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Ash Crown ‐アッシュ・クラウン‐  作者: 新月 乙夜
魔の森のダンジョン

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魔の森のスタンピード3


「騎兵隊に通達。敵の側面を突き、そのまま切り込んで分断しろ。分断が成功したら、メイジ隊の一斉攻撃で敵の勢いを殺ぐ」


 戦況を睨みつつ、ジェラルドはそう指示を出す。すぐさま、伝令の兵士が走り出した。しばらくして、これまで温存されていた騎兵隊が動き出す。モンスターの大群の側面を突き、そのまま食い込んで切り裂いていく。その光景は圧巻の一言だ。


 騎兵隊の動きに合わせ、メイジ隊も準備を始めていた。そしてタイミングを見計らい、命令通り魔法の一斉攻撃を放つ。破壊力抜群のその攻撃は、モンスターの勢いを確実に殺いだ。


「今だ、押し返せ!」


 モンスターの勢いが弱まった瞬間を見計らい、遠征軍は攻勢に打って出た。力を振り絞って前に出て、モンスターを防衛陣地から排除する。ただそのまま大群のなかへ切り込んでいくことはしない。敵を押し戻すと、それ以上は功を焦らず、合図に合わせて素早く撤収する。一糸乱れぬその動きは、厳しい訓練のたまものだ。


「よし。前線の部隊を入れ替えろ」


 ジェラルドがそう命令を下す。すぐに部隊の交替が行われた。撤収してくる部隊はそのまま後方へ下がり、代わりにこれまで後ろにいた部隊が前に出る。体力をまだ十分に温存していた彼らは、撤収する部隊の背中を追うモンスターどもの前に立ち塞がり、そして見事に跳ね返した。


「だぁぁあありゃぁああああ!!」


 最前線で雄叫びを上げ、長大なバルディッシュを振り回しているのは、ジェラルドの護衛役であるはずのボルストだ。彼もまた一部隊を率い、こうして前線で戦っている。彼自身は主君の傍を離れることに難色を示したのだが、そのジェラルドが説得して前線に出てもらったのだ。


『この状況で戦力を出し惜しみしている余裕はない』


『ですが、殿下……』


『君は、いや我々は成長限界に達している。我々がそこまで自分を高めたのは、ただ単に自分が生き残るためではない。まさにこのような状況で味方を鼓舞し、戦線を支えるためだ。私はそう信じている』


『……そこまで仰るのでしたら、もはやわたしに否やはありません。必ずやご期待に応えて見せましょう』


 ボルストは力強くそう応えた。そしてその言葉通り、獅子奮迅の働きを見せている。彼の大きな身体が、今はさらに大きく見えるようだった。その戦いぶりを見てジェラルドは小さく頷く。これでまたしばらく戦線は維持できるだろう。


 ただ、部隊を交替させたとは言え、全体としてみれば遠征軍はダメージを受けている。戦死者がすでに多数出ているし、怪我人もひっきりなしに後方へ運ばれている。下げた部隊を休ませているとはいえ、完全回復などできるはずもない。


 遠征軍の体力は、確実に削られている。ヒーラーたちも頑張ってはいるが、しかしすでに治療が追いつかない状態だ。ポーションの備蓄も、あとどれだけ持つか分からない。モンスターと人間の体力勝負だった。


 そして体力勝負と言えば、気がかりなことがもう一つ。モンスターの大群の奥で戦い続けるジノーファのことだ。彼は相変わらず孤軍奮闘している。討伐数は、もしかしたら一〇〇〇に届いているかもしれない。


 桁違いの活躍と言っていい。そして今のところ、動きに精彩を欠いたようには見えない。だが、聖痕(スティグマ)持ちとはいえ彼も人間だ。体力には限界がある。


(どれほど持つ……?)


