レオを追う者。
※アリエルの登場により、卑猥且つ不快な表現が多々御座います。苦手な方は読み飛ばして下さいませ。
スファニドの東に位置する正門より、レオがバルダット帝国へと発った翌日の朝のこと。
北門にて、何やら珍妙なる来訪者あり。
「つ、着いたぁぁああああああっっ!!!すっごい!!私すっごいよコレ!!」
騎竜に跨り、両腕を高らかに上げるその少女。
捲れ上がったマントのフードからは、ボサボサの髪に紛れて、ネズミの様な小さな耳が覗いていた。
ほとんど不眠で来たのであろう、少女の目元に浮かぶ隈も酷いものだが、そんな主を乗せて来た騎竜の顔もまた酷い。
隈の目立つ瞳を、主と共に爛々とさせながら、鼻息荒く、徹夜明けのハイテンション。
何か薬でも使ったのではないかとさえ思えてくる。……いや、実際使ったのだが。
「昼前に着くとか、ス・ゴ・ク・ね!?シャロン様の丸3日、更新しちゃってんよオイ!ヤバいよヤバいよ!私達、超出来る子だよ!!リュー君流石!!私も流石!!きゃっほいっ!!うはうは!!」
少女は懐より、何やら丸めた布を取りだすと、それを勢いよく鼻に宛がい息を吸い込んだ。
「スゥーーー……、ハァーー……。っ、よし!!ここまで頑張れたのも、全てはこれのお陰!!リューク様様っすわ!!」
はぁはぁ、げへへ、と気味の悪い声を零す少女。
それから布を広げピンッと左右に伸ばすと、鼻先からぐるりと一周して顔に巻き付ける。
その姿、唯の不審者。
「よっしゃぁぁああ!!漲るパワー!!行っくよぉ、リュー君!!」
「グワァァアア!!!」
主の合図で、テンション高く走り出す騎竜リュー君。
察した方もいるだろうが、この名前が少女の口から出るたびに、彼女の上司であるリュークは苦々し気な表情を浮かべる。
「スー、ハー。スー、……はぁ。早くまた、会いたいです。リューク様……」
鼻に巻かれた布――手拭いを通して呼吸を繰り返しながら、寂し気にポツリと呟く。
そして思う。
出来れば、パンツが良かったな……と。
*******
昼には大砂嵐が止むとの報せが、サシャマ周辺の諸外国へと伝達される。
それはもちろんスファニドも例外ではなく、冒険者等はもちろんの事、サシャマ方面からの途絶えていた物流が再開される事に、商人や市民までもが喜んだ。
「これで漸く動けますね。随分と長く滞在してしまいました」
「そうだね。でも、これからが本番だ。砂漠越えは過酷だからね。気を引き締めていかなくちゃ」
ニックの気の緩んだ声掛けに、対してリヒトは顔を引き締め直す。
方向感覚さえ失ってしまう360度砂ばかりの景色に、不定期に吹き荒れる砂嵐。
加えて、過酷な環境下で襲い来る癖の強い魔物達。
少しの気の緩みが死へと繋がる事も多いサシャマ砂漠。冒険者でも、砂漠に不慣れな者ならば、最低Dランク以上からの砂漠越えが推奨されている。
「あー、はいはい。分かってますよ。……全く、砂漠越えは憂鬱です」
冗談めかしく肩を竦めて笑って見せると、ニックは小さく吐息を吐いた。
「あはは!でもサシャマって、大砂嵐の直後は素材なんかを高く買い取ってくれるから、正直今は助かるかな」
「ったく、会ったばかりの子の為に、依頼料なんか出したりするからだ。金貨一枚稼ぐのも楽じゃないんだぞ。お人好しも大概にしろよ、クソ勇者め。……はぁ。暫くは野宿と安宿生活かぁ……」
「うぅ……。ご、ごめんってば、ビビ。サシャマの王都に着くまでには、いくらかは稼げるとは思うしさ。……ほら、その為に今、道中で稼げるような依頼を見にギルドに向かってるんだろ?……えーっと、お、お昼は、豪華にするからさ。……ね?」
肩を落とすビビに、リヒトは困った様な笑みを浮かべながら、その顔色を覗き込む。
ビビは僅かに顔を上げて、ジト目でリヒトを見つめた後、くすりと笑った。
