これは、サバイバルだ。


でも……。


私は、手の中の重たい紙束を見つめる。


「好きな色のポーションを作る」その課題自体は、すごく興味深かった。


錬金術師としての腕が鳴る。


普通の赤や青じゃ面白くない。


せっかくなら、誰も見たことのないような、綺麗な色のポーションを作ってみたい。


例えば、ポムの毛並みみたいな純白とか。


あるいは、茜色とか。


「……やってやろうじゃない」


私は、小さな声で呟いた。


やはり、私はこの学園を何とか卒業しなくては。


こんなところでへこたれていたら、女神になんて勝てないわ。


そうして、皆順番に紙を取っていく。


私も自分の分をしっかりと抱え、教室を出ていく。


教室の外の空気は、少しだけ冷たくなっていた。


長い廊下を歩く。


先ほど通った美しい絨毯に、光が横から差し込んでいる。


舞い上がる埃が、金色に輝いて見えた。


その美しい光景も、今の私には、これからの苦難を照らすスポットライトのように思える。


ため息が出そうになるのを、ぐっとこらえる。


「とりあえず、お腹空いた……」


緊張が解けたせいか、急激な空腹感が襲ってきた。


これじゃあ、戦う前に倒れてしまう。


「食堂、どこだっけ……」


私はポケットから、入学式で配られた学園内の構図を開く。


複雑な地図を目で追いながら、現在地と、近くの食堂を探す。


L棟の近くに、学生食堂があるはずだ。


「あった、ここね」


もう食堂も開いているだろう。


美味しいものを食べて、英気を養おう。


そして、昼食を食べた後は。


その課題と言われている、ポーションの様々な錬金方法が載った本を探しに行こう。


学園の図書館なら、きっと私の知らない知識が山ほど眠っているはずだ。


あの「魔法館」に、もう一度行ってみようかな。


「よし、行動開始!」


私は、抱えた紙束を抱き直す。


重みは変わらないけれど、気持ちは少しだけ前向きになった。


空腹は最高のスパイスだ。


まずは腹ごしらえをして、それから図書館戦争に挑むのだ。


そうして私は、美味しい匂いが漂ってくるであろう、近くの食堂に向かうのだった。


私の学園生活は、波乱と課題と、そして少しの空腹と共に、幕を開けた。

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