 ジェラルドもそれが掴みきれない。ダンダリオンもそうだが、こと戦闘になると聖痕(スティグマ)持ちは規格外すぎて、常識が当てはまらないのだ。彼は内心で少しはらはらしながら、ジノーファの戦いぶりを見守った。


 一方、ジェラルドにそんな気苦労をさせているとはつゆ知らず、ジノーファはモンスターのただなかをまるで風が吹き抜けるように戦っていた。巧みにステップを踏みながらモンスターの間をすり抜け、そしてすれ違い様に双剣を振るう。


 ただ振るうだけではない。伸閃を放ち、広範囲の敵を薙ぎ払う。大抵のモンスターは一撃だが、しかし中には一撃で倒せないモンスターもいた。そういうモンスターに、しかしジノーファは拘らない。動き続け、あくまで数を倒すことを意識する。それが全体の負担を軽くすると信じて。


(持つかな……?)


 ジノーファは内心でそう呟いた。武器、体力、魔力、気力、集中力。戦うために必要なものは多岐に及ぶが、そのすべては戦いの中で磨耗していく。自分の持つそれらは、果して最後まで持つだろうか。


 しかしながら、ジノーファのその心配はそれほど深刻ではなかった。なにしろ彼はすでに一度、似たような状況を経験している。つまり三年前、旧フレゼシア大公領で経験したスタンピードだ。


 あの時と今回のスタンピードを、単純に比較することはできない。有利な点もあれば、不利な点もある。そもそも魔の森という場所自体が特殊だ。前提条件が違いすぎて、比べようがない。


 ただジノーファ個人に関して言えば、この三年間でずいぶんと成長した。背も伸びたし、マナもたくさん吸収した。武人としての彼の力は、アンタルヤ王国に居たころとはもう比較にならない。


(きっと、大丈夫)


 ジノーファは自分にそう言い聞かせた。そしてまた伸閃を放つ。そうやって戦っていると、突然地響きがして足もとが揺れた。ジノーファは一瞬動揺したが、しかしすぐに巧みな足捌きで体勢を立て直す。


 地響きの影響はむしろモンスターのほうに強く出ていて、足をもつれさせたり、転んだりした個体が続出した。そうしたモンスターが、さらに他のモンスターの足を引っ張る。大群になっている弊害だ。


 ジノーファはその隙を見逃さず、だんごになっているモンスターを伸閃で次々にしとめていく。そうしている間も、地響きは一定のテンポで続いている。ということは、これは魔法攻撃の余波ではない。彼は妖精眼で地響きの主を探した。


 そのモンスターはすぐに見つかった。あまりにも巨大なのだ。木々を薙ぎ倒しながら、そいつは森の中から現れた。


「ゴォォォォオオオオ!!」


 低い、しかし大きな雄叫びが腹に響く。現れたのは、亀に似たモンスターだ。甲羅を背負ってはいるが、ひれではなく四本の足で巨体を支えている。その体高は、もしかしたら十メートルほどもあるかも知れない。なにしろ森の樹の高さとほぼ同じなのだ。まるで小山がそのまま動いているかのようだ。


 動きは鈍い。のそりのそりと、前へ進む。今ごろになって現れたのも、歩みが遅いせいだろう。しかし巨体なだけあって、一歩一歩は大きい。ズドンズドンと足音を響かせながら、巨大な陸亀のモンスターは遠征軍の野戦陣地へ迫った。


 その様子を見て、ジノーファは一瞬判断に迷った。あの巨大な陸亀は、十中八九エリアボスクラスだろう。ただまだ距離があって、優先して叩くとすれば、ジノーファは一旦戦線を離脱するような形になる。


(近づいてくるまで待つ、か……?)


