第79話 偉大な錬金術師
私は、息を呑んだ。
まさか、とは、思うけど。
「私は数ヶ月前、原因不明の病に倒れ、生死の境を彷徨いました。国中の名医たちですら、匙を投げた、その絶望の淵から、私を救い出してくれた人物がいます」
会場がどよめき始める。
ちょっと、ちょっと、ルートス!?
もしかして、私のことを言うつもり!?
「その方は、この王国随一の、偉大な錬金術師です」
その言葉に、会場が大きくざわめいた。
ちょ、えええええっ!?
いや、確かに私、頑張ったけど!
偉大な、とか、王国随一、とか!
そんな、大げさな!
「おお……!」
「そんな人が……」
「錬金術で、あの、公爵家の不治の病を……?」
私は、心の中で悲鳴を上げた。
すごい、持ち上げられてる。
だけど、彼の発言は、それだけでは終わらなかった。
「そして、その偉大な錬金術師は、この学園に、入学されます!」
その言葉の意味を、理解した瞬間。
講堂は、今日一番の歓声と、拍手に包まれた。
「うおおおお! すげえ!」
「そんなすごい人が、この学園に!?」
「一体、誰なんだろう!」
「世紀の、天才だ!」
私は、もう顔から火が出そうだった。
恥ずかしすぎる。
ちらりと、ソフィアの席を盗み見る。
彼女は、信じられないという顔で、壇上のルートスを睨みつけていた。
その美しい顔が、屈辱に歪んでいる
表情は、明らかに不服そうだ。
ライバル公爵家のルートスに、話題を全部持っていかれちゃったものね。
私の隣に座っていた男子生徒が、興奮した様子で、私に話しかけてきた。
「おい、聞いたかよ!? そんなすごい錬金術師がいるんだってよ! 一体、誰なんだろうな! 会ってみたいな!」
うん。 聞いてる。
ていうか、それ、私だし。
私はただ、「そうですね、すごいですね」と、曖昧に笑って、誤魔化すしかない。
ルートスの衝撃的な演説が終わり、入学式は閉会となった。
私は、これ以上目立つ前に、誰にも気づかれないようにそそくさと、その場を離れる。
これから始まる、学園生活。
なんだか、とんでもない波乱の幕開けになってしまったようだ。
私は、深くため息をつきながら、人でごった返す、講堂を後にするのだった。
【作者からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が作者の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




