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第二十一話 「望まぬ再会」


 冒険者からは色々な武器の錬成を依頼されていた。

 近衛騎士や守衛騎士たちが装備しているような剣の他に、槍や斧など。

 また、かなり特殊な形状の武器を所望する依頼も中にはあった。

 鎖が付いている鎌とか、大きなフォークみたいな三叉槍とか、爪で引っ掻くように攻撃できる鉤爪とか……

 当然私はそれらの錬成の経験がないため、クリムに感覚を教えてもらいながら武器錬成をすることになった。


「冒険者って変な武器使う人多いの?」


「使う武器に規則はないからね。だから古今東西、あらゆる国の武器をみんな使ってる。もちろん錬成師はそれらの武器を作るように依頼を受けるわけだから、今からでも知見を広げておいた方がいいよ」


 クリムは商人のお父さんと色んなところを旅していたから、かなり知識は豊富な方だ。

 だから色々な武器や道具について知っていて、錬成術の腕もあるから簡単に手本を作ってみせた。

 そういうことをさらりとやられると、否応なく実力の差を感じさせられてしまう。

 さすがは天下の宮廷錬成師様だ。

 そんな風にクリムの助けもあるおかげで、私は順調に錬成依頼をこなしていった。


 それから一週間ちょっとが経過。

 冒険者からの依頼を引き受けているうちに、次第に町で自分の作った武器を見かける機会も増えてきた。

 私が錬成した武器を、町の冒険者たちが背負って歩いている。

 その様子を見て、私は密かに歓喜の笑みを浮かべていた。 

 まだ自分のアトリエを開いたわけじゃないのに、自分の作ったものが誰かの手元に届いている。

 王国騎士の人たちにも傷薬とか剣を使ってもらっているけれど、あれはあくまで宮廷錬成師シュウの手伝いとして作ったものだから。

 個人的に引き受けた依頼で武器を作って、それを使ってもらうというのはこんなにも嬉しいことだったんだ。

 ちなみに町中では、冒険者同士のこんな会話を聞いたりもした。


「あれ、お前武器新調したのか?」


「そうそう。錬成師に依頼して昨日受け取りに言ったんだよ。ほら、見習い錬成師のショコラって知ってるだろ?」


「あぁ、あの宮廷錬成師のとこにいるっていう……」


 ギルド近くにいた冒険者二人が、私のことについて話をしていた。


「噂通りやべえ性質ばっか付いててさ。試しに今朝、ブールの森に魔物討伐しに行ったんだけど、今まで手こずってた樹人(トレント)を一撃で倒せたんだよ! お前も武器新調しようか悩んでるって言ってたし、錬成師ショコラに頼んでみたらどうだ?」


「へぇ、かなり良さそうだな」


 そんな風に見習い錬成師ショコラの名前が密かに広まり始めている。

 正直嬉しい気持ちよりも恥ずかしい気持ちの方が大きいから、あまり話を大きくしないでほしいけど。

 ちなみに依頼品の受け渡しは守衛さんに任せているから、私は顔を知られていない。

 だから変に注目されることはなく、そこだけは幸いだった。

 そして嬉しい知らせがもう一つ。


「錬成師ギルドで流れてたショコラの悪評、少しずつ解消されてるみたいだね」


「えっ、そうなの?」


「実際にショコラの武器を使って大型の討伐依頼を達成した冒険者がいるみたいだよ。その人の宣伝の効果もあって、今度は逆にショコラを評価する声が挙がってるって守衛騎士が言ってた」


「……そう、なんだ」


 思いがけないことを聞かされて、じわじわと嬉しさが込み上げてくる。

 錬成師ギルドで広まっていた噂まで無くなってきているんだ。

 一時は王都での錬成師活動すら危ぶまれたっていうのに……


『ショコラ様の噂がすでにギルド内に流れておりまして、徒弟の引き受けをしているアトリエからはすべて志願拒否をされております。ですのでギルド側からご紹介できる場所は一つも……』


 それが今は、噂も消えかけていて、こうして町の冒険者たちにも話題にされている。

 ブラックなアトリエでこき使われて、錬成師人生を台無しにされた私が……


「嬉しそうだね、ショコラ」


「……うん。錬成師として実力を認めてもらうのって、こんなにも嬉しいことなんだね」


 それもこれも全部、目の前にいる幼馴染のおかげなんだと思うと、例えようのない気持ちが湧いてくる。

 胸中で感謝の言葉を送りながら、私は素材採取のためにアトリエを出た。

 これなら自分のアトリエを持った時も、問題なくお客さんは来てくれるだろう。

 思えば悪い噂をそのままにしていたら、自分のアトリエを開いたとしてもお客さんは来てくれなかったのではないだろうか。

 だからこうしてクリムのアトリエにいる間に、悪評を解消できて本当によかったと思う。

 このままクリムのところで修行を続けたら、僅か三年で品評会への出品もできるみたいだし。

 風向きは間違いなく良くなってきている。


「お母さん、もう少しだよ」


 もう少しで、お母さんの夢だったアトリエを開くことができるよ。

 お母さんがすごい錬成師だったってことを、みんなに伝えることができるよ。

 そのためにもっと知名度を上げておこうと思って、足早に素材採取に向かっていると……


「ショコラ」


「……?」


 町を出る直前、不意に後ろから声を掛けられた。

 まさかついに顔までバレてしまったか? なんて満更でもない気持ちで振り返ると……


「えっ……」


 そこには、思いがけない人物がいた。

 私の噂を聞きつけて声を掛けて来た人ではない。

 それ以前から私のことを知っている人物。

 どうして今さら、この人が私に声を掛けてくるのだろうか。


「やっと見つけたぞ、ショコラ……!」


「バ、ババロア、様……」


 私の以前の錬成術の師範――ババロア・ナスティがそこにはいた。

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