「しょーがないなぁ。デザート付きで許してやるよ。フルーツタルトな」
「あらぁ。じゃあ私はアップルパイねぇ。アイスも添えたやつ~」
「私はアフォガードでお願いします」
「俺、チーズケーキ。ベイクドの」
「全員なの!?ニックとガルドまで!?普段お前等食べないじゃないか!」
「暫く贅沢が出来ないと思うと、食べたくなりますよね」
うんうんと頷くニックとガルド。
リヒトは財布の中身を覗きながら、「まぁ、別にいいけどさぁ……」と溜息。
そんなリヒトに、彼の仲間達は穏やかな笑みで視線を向ける。
「さぁーて!依頼見て、昼飯食って、とっとと行くぞ糞野郎ども!稼ぎまくるぞ~」
ビビが「んー」と背伸びして、軽く腕を回す。
それから、「索敵は任せとけ無能共!魔物を刈りまくって、荒稼ぎしてやんよ!」と鼻息荒く拳を握った。
「はは。ありがとう、ビビ。……みんなも、付き合ってくれてありがとね」
「……今更ですね」
「今更ねぇ~」
「あっはっは!今更だな!」
各々笑みを零しながら、リヒトの礼に冗談口調で答える。
そんな仲間達にリヒトは苦笑いしながらも、その内は温もりに包まれていた。
「――ん?何でしょう。騒がしいですね」
ギルドに到着する間近。
何やら、ギルドの前に人だかりが出来ているのを見て、ニックが怪訝そうに眉を顰める。
「俺達みたいに依頼を見に来た……って感じでもないしね。何だろう……」
揉め事でも起こっているのだろうかと、リヒト達は急ぎ足でギルドへと向かう。
「……この騎竜、どうしたんだろう」
ギルド前に繋がれた騎竜を見て、リヒトが口元を引き攣らせながら呟いた。
……目が、完全にイっている。
荒い鼻息と、落ち着きなく足踏みを繰り返すその様は、明らかに異常であった。
「……薬でも使ってんじゃねぇか?」
「不思議と、徹夜明けのテンションを思い出しますね……」
横目に騎竜を流し見ながらも、今はこの騒ぎの元凶を確認しなければと、リヒト達は人混みを掻き分けて中へと進む。
すると、中に入って直ぐ、大きな叫び声が耳に響いた。
「何っでダメなんですかぁぁぁああああっっ!!!」
「……!?」
思わず、肩が跳ねあがる。
「お願いしますよぅ!!依頼内容まではいいので、行き先だけでもぉ!!」
「申し訳御座いません。守秘義務が御座いますので……。御指名での依頼でしたら、ギルドを通してお伝えしておきますが」
「それじゃあ、遅すぎるってんですよぅ!!というか、逆に逃げられちゃいますってば!!うわーん!!」
声のする方へと視線を向けると、カウンターを挟んでメルダと少女が何やら言い争っていた。
困った様子のメルダと、注目を浴び過ぎている少女の様子を見て、リヒトは慌てて駆け寄った。
このままでは、事態を面白がった冒険者が、少女に絡みだす恐れがあったからだ。
「どうしました、メルダさん」
「リヒトさん……。その、この方が、エルさんとクロードさんの居場所を教えて欲しいとおっしゃっているのですが、緊急の場合以外は、生憎とこちらにも守秘義務があるもので……」
「だから!緊急なんですってば!!3日ですよ!?3日もあたしゃぁ、碌に飲まず食わずの不眠不休で来たってんですよ!?それなのに、もう街には居ないだなんて!!……うえーん。お願いしますよぅ。ブラでもパンツでも、何でも好きな物あげますから~。……あ、でも、この手拭いは駄目ですよ?」
「……要りませんが」
少女は顔に巻き付けていた手拭いを取ると、大事そうに懐へと仕舞い直した。
メルダの冷ややかな視線が少女を襲う。
「……え、何ですかその目は。もしかして、欲しかったんですか?うわーん。ごめんなさい~。その代わり、何でもしますぅ~。足の裏でも舐めますよぅ。……いえ寧ろ、舐めさせてください。げへ、げへへへへ」
「……結構です」