 その時間でどれだけのモンスターを倒せるだろうか。しかも陸亀はあの巨体だ。この大群へ突っ込めば、歩くだけで他のモンスターを踏み潰してくれるかもしれない。そこまで考え、しかしジノーファは頭を振った。


 見た目からして、あの巨大な陸亀は防御力が高そうだ。メイジ隊の一斉攻撃でさえ、どれほどのダメージを与えられるか定かではない。そして仕留められなければ、あの巨体がそのまま防衛陣地に突っ込んでくるのだ。


 そうなれば、壕や塁の一つや二つ、と言う話ではすまないだろう。陣地がまるごと踏み潰される。つまりあのモンスターは攻城兵器なのだ。そう考えた方がしっくり来る。そして防衛陣地は遠征軍の命綱。これを破壊されるわけにはいかない。


 ジノーファは腹を決めた。ジェラルドからも「エリアボスクラスを優先してくれ」と言われている。その命令に従う形で、彼はモンスターの間をすり抜け、巨大な陸亀のほうへ向かった。その際、できるだけモンスターを倒すことも忘れない。


「……っ」


 巨大な陸亀を見上げ、ジノーファは思わず唾を飲み込んだ。ものすごい圧迫感を覚える。陸亀が一歩進むたびに地面が揺れて、足もとがひどく不安定だ。ただそれを嫌ってなのか、森の奥からさらに現れるモンスターは、陸亀には近づかない。ジノーファにとっては好都合だった。


 陸亀はジノーファなど視界に入っていない様子で、のそりのそりと地響きを立てて歩きながら、遠征軍が立て篭もる野戦陣地目指して進む。この様子なら、最初の一撃はほぼ確実に奇襲が決まるだろう。


 ジノーファは竜牙の双剣を鞘に仕舞うと、シャドーホールからオリハルコンの長剣を取り出す。そして長剣を肩に担ぐように構え、魔力を高めつつ陸亀との間合いを詰める。ただ、相手が巨大すぎて距離感をいまいちつかめない。おまけに近づけば近づくほど、地面が揺れる。


「……っ」


 舌打ちを一つして、ジノーファは足を止めた。そして腰を落としてオリハルコンの長剣を構えつつ、魔力をさらに高める。どのみち使うのは伸閃。なら間合いを精密にはかる必要はない。それよりしっかり踏み込めず、斬撃が浅くなる方が問題だ。陸亀の身体は、甲羅以外も硬そうで、軽い攻撃ではきっと通じない。


 集中力を高め、ジノーファはタイミングを計る。狙うのは陸亀の足。まずは足を潰して動きを止めるのだ。そして陸亀が左の前足で地面を踏みしめたその瞬間、ジノーファは長剣を斜めに振りぬき、渾身の伸閃を放った。


「ガァア!?」


 陸亀が悲鳴を上げた。その左前足には、斬撃の痕が一筋はっきりと残っていて、そこから赤茶色の血が流れ出ている。ただ、切断するには至っていない。陸亀も、この痛撃に体勢をガクッと崩しはしたが、しかし転倒することはなく、今も四本の脚で身体を支えている。そして眼に怒気を滾らせた。


「ゴォォォオオオ……」


 陸亀が空気を吸い込む。その呼吸音を捉えると、ジノーファはすぐに動いた。そして陸亀の側面へ回りこむ。しかし陸亀は巨大だ。ワンステップで回りこめるわけではない。結局、回りこむ前に呼吸音が消えた。そして次の瞬間、陸亀はそれを一気に吐き出す。


「ゴォォォォオオオオ!!」


 咆哮が響き渡る。ただ空気を吐き出したわけではない。そこには多量の魔力が混ぜられている。まさに息吹(ブレス)だ。その衝撃波は地面を削りながら広がり、そして多数のモンスターを吹き飛ばした。


 ジノーファもそのブレスに巻き込まれた。陸亀が巨体であるためなのか、ブレスの射程範囲が広く、そこから離脱しきれなかったのだ。ただ、彼は回避が難しいと判断した瞬間に防御を固めていた。シャドーホールから盾を取り出し、そこに身を隠していたのだ。


 それも、ただの盾ではない。三年前、ラヴィーネを助けたときに、黒騎士がドロップした漆黒の大盾だ。シャドーホールに放り込んでずっとそのままになっていたのだが、それがこの土壇場で役に立った。しかもエリアボスがドロップしただけあって、ブレスの直撃を受けてもビクともしていない。


