表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/190

その50 狙撃手と決戦7

 ガキンッ!


 つばぜり合いが解除される。

 ガクが大きく距離をとると、ニコルもまた一歩後退した。

 感触を確かめるように一度長剣を振る。


「さぁて、銀色のスナイパー。約束守ってくれるわね」


「ええ、『主』の情報でよければ。いくらでもお話ししましょう」


「もともと潜入捜査の利害も一致しているわけだし、願っても無いことだわ。あとは……」


 あいつを倒せばいいのね。

 ニコルの金色の瞳がD4に向けられた。


 私は少し離れて、遠巻きに二人を見守っている。

 いや、見守るといえば語弊があるかも知れなかった。両の手には拳銃。援軍が来た場合サポートできるようにしているのだ。

 もっとも、る気満々の彼女を見ていれば、とてもそんな補助など必要ないかも知れないが。


 事情を飲み込んだらしい。

 私たちの会話を聞いていたD4は合点がいったと言うようにうなずく。


「はぁ……大陸警察の剣士さんか。方舟計画のことが表沙汰にならないよう、ノアが情報統制してたんだけども」


「ええ。『大陸警察には』通ってないわよ。闇ギルドの方から嗅ぎつけたの」


 あっちには優秀な情報屋がうようよしているから。

 ダン! 地面を蹴ってニコルは駆け出す。再び長剣が翻ると、右斜め下からの切り上げが少女に向けられた。

 ガキンと刃と刃が合わさる音。寝かされた短刀が剣を止めたのだ。ニコルが剣を退ける前に、スッと額の手が重なる。それから彼女はわずかに顔をしかめた。


「なんだ、あんた傭兵か。大陸警察の幹部かと思ったら」


 地面を蹴って後ろに飛ぶ。金属で構成されているらしいが、それにしたって結構身軽だな。


「冗談じゃないわ。私は下っ端よ。そもそも末端の方が動きやす……!」


 追撃をかけようとしたニコルは、ところが中途で立ち止まる。

「……?」いぶかしむ私だったが、ところがすぐにその理由はわかった。


「反演算―――――――――――――『抵抗』」


 ()()()()()()()()()()()


「……やられましたね」


 カチン、私はリボルバーの撃鉄を起こす。

 D4はゆっくりと手のひらを拡げた。横一線の小さな切り込み。一筋の血…いや、血ではないか。

 オイルのようなものがドロリと垂れた。


 ニコルは忌々しそうに長剣を振る。刃についたわずかなオイルを振り飛ばした。


「鍔迫り合いの時剣を握ったのかしら。素早いこと」


「ご名答。これで銃にくわえて、斬撃も無効化したぞ」


 ニヤリと彼女は笑う。なるほど、ニコルの言葉の通りだ。

 先ほどの一瞬刃と刃がある交錯した瞬間、ガクは相手の刃に自分から触りに行ったらしい。

 わずかでも切り傷を作ればそれでもう『抵抗』することはできるということか。


「それだけじゃないよ」


 ガクはゆらゆらと首を振った。


「抵抗の真髄はその応用力さ。考えてごらん、剣撃と銃撃が効かないほどの、身体的特徴抵抗力」


 力学的に私を倒すことはもう、不可能だよ。


 ガキンッッ!!

 切り込んだニコルの剣を、ガクは防がない。受け太刀しようともしないし、その場から全く動かなかった。

 ただ棒立ちしているだけであるが、全くの無傷。刃は首筋あたりにあたったが、傷一つ付いていない。


「なあるほど、すごいわ。めちゃめちゃ硬いってことかしら」


「硬いだけじゃないさ。魔導剣、属性剣、ありとあらゆる剣の攻撃が効かなくなる。もちろん、銃もだ」


 背後から狙いをつけていた私に向けられた言葉だ。ち、バレていたか。


「さあて、こっちの番だよ。えいやっと!」


 再び甲高い金属音。

 高速で振るわれた短刀をすんでのところで躱すと、そのまま数度打ち合う。

 流れるような斬撃に頬を薄く切られると、ニコルは顔をしかめて真後ろに飛んだ。


「はぁ、しようがない」


 ゆっくりとそのまま切っ先を下す。

 おそらくこの場で斬り合っている誰もがそう思うだろう。『打つ手がない』と。

 私自身も、その一人だった。当然ながらその劣勢を、ガクが……D4が無視するはずはない。


「逃がさないよ。悪いけど、君らは全員殺す」


 短刀の血をぺろりと舐めとる。もうじきその刃が、もっともっと多量の血に染められると、少なくとも彼女は思っているに違いなかった。

 半分勝利を確信しているように見えるし、事実としてその動向は間違っていない。

 超硬度の体。斬撃が効かず、銃撃も全く無効化されるその身体を目の前にして、

 ところが、だ。ニコルは背を向けた。別に狼狽する様子もなく、策を講じる様子もなく、ただ淡々としている。

 剣が効かないというのに、自分の武器が破壊されたに等しいにもかかわらず、その反応だ。

 それから彼女は大きく息を吸うと、面倒臭そうに頭を掻いた。


「やめた!!」


「は?」


 思わずガクの足が止まる。

 ニコルは首だけで振り返ると、これまた手持ち無沙汰にポケットに手を入れた。


「やーよ。斬っても斬っても斬れない相手と戦うなんてお断りだわ。ねえ銀色のスナイパー、あいつを倒せばいいんでしょう?

 私が戦わなくてもいいわよね?」


 私は頷く。


「それなら、もう勝負はついてるわ。私の勝ちよ。ねえ、機械さん、質問」


 カチリ、ニコルは鞘に剣をしまう。


「私はどうやってゼータポリスに侵入したでしょう?」

読んでくださった方ありがとうございましたー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