笑顔で冷たい視線を送り続けるメルダ。
対して、少女の鼠色の髪に紛れていた、ネズミの様な小さな耳が嬉し気に跳ねる。
その可愛らしい見た目からは想像も出来ない様な発言に、リヒト達は耳を疑うより他にない。
それから瞬時に半目となると、大きく一歩、距離を取った。
「え、えーっと。どうして、エルさん達の居場所を知りたのかな?」
「……!!おお!?あなた、エルさん達を御存知で!?」
急に瞳を輝かせ、リヒトへと距離を詰める少女。
それからリヒトの両手を取って握りしめると、「居場所、教えてくれます!?」と食い気味に顔を近付けた。
「し、知ってるけど、教えるのは理由次第かな……」
「ぐふふ。話が分かりますね、あなた!それに中々……げへへ」
「……!?」
ぞわりと悪寒が襲う。
リヒトは反射的に手を振り解くと、ズササーと後ろへと退いた。
「むふふー。若い男の反応も、偶には新鮮でいいですね!」
親指を突き立てる少女。
この子の言ってる事が何一つ理解不能だが、とりあえずヤバイ奴である事だけは確かだと、リヒト一同は察した。
「――おい、亜人の嬢ちゃん」
「はい?嬢ちゃんとは、私のことですか?」
周囲がドン引きする中、野次馬の一人が少女に近寄る。
少女はキョトンとした顔で、自身に近付くその男へと視線を向けた。
具体的には、男のモヒカン頭に。
「ゲヒヒ。ああ、お前のことだ。さっきから話を聞くに、嬢ちゃんはとんだ痴女らしい。その歳でまぁ……」
「はぁ、痴女ですか。……それで?その痴女に何か御用でも?エルさんについて、あなたも何か御存知なんですか?」
「まぁ、ここひと月、それなりに有名だったから知ってるっちゃ知ってるがな」
「おお!居場所も御存知で!?」
「あー……、居場所なぁ。うん。居場所を言えば、何でもするんだったか?ゲヒ、ゲヒヒヒヒ」
男は下品な笑い声を上げながら、少女の体へと視線を向ける。
その舐めまわす様な視線に、少女はむふふーと笑いを零すと、満面の笑顔で男を見上げた。
「いいですよぉ?……でも、本当に居場所、教えてくれるんですね?」
「おうよ。ゲヒヒ……。ここじゃ何だし、場所を変えようか。あんま言えねぇような場所なんでな……ゲヒ」
「ちょ……っ!!」
少女の腕を掴もうと手を伸ばす男に、リヒトが制止の声を上げようと一歩足を踏み出す。
けれど。
「あははっ♪ごめんなさいねぇ?私にもタイプというものがありましてー、まだ!お触りは厳禁でお願いしまぁす♪」
少女は笑みを湛えながら、パンッ!と男の手を軽々と払い除けた。
それから、急にゾッとする様な恐ろしい笑みへと顔を歪ませると、男に一歩詰め寄って、背伸びで顔を近付ける。
「おじさぁん。パンツでも何でもあげてもいいですし、その汚そうなチ〇ポ舐めて差し上げるのも構いませんが、……本当に、本当に、居場所を御存知なんですねぇ?」
「あ、ああ……」
「……あはっ♪そうですか!では、行きましょうか♪何度も確認してすいませんね!……もし、それが嘘だった場合、あなたの事、今度は私が好きにしちゃうので覚悟しておいてください?……私、受けより攻め派なんですよね」
最後の言葉は、声色低く。
少女はにんまりと口角を歪ませて、唇を舐めた。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「はい?」
少女の気迫に圧され、不覚にも固まってしまっていたリヒトだったが、男が出入り口の扉を開けたところで我に返り、急ぎ少女を止めに入った。
「エルさん達の事情については俺達の方が知ってるから!……というか、君。昨日の今日で、どうしてエルさん達の行き先を知ってる訳?それに、ここじゃ言えない場所って言うけど……、俺の知る限りでは、彼女達の行き先はそんな所じゃない筈だ。一体、どこのことを言ってるのかな?」