 ブレスを防いだジノーファの表情は、しかし厳しい。この巨大な陸亀が思った以上に危険な存在であることを思い知らされたのだ。特にこのブレス。予備動作が大きいし長いので、ジノーファだけならどうとでもなる。しかし防衛陣地はそうはいかない。


 陸亀が突っ込んだら踏み潰されると思っていたが、事態はさらに深刻だ。適当な位置からブレスを放たれたら、一撃で陣地が崩壊しかねない。いよいよ陸亀を陣地に近づけさせるわけにいかなくなり、ジノーファは大盾の陰で表情を引き締めた。


 大盾にかかる圧力が徐々に弱くなる。ブレスが終息してきているのだ。それを感じ取ったジノーファは、一瞬だけ悩み、そして覚悟を決める。まだブレスが完全に終息しない中、彼は大盾をシャドーホールに放り込む。いまだ終息しきらないブレスが吹き荒れる中、彼は陸亀に向かって突撃した。


「……っうぅ」


 ブレスの余波がジノーファの身体を打ち叩く。彼は顔をゆがめたが、しかし足は止めない。ブレスを放っている最中、陸亀の動きは硬直している。今がチャンスなのだ。ジノーファはオリハルコンの長剣を振りかぶった。


「はあああああ!」


 裂帛の声を上げながら、ジノーファは伸閃を放つ。狙うのはまた陸亀の左前足。ダメージを負わせることができたものの、しかし陸亀の身体はまだ揺るがない。彼は小さく舌打ちすると、さらに踏み込んで間合いを詰める。伸閃ではらちが明かないと思ったのだ。


「ガァルゥゥウウ……!」


 陸亀の目がジノーファを捉える。突っ込んでくるその小さな身体を踏み潰さんとするが、しかしその動きはのろいし大雑把だ。ジノーファは余裕を持って回避したものの、足元から衝撃が突き上げてバランスを崩し、地面の上を転がった。


 すぐさまジノーファは跳ね起きる。同時にシャドーホールに手を突っ込んで、もう一本長剣を引っ張り出す。大盾と一緒に黒騎士がドロップした、漆黒の長剣だ。彼はその長剣を左手で逆手に持つ。そして陸亀の左前足目掛けて大きく跳躍した。


「おおおおおお!」


 ジノーファは気合の篭った声を上げながら、まずは左手に持った漆黒の長剣を陸亀の左前足に突き刺した。さらに両足を使い、まるで絶壁のような陸亀の脚の側面に身体を固定する。そして右手に持ったオリハルコンの長剣にたっぷりと魔力を込め、目の前の脚に深々と突き刺す。


 同時に、ジノーファは刺突を放つ。突きが伸び、陸亀の脚をさらに深く抉った。彼はさらに何度も剣を陸亀の脚に突き刺し、そのたびに刺突を放つ。そのダメージは決して無視できるものではない。


「ガァァァァアアアア!」


 陸亀が絶叫を上げる。しかしまだ倒れない。それでジノーファは突き入れた剣を、今度はそのまま横に薙いだ。身体がふらつく不安定な体勢だが、彼は聖痕(スティグマ)持ちの膂力に任せて剣を振りぬいた。その際、伸閃を放つことを忘れない。


 次の瞬間、ついに陸亀の左前足が崩れた。蓄積したダメージのせいで体重を支えられなくなったのだ。それに合わせて、ジノーファは陸亀の脚を蹴って大きく跳躍し、そこから離脱する。彼は空中で一回転して体勢を整え、それから柔らかく着地した。


 彼が陸亀を見上げると、その巨大なモンスターは身体を傾けてもがいていた。左前足はもう役に立たない。そして三本の脚では身体を支えられないのか、起き上がることもできずにいる。


 ただ、その眼はまだ死んでいない。それどころか怒りのために、ますます爛々と輝いている。そして陸亀は唯一自由に動く首を動かし、自らの脚を潰した下手人を探す。そしてジノーファを見つけると、口を開いて大きく息を吸い込んだ。


(ブレス!)


