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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第3章 魔法陣解析

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06.アリス、大騒ぎに遭遇する

 

「……アリスさん、アリスさん」



 テオドールの声に、アリスが目を開けると、そこは薄暗い石部屋だった。

 ランプの光が、石壁をゆらゆらと照らしている。



(もしかして、戻ってきた……?)



 そう思いながら上を見上げると、テオドールのホッとした顔が目に入った。

 どうやらまた膝枕されているらしい。



「……また魔力切れしたかも」

「そうみたいですね」



 テオドールがアリスをそっと壁際に座らせると、水筒を差し出した。

 アリスは水を口に含むと、周囲を見回した。



「ここって、古城の地下だよね?」

「はい、戻ってこられたのだと思います」



 アリスは安堵の息を吐いた。

 魔法陣がちゃんと発動して本当に良かった、と思う。


 ある程度魔力が回復すると、アリスたちは大魔法陣のある部屋へ向かった。

 巨大なミスリル板の端に手を添えて、軽く魔力を流して状態を確かめる。



「……やっぱり、裏にあるのは、さっきの場所で写したものと同じ魔法陣だ!」

「ということは、解析が進められるということですね」

「うん!」



 彼女は笑顔でうなずいた。

 ここから一気に解析を進められる! と心が躍る。


 いつもなら今日は徹夜ぎりぎりコースになるのだが、1日2度の魔力切れを経験し、彼女は物凄く疲れていた。



「今日のところは、もう休もうかな……さすがに疲れた」

「アリスさんがそんなこと言うなんて、よほど疲れたんですね」



 テオドールが心配そうに言う。



 2人は部屋を出ると、出口に向かって通路を歩き始めた。

 アリスがため息をついた。



「魔力インク……結構使っちゃったな」

「そういえば、魔法陣にかなりの量を使ってましたね」

「いっぱい持って来てはいるけど、近いうちに何とかしないといけないかも」



 そんな会話を交わす。


 そして、階段を上がって隠し扉を出て、2人はエントランスに立った。

 慎重に隠し扉を閉じる。


 そして、外に通じる扉を開けると、外は朝靄の中庭だった。

 小鳥の声が聞こえて来る。


 爽やかな朝の風を頬に感じながら、アリスは目をパチクリさせた。



「あれ……朝?」

「思った以上に時間が経っていたみたいですね」



 そう答えながら、テオドールが不思議そうな顔をした。

 門の前を指差した。



「あれ、なんでしょうか」



 見ると、まだ夜も明けきらないというのに、やたら人が集まっていた。

 鎧を着たウィリアムとフレッドがおり、ビクトリアと深刻な顔をして何か話をしている。

 その周辺には、ガンツやエマなど、この古城の主要人物が深刻な顔をして立っている。


 アリスは首をかしげた。



「今ってドラゴンが出る時期だよね。何で出掛ける準備なんてしてるんだろう?」

「もしかして、何かあったのかもしれませんね」



 2人が近づくと、たくさんの人が心配そうに話し合っていた。

 テオドールが一番後ろの人に声をかける。



「あの、どうしたんですか」

「いや……どうやら行方不明らしくてさ……」



 そう言って振り返り、彼は大きく目を見開いた。

 思わずといった風に叫ぶ。



「ちょっ……! え!? なんで!?」



 彼の驚きにみんなが振り返り、2人を見て目を丸くした。



「えっ、いるじゃん!」

「なんで!?」



 面食らっているアリスに、エマが駆け寄ってきて抱きついた。



「もう! どこに行ってたのよ! 心配したんだから!」



 フレッドが、テオドールの背中をバンバン叩いた。



「お前なあ、連れ込むなら、もっと分かりやすい場所にしろよ」

「そういうのじゃありませんから!」



 ビクトリアがほっとしたような顔で言った。



「昨日からいないから、これから探しに行こうと思ってたのよ。あなたが教会に興味を持ってたから、そこに行ったんじゃないかって」



 アリスは思い出した。

 そういえば、そんな話をした記憶がある。


 テオドールが申し訳なさそうに頭を下げた。



「ご心配を掛けて、本当に申し訳ありませんでした」

「ご、ごめんなさい!」



 アリスも慌てて頭を下げる。


 みんなは、「やれやれ」と苦笑しながら2人を見た。

「まあ、無事だしいいんじゃないか」という話になる。


 その後、ビクトリアの

「無事に解決ということで、解散しましょう」

 という声で、皆ぞろぞろと建物の方へ戻り始めた。


 その後姿を、「すみません!」とペコペコ頭を下げながら見送る2人。



 そして、誰もいなくなった後、2人は黙って中庭を歩き始めた。

 アリスが反省しながら口を開いた。



「心配させちゃったね……」

「そうですね」



 テオドールが相槌を打つ。

 そして、少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。



「これは提案なのですが……今日のことについては、我々の間だけの秘密にしませんか」

「どうして?」



 アリスがきょとんとすると、テオドールは真剣な顔で言った。



「転移魔法なんてものがあると知られたら、さすがに大騒ぎになりそうだからです」



 アリスは苦笑した。

 確かに、大騒ぎになりそうな気がする。



「それに、アリスさんもご存じの通り、ガイゼル王国は現在軍拡を推し進めています。万が一、結界に加えて転移魔法まであると知ったら、確実に攻めてきますよ」



 アリスは顔を顰めた。

 あの国だったらやりかねない。


 魔の森の真ん中の話とはいえ、慎重になった方がいいだろう。


 彼女は大きくうなずいた。



「うん、秘密にしておこう。もう王家とか政治に関わるのはこりごりだしね」



 そんな話をしながら、2人は部屋に戻ると、服も脱がずにあっという間に眠りについた。







お読みいただきありがとうございました!



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