「……ぐっ、そ、それは……」
男は忌々し気に顔を歪ませると、奥歯を噛み締める。
それから少しの間黙りこくると、急に少女を腕を取って、外に連れ出そうと力を込めた。
だが――。
「むふふー。お触り厳禁って、言いましたよねぇ?」
「が、あ゛ぁぁぁぁあああああっっ!!?」
男が、少女の腕を掴んだ刹那、男の腕が、……斬り落とされていた。
少女は、自身の腕に力なくぶら下がる男の腕を取ると、にこにことそれを眺め始める。
「お、俺の、腕がぁぁぁあああっ!!」
「ああ、その顔、いいですねぇ?ゾクゾクしちゃいますぅ。痛いですかぁ?痛いですよねぇ?腕を斬られたの、初めてですかぁ?初めてですよねぇ?誰でも、特に最初は痛いものです。……はぁはぁ。あなたの初めて、もらっちゃいましたぁ♡げへへ」
少女は下卑た笑みを浮かべながら、斬った男の腕に舌を這わせた。
「クッソがぁぁあああっ!!この、気狂い女がぁぁあああっっ!!」
「むぅ。さっきから痴女やら気狂いなどと、乙女に向かって失礼ですねぇ?これでも私、処女なんですよ?」
「黙りやがれ!!この糞女がぁ!!俺の、俺の腕を、返しやがれぇぇええっ!!」
「はぁ……。大の男が腕の一本や二本で情けない……。綺麗に斬り落としましたから、直ぐにくっつきますってば。……というか私、言いましたよねぇ?嘘ついていた場合、あなたを好きにしちゃうって。約束ぐらい守りましょうよ。これが私のパンツ貰う前の事で良かったですねぇ?そうじゃなかったらあなた今頃……、ふふ?ありとあらゆる初めてを、その身に刻み込まれていましたよ?」
妖艶に唇を舐め取り、少女は腕を放り投げる。
それから、「おまけです」という言葉と共に、男の周りに風が吹き荒れ、服だけが切り刻まれた。
「……あ、ちょっとミスっちゃった」
男のモヒカンがスパンッと斬り落とされ、床に落ちる。
突然のことに男は目を見開くと、血の気が失せたのか、今度は顔色を青褪めさせながら腕を抱えて走り去っていった。
「うへへ。結構いい体してるじゃあないですかぁ。流石は腐っても冒険者。……全裸で走り去る後ろ姿。ケツがたまりませんなぁ。げへへ」
シーンと静まり返る中、少女の下卑た笑いだけが響いていた。
*******
場所は変わり、ギルド内にある相談室。
流血沙汰まで起こされ、流石にこれ以上騒ぎを大きくされるのは不味いとの判断から、メルダが部屋へと通した。
といっても、既に手遅れ感は否めないが。
「いやぁ、先程はありがとうございました!危うく騙されて、あんな事やこんな事をされる破目になるところでした!もう、私ったら、おっちょこちょい☆」
コツン、と頭を叩く少女に、メルダとリヒト達の冷たい視線が浴びせられる。
本人は全く気にしていないが。
「えっと、それで君は、……何者なのかな?」
「あぁ……!!私としたことが!!……コホン。申し遅れました。私はアリエルと申す者です」
「アリエル、ね。どうしてエルさん達を探してるの?」
「……それにつきましては、大変申し訳御座いません。とある事情により、お話しする事は出来ないのです……」
「……それだと、俺達も話せないのだけど」
「あーん!お願いしますよぅ!そこを何とかぁ!!」
「……近い近い。悪いけど、どう頼まれても無理だから」
テーブルを乗り越えて、リヒトへと顔を近付ける。
先程の件もあってか、リヒトは警戒気味に上半身を傾けて身を逸らした。
「むぅ~。……分かりました。全ては語れませんが、……致し方ないですね」
少女――アリエルは、ソファへと座り直して腕を組むと、険しい表情になりながら語り始める。
お茶らけた雰囲気とは打って変わって、急に真面目な態度となったアリエルの様子に、リヒトも皆息を呑んだ。
