外伝のあとがき
終わりました。終わりました。が、どうしてこうなったぁあ!?
え~、2020/11/03の活動報告を見ますと、外伝の規模について「10万字は越えます。20万字はいかないと思います」と書かれています。それが書き上げてみると、Word換算で脅威の72万字オーバー!? 連載期間も一年を超えていますから、長編を一本書いたようなものです。本当に、どうしてこうなったんでしょう。
まあ、何となく原因は分かっているんです。導入というか、起承転結の起の部分が長すぎたんですね。第一次西方戦争が終わってサラが亡命してくる辺りまでですから、その時点ですでに10万字かそれに近い分量があります。となれば単純に考えても40万字。そりゃ、長くなるってモンです。それにしたって72万字は想定外ですが。
長くなったのは、それだけ書きたいことがあったということ。その理由の大きな部分は、やっぱりマドハヴァディティアにあると思います。新月的にですが、彼は敵役として魅力的だった。彼の話は書いていて楽しかったですからね。彼を中心にして話が広がった、いや広げすぎたかな、と思います。
外伝のタイトルはご存じの通り、「誰がために鐘は鳴る」です。皆様想像は付くかと思いますが、このタイトルは主人公となるベルノルトの名前に引っかけたものです。そしてこういうタイトルですから、当初から「どこかで鐘を鳴らすか」と考えていた訳であります。
当然、最初はベルノルトのために鐘を鳴らすつもりでした。それが蓋を開けてみたら、鐘が鳴ったのはマドハヴァディティアのため。なんかね、そうなっちゃったんです。そういう意味では、この外伝はベルノルトの物語であると同時に、マドハヴァディティアの物語だったのかな、と思います。
あと、新月はWordソフトで原稿を書いているんですが、マドハヴァディティアが死んだのがちょうど666ページ目でした。なんか凄くそれらしくて、笑ってしまったのを覚えています。
なんかマドハヴァディティアのことばっかり書いてますね。強烈なヤツだったからな、アイツ。とはいえ主人公はベルノルトですからね。彼のことも語っておきましょう。
ベルノルトの初登場は本編で、ジノーファとシェリーの息子として生まれました。彼が生まれた時、ジノーファは王家とかそういうものとは関係の無いところで生きようと考えていました。だからこそ、いわゆるアンタルヤ風の名前ではなかったわけです。
しかし皆様ご存じの通り、ジノーファはもう一度歴史の表舞台に現われ、そしてイスパルタ朝を建国しました。それに伴い、ベルノルトもまた王子という立場になります。ただし王位継承権を持たない王子です。
そんなベルノルトが何を思い、どう生きるのか。この外伝はそれが出発点になっています。外伝の冒頭からすでに、彼は「王位を望んではなりません」と言い聞かせられていて、そのために自分が生まれた意味について悩んでいます。その答えを出していくのが、外伝の物語でした。
で、その答えは出たのか? 正直言って、はっきり「こうだ!」という形では書かなかったと思います。というか全体を通して、テーマが薄味になっちゃったかなぁ、と思う部分もあります。
ただベルノルトはずっと、何者かになりたいと思っていたし、目の前の問題には全力で取り組んだ。そしてその全力のなかには、イスパルタ王家の一員として振るうことのできる力も含まれていました。その力を「必要だから」と割り切れるようになった時に、彼の中で少し意識が変わったんじゃないかな、と思います。
王座とからめて、ベルノルトに影響を与えた人物としては、サラとマドハヴァディティアかな、と思います。サラはアースルガム最後の王族として、否が応でもその責務を果たさなければならない立場でした。いわば、ベルノルトには与えられなかったモノを押しつけられた人物、と言えます。
だからこそベルノルトは彼女に、自分の持ち得なかった選択肢とか、それこそもう一人の自分を投影していたのではないか。それが全てではないんでしょうけど、そういう部分があったのではないかと思います。そしてだからこそ、王位というモノを客観的に見ることができるようになった。そんなふうに繋がっていったんじゃないかと思います。
一方でマドハヴァディティアですが、彼は良くも悪くも唯我独尊で、絶対権力者としての王を体現したかのような人物でした。ジノーファとはまた違ったタイプの王であり、ベルノルトには少々刺激が強かったかも知れません。非常に王らしくて、王としての権力を、正しいか正しくないかは別として、ためらいなく使った人物でした。
王位と絡めるなら、ベルノルトにとって彼は反面教師でした。彼のやったこと全てが間違っていたわけではないでしょう。ただなんというか、権力の副作用みたいなものを、ベルノルトは彼を通して学んだような気がします。それは責任とか、あるいは因果とも言えるかも知れません。巡り巡って自分に返ってくる、みたいな。
王と言えばもう一人、ジノーファを忘れることはできません。ベルノルトにとって彼は父であり、またお手本と言えるでしょう。ただ作者的な視点でいえば、だからこそベルノルトをジノーファのコピーにはしたくなかった。それが上手くいったのかは分かりませんが、やっぱり似てしまった部分もあるんでしょうね。まあ、反抗していたわけではないですし、それも仕方がないでしょう。
結局、ベルノルトの出した答えとは何だったのか。彼自身、まだ答えは出していないのではないでしょうか。ただ少なくとも、最初と最後を比べてみれば、王家や王位というモノに対して片意地を張らなくなったように思います。視点が高くなった、とでも言うのでしょうか。もしかしたらそれ自体が答えなのかも知れないですね。
まあここまでつらつら書いてきましたが、ここらで区切りにしたいと思います。当初の予定をはるかに超えて長くなった外伝ですが、その分だけ書きたいことを書けたと思っています。外伝分の人物一覧は、次話分としてアップします。いつも通り簡単なものですが、よろしければそちらもどうぞ。
最後に、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
と言いつつ、さらに番外編を用意しています。なので完結設定はもう少し後になります。どうぞお楽しみに。
人物一覧は19時に投稿予定です。よろしければそちらもどうぞ。




