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 山白が30位とは──。

 どういう魔法を使ったのか。


 見ると鴨下が悔しさに震えていた。


「このアタシが──4位だなんて」


 3位の女子生徒は、飯田はんだ光莉ひかり

 ああ、彼女か……


「まぁ鴨下。こういうこともあるさ。それに勉強は競い合いじゃないぞ」


「余裕じゃない、俊哉。自分だって1位は取り損ねたくせに」


 1位を取り損ねたのはどうでもいいが、全教科満点を取れなかったのは悔しくはあるか。

 次回からは、苦手な暗記ものをもっと効率よく覚えられるよう、より工夫しないと。


 鴨下がスマホを見ながら、眉をしかめる。


「変ね、これ」


「何がだ?」


「見て」


 鴨下がスマホの画像を見せてきた。


「1学期の中間と期末テスト、そして2学期の中間の順位表よ」


「いちいち撮っておいたのか」


「飯田光莉は、順に10位、8位、5位と上がってきているわ」


 そして今回の期末で3位か。


「努力量を増やしてきたのか、勉強のコツを身につけてきたのか。どちらにせよ、何も変じゃないな」


「飯田さんはね。問題は朝水陽介という生徒よ」


 俺は画像を見て、首を捻った。


「どこにもいないな」


「そうよ。これまでは30位以内には入っていなかったの。それがいきなり、1位よ。変でしょ?」


「転校してきたんじゃないか?」


「転校生が来たら、噂くらい聞くわよ」


 どうだかな。

 俺も鴨下も、人気者ってわけじゃないからな。他クラスの情報なんて、そんなに入ってきてないだろ。


 鴨下はまだ順位表の前にいるようなので、俺はひとりで麻倉のクラスに向かった。


 すると麻倉は、廊下で準備体操していた。


「何やってるんだ、お前は」


「跳びつく準備ですよ」


「跳びつく──なんだって?」


「戸山さん、麻倉彩葉はやりましたよっ!」


 麻倉が跳びついてきた。

 なるほど、これの準備運動だったか。


 あいにく、こっちは準備運動していない。

 よって麻倉に押し倒されるようにして、倒れた。


「うがっ!」


「あ、戸山さんすいません」


「──ったく、早くどけ」


 麻倉を押しやってから、俺は立ちあがる。


「そのテンションで、赤点を数科目(まぬ)がれただけ、とかじゃないだろうな?」


「わたしを侮らないでくださいよ。是非とも、これを見てください」


 麻倉が答案用紙の束を突き出してくる。


「では──」


 麻倉彩葉、2学期の期末テストは。


 数学Ⅰ──41点。

 数学A──30点。

 現代文──72点。

 古典───50点

 世界史──47点

 日本史──45点。

 英語Ⅰ──40点。

 生物───38点。

 化学───32点。

 保健───57点。

 情報───54点。


「赤点はゼロか。やったじゃないか、麻倉!」


「はいっ、歴史を塗り替えましたよ!」


 確かに、麻倉彩葉の歴史は塗り替えたかもな。





 こうして2学期が終わりを迎えた。





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