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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第3章 魔法陣解析

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01.隠し部屋発見、約1か月後(2/2)


本日2話目です。

 

「よう! お疲れ!」



 突然、背後から明るい男性の声が聞こえてきた。


 アリスが振り返ると、そこには髪を後ろに結んだ見目の整った青年――フレッドが笑顔で立っていた。

 両手に夕食の乗ったプレートを持っている。


 彼は「ここ座るぞ」と言ってテオドールの隣に座った。

 パンをちぎりながら、ニコニコと口を開く。



「久し振りだな、テオドール」

「そうですね、3時間振りくらいですね」



 テオドールが気さくに答える。


 2人はよく狩に一緒に行くため、かなり気安い仲だ。

 フレッドが魔剣持ちの関係で、アリスも何度か話をしたことがある。


 フレッドがアリスを見てニカッと笑った。



「アリスさん、こんにちは。今日も素敵な髪ですね。――おや、髪に何か付いていますよ」



 そう言ってアリスの髪に手を伸ばそうとする。


 テオドールが、無言でその腕を、ガシッと掴んだ。

 にっこりと笑う。



「大丈夫ですよ、フレッドさん。俺が取って差し上げるので」

「俺が見つけたんだから、俺が取るのが筋だろう?」



 フレッドが楽しそうに言う。



(? 何か付いてるのかな)



 笑顔で揉めているテオドールとフレッドをながめながら、アリスは髪に触った。

 パン屑を手にとって「いつの間に」と思いながら、お皿の端にちょいと置く。


 すると、



「ここ、いいかしら」



 夕食プレートを持った凛々しい赤毛の女性が、アリスに声を掛けてきた。


 彼女の名前は、エマ。

 細い魔剣を腰に差した姉御肌の剣士だ。


 アリスが「どうぞ」と言うと、エマが横に座った。

 向かいで楽しそうにテオドールをからかうフレッドを見て、呆れたように言う。



「フレッド、あんた、テオをからかうのやめなさいよ」

「いや、だって楽しいじゃん」

「年下をからかうとか、あんたオッサンみたいよ」



 エマの言葉に、フレッドがショックを受けたように胸を押さえた。

 それを見てテオドールが苦笑いする。


 アリスはもぐもぐとパンを食べながら感心した。

 テオドールは本当に社交性がある。

 まるで昔からここにいたみたいだ。



 ――その後、4人は会話をしながら食事を始めた。



(そうだ、設計書の件、一応聞いてみよう)



 アリスは、フレッドとエマに尋ねた。



「この古城で、本とか書類の類って見たことないですか?」



 2人が顔を見合わせた。



「なかったよな。来たばっかりの時は、この古城、本当にすっからかんだったしな」

「そうね。見たことないわね。――あ、でも」



 エマの話によると、数年前に、石の本棚の裏から書類の束を見つけたらしい。



「隠されていたっぽい感じだったわね。でも、触ったらボロボロに崩れちゃったから、内容までは分からなかったけど」



 アリスは考え込んだ。

 もしかすると、同じように地下にも何か隠されているかもしれない、と思う。




 *




 その後、アリスとテオドールは先に席を立った。

 フレッドとエマに挨拶して、食堂を出る。


 真っ暗な廊下に、テオドールの掲げるランプの光がユラユラと揺れる。

 ふと横にある窓から空を見ると、星が瞬いているのが見える。


 星を見つめながら、アリスがつぶやいた。



「地下、もう少し探してみようかな」



 一応探してはみた。

 でも、丹念に見たら、何かあるかもしれない。


 横を歩いていたテオドールが口を開いた。



「明日休みなんで、探すの手伝いましょうか」

「本当?」



 思わぬ申し出に、アリスは顔を輝かせた。

 大雑把な自分だけでは不安だが、几帳面なテオドールが一緒に探してくれるなら心強い。


 テオドールが柔らかく微笑んだ。



「じゃあ、明日1日を使って集中的に調べてみましょうか」

「うん! ありがとう!」



 アリスは期待に胸を膨らませた。

 もしも設計書が見つかれば、魔法陣の分析が一気に進展するかもしれない。




 ――ちなみに、翌日。


 2人はとんでもない冒険をする羽目になってしまうのだが、この時の彼らはそんなことを知る由もなかった。






本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました! 



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