表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第1章 魔法研究者アリス、辺境に追いやられる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/56

06.カスレ村


本日2話目です。

 

 実はヴェルモア領に領主がいたことがなかった――

 という驚きの事実が分かってから、数時間後。


 アリスは馬車に揺られながら、遠い目をしていた。



(つまり、領主のいらない領地で、領主になったってことだよね……)



 ちなみに、この状況に、テオドールも驚いていた。

 彼は「長い間領主の座が空いている」と聞いていたが、まさか、いたことがないとは思っていなかったらしい。



(わたし、なんでここに来たんだろう……)



 あと残っている命令は、「森の中にある城に住む」ことだが、

 ものすごく怪しい気がする。



(不安だ……)



 憂鬱な気持ちで前方を見つめていると、道の先が明るくなってきた。

 木々が途切れ、視界の先に緑の広がりが見える。



(あ、畑)



 どうやらヴァルモア領の最初の村に到着したらしい。


 アリスは身を乗り出して畑をながめた。

 トマトやキュウリといった作物が植わっている。



(でも、なんか、育ちが悪い……?)



 よく見ると、葉も実も小さい気がする。


 そのまま進むと、遠くに建物が見えてきた。

 どうやら村らしい。



(どんなところなんだろう)



 ヴァルモア領に来るまで、幾つか村を見てきた。

 それと似た、のんびりとした牧歌的な村なのかな、と想像する。


 しかし、アリスの予想は裏切られた。


 彼女の目に飛び込んできたのは、見たこともないほど貧しそうな村だった。


 崩れそうな石の家に、ボロボロの服を着た村民たち。

 犬や家畜たちもどことなく痩せており、全体的に元気がない。


 村長によると、どうやら作物の育ちが悪いため、収入が上がらないらしい。



「このへんは、どこもこんな感じでしてねえ」



 村長が困ったように言う。


 アリスは不思議に思った。

 森の周辺は魔力が豊富で作物がよく育つのが定説だが、このあたりはそうでもないらしい。



(魔の森って、普通の森と違うのかな)



 そんなことを考える。






 ――そして、その日の夕暮れ。

 アリスたちは、低い石垣に囲まれた、貧しそうな村に到着した。


 夕日に照らされた古い木門から中に入ると、中年の女性と若い女性が出迎えてくれた。



「ようこそ、カスレ村へ。私は村長の妻で、こちらが娘のロッテです」

「こ、こんにちは、ロッテです」



 素朴そうな村娘が緊張しながら頭を下げる。



「こんにちは、出迎えありがとうございます」



 アリスは、ぺこりと頭を下げた。

 みんな良い人そうなことに、ホッとする。



 その後、ロッテが緊張しながら村の中を案内してくれた。



「な、なにもない村ですが!」



 カクカクと歩くロッテに付いて歩きながら、アリスは村を見回した。


 小さなボロ家に、小さな広場、小さな畑。


 客が珍しいのか、子どもたちが家の影から2人を見て、キャッキャと盛り上がっている。

 大人たちも物珍しそうに挨拶をしてくれるなど、好意的な感じだ。


 アリスたちは村の一番奥にある、異彩を放っている家の前に到着した。

 他の家に比べて、明らかに大きくて綺麗な家だ。

 どうやら役人が来たときに泊まる家らしい。



「こ、これ鍵です!」



 ロッテが、勢いよくピカピカの鍵を差し出した。

 なんか面白い人だなと思いながら、アリスが「ありがとうございます」と言って鍵を受け取る。


 家に入ると、中はかなり広かった。

 綺麗に掃除されており、ソファやテーブルなど高そうな家具が目に入る。



(……なんか無駄に豪華だね)



 他の家は貧乏そうなのになあ、と思う。


 その後、テオドールは何かを考え込むように眉間に皺を寄せ、

「荷物を仕舞ってきます」

 と倉庫へ向かった。


 アリスはソファに座り込んだ。

 明日はお城に行く感じかな、と思う。



(なんか、嫌な予感しかしないけどね……)



 はあ、とため息をつく。





 ――そして、日がとっぷりと暮れ、外が夜の闇に染まったころ。


 アリスたちは、村長宅に夕食に招かれた。


 古いテーブルに並んだのは、肉の入った豆のスープと、パンに、サラダなど。

 質素だが、味はとても良い。



「このスープ、すごく美味しいですね」

「おや、嬉しいねえ」

「光栄です!」



 アリスが正直に感想を言うと、奥さんとロッテが嬉しそうにニコニコと笑う。


 テオドールは、持ち前の気さくさで、村長と仲良くしゃべっている。


 温かい雰囲気に、アリスは気持ちが柔らかくなるのを感じた。

 こんな温かい食卓は久々だな、と思う。



 そして夕食のあと、お茶を飲みながら村長が尋ねた。



「明日からどうされるおつもりですか?」



 アリスが答えた。



「とりあえず、森の中にある城に向かいたいと思っています」



 そして、尋ねた。



「村長さんは、お城がどこにあるかご存知ですか?」

「お城、ですか……」



 村長が眉間にしわを寄せながら、考え込むような顔をした。








不穏な影が……


本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました!


もし良かったらブクマしていただけると嬉しいです! ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