 ジノーファはそう直感した。そして同時に、漆黒の長剣を放り出して走り出す。ブレスの死角に回りこむためだ。さっき見たタメの長さからして、十分間に合うはずだったのだが、しかし彼は突然はっとした様子を見せて飛び退いた。


 次の瞬間、さっきまで彼がいた場所が爆ぜる。陸亀のブレスだ。最初に見せたような高出力・広範囲のものではなく、威力と範囲を抑える代わりに連射が利く。陸亀は逃げるジノーファを追って立て続けにそのブレスを放った。


 動き回って陸亀の攻撃を避けながら、ジノーファは妖精眼を使いつつ、そのブレスを冷静に見定めていた。そしてタイミングを見計らい、足を止めて伸閃を放つ。その不可視の刃は陸亀のブレスを叩き割るようにして拡散させた。


(よしっ)


 ジノーファは内心で喝采を上げると、方針を転換した。ブレスを何とかできるのだから、そのまま突っ込むことにしたのだ。当然、陸亀はブレスを放つが、彼は自分に当るものだけ伸閃で散らしつつ、真っ直ぐに突き進む。


「ゴォォオオ!」


 陸亀の様子が変わる。残っていたブレスを全て一気に吐き出したのだ。しかしその時にはもう、ジノーファの接近をかなり許してしまっていた。彼は大きく跳躍し、折れ曲がった陸亀の左前足を足場にして、そのまま甲羅の上に上る。そして甲羅の上を走り、首を渡って陸亀の頭の上に上った。


「ゴォオ! ゴオ!」


 それを嫌がるようにして、陸亀は頭を振った。振り落とされまいと、ジノーファは長剣を足元に突き刺して身体を支える。そのせいか、陸亀はさらにいっそう激しく頭を振った。ジノーファは長剣を杖代わりにしつつ、片膝を付いてそれを堪えた。


「くっ……!」


 激しく振り回されながら、ジノーファは顔を歪めた。このままではいずれ振り落とされてしまう。だがこの状態からどう攻撃すればいいのか。彼が悩んでいると、ふと自分の左手が目に入った。


 その手は、陸亀に触れている。そしてここは陸亀の頭の上。であれば、このまま攻撃してやればいいのだ。そのことに気付き、彼は小さく笑みを浮かべた。そして左手に魔力を集中させソレを放つ。シェリー直伝の浸透勁だ。


「ゴォォォォオオオ!?」


 脳みそを直接かき回されたような感覚なのだろうか。陸亀が絶叫を上げる。ほとんど垂直に首を仰け反らせるが、しかしジノーファは振り落とされない。そのまま二発目の浸透勁を放つ。


 また陸亀が絶叫を上げる。しかしまだ倒れない。陸亀が倒れるまで、ジノーファは何度も何度も浸透勁を放った。


「ゴォ、ォオォオオオオ……」


 全部で二十回は浸透勁を放っただろうか。ついに陸亀の体から力が抜けた。地響きを立てて崩れ落ち、最後に首がしなりながら地面に叩きつけられる。ジノーファはその直前に跳躍して離脱した。


 地面に降りても、油断なくオリハルコンの長剣を構えた。しかしその必要はなかった。陸亀の目から徐々に光が失われ、そして何も写さなくなる。その身体は灰のようになって崩れ落ち、後には巨大な甲羅だけが残った。心臓たる魔石は、きっとあの中だろう。


 陸亀を完全に討伐し終え、ジノーファは安堵した様子で一つ息を吐いた。そしてすぐに気を引き締める。彼はオリハルコンの長剣を仕舞うと、また竜牙の双剣を両手に構えた。そしてモンスターの大群に突っ込む。


 戦いはまだ終わっていない。



放り出した漆黒の長剣は後でちゃんと回収しました。

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