「そのエルさん達の傍に、金髪碧眼のそれはもう愛らしい天使の如き少女が、一緒にはおりませんでしたか?」
「……えっと、そこまでかは分からないけど、もしいたとして、それがどうかしたのかな?」
「やはり、いらっしゃったのですね……」
リヒトの反応を見て、アリエルは溜息を吐いた。
それから大きく息を吸い込むと、リヒトの瞳を見つめながら言葉を続けた。
「私の探し人は、エルさんやクロードさんではなく、その少女で御座います」
「え……?」
「そうですね……。恐らく、“レオ”という名を使ってはいませんでしたか?」
「使ってた……?ということは、……偽名?」
「はい。……真の名は、訳あってお教え出来ませんが、とある御方の御命令により、ひと月程前から彼女の行方を追っておりました」
「とある、御方……。理由は、やっぱり話せないの?」
「申し訳御座いません」
アリエルは深々と頭を下げると、痛まし気に顔を顰めた。
「どうして話せないのかも言えないの?」
「……レオ様の身を守るために御座います。その正体を知っては、それを狙う不届き者も多く現れるでしょうから……。故に、人探しとしてギルドに依頼する事も出来ずにおります。……ああ。あの方の苦悩を想うと、胸が張り裂けそうで御座います……」
胸を押さえ、悲しそうに俯くアリエル。
リヒトは、そんなアリエルの姿に胸を打たれ、「変な人だけど悪い人ではないのかもしれない……」という思いが過る。
「その……、レオ君に会って、どうするつもりなのかは聞いても?」
「誓って、何も致しません。話をするだけで御座います」
「それだけ……?」
「はい。可能ならば説得を。無理であれば、レオ様の御心をお聞きしたく」
「説得って?」
「……申し訳御座いません。それ以上のことは、もう……」
「そうか……」
リヒトは考え込む様に顎に手を置くと、暫くした後、アリエルの瞳を真っ直ぐに見つめて再び口を開いた。
「さっき君は、レオ君を守るために言えないのだと言ったね」
「はい」
「……分かった。その言葉、信じるね。レオ君は、――バルダット帝国に向かったよ」
「っしゃぁぁああああっっ!!」
「!?」
リヒトがレオの行き先を告げた瞬間、アリエルが雄叫びを上げた。
思わずビクつくリヒト。
「ありがとうございます!!名も知らぬ方!!美男美女にロリ!最高ですな!!うはうは!!」
「え……?」
メルダやリヒト一行を端から順に視界に捉えながら、アリエルはげへへと笑う。
「おい。今のロリって、私のことじゃないだろうな」
「おっしゃぁぁああ!!今度こそ捕まえてやんよぉぉおおお!!」
「おい、聞け」
ビビの言葉を聞き流しながら、アリエルは相談室のドアを勢いよく開け放ち、外へと飛び出していった。
「リュー君!!行っくよぉぉおおお!!」「グギャァァアア!!」という声を、ギルドの外から響かせたのを最後に、アリエルの気配は遠くへと消えていった。
「……ごめん、レオ君。選択、ミスったかもしんない」
そんな呟きを口にしながら、リヒトの脳裏に昨日のレオが言った言葉の数々が蘇る。
『カーティス公爵』『私兵団』『ストーカー』
まさか、さっきのって……?
リヒトは乾いた笑みを零すと、先程の失敗を挽回する為にも、「早く公爵に会いに行かなくちゃ……」と、決意を新たに立ち上がった。
第二章、無事完結です。
たくさんのブクマにポイント評価、本当にありがとうございました!
正直、私の小説如き、ブクマ100件いけば奇跡だよねぐらいに思っていたのですが、まさか250を超えるとは…。ありがたや~ありがたや~。
ブクマしていない方も、アクセスして頂き本当にありがとうございます!
こんなに多くの方が読んで下さっているのだなと、いつも励みにしております。
小話等を少々挟みますが、第三章『バルダット帝国編』も、どうぞよろしくお願い致します。




