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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第2章 謎の古城

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【一方その頃】ビクトリア、思い悩む

 

 アリスたちが地下の隠し部屋を発見した、翌日の昼過ぎ。


 ビクトリアは、自分の執務室にいた。

 目の前には、小さな男の子がべそをかきながら座っており、足には包帯を巻いている。

 横には、連れて来た母親が心配そうに立っている。


 ビクトリアが微笑んだ。



「じゃあ、治しちゃうわね」



 彼女は男の子の足に片手を当てた。

 静かに詠唱する。



治癒(キュア)



 ビクトリアの両手から白い光が発せられた。

 男の子の足を優しく包み込む。


 そして、光が消えると、ビクトリアはそっと手を離した。



「はい、もう痛くない」



 男の子が恐る恐る足を動かして、目を丸くした。



「……いたくない」

「ふふ、良かったわ」



 ちなみに、彼女が使ったのは、アリスが使う魔力とは全く違う「聖力」だ。

 魔力よりも希少性が高く、嘘を見破ったり、ちょっとした怪我を治したりすることができる。


 怪我が治った男の子は、嬉しそうに走り回り始めた。

 母親が慌てて男の子を捕まえると、ビクトリアにぺこぺこ頭を下げた。



「ありがとうございます。ビクトリア様」



 母親に捕まえられながら、男の子が満面の笑みを浮かべた。



「ありがとう! 姫様!」

「どういたしまして、気を付けてね」



 ビクトリアがニコニコしながら2人を見送る。

 そして、ドアがパタンと閉まると、彼女は困ったように笑った。



「姫様はもうやめてほしいわね」



 そうつぶやく。



 彼女の本当の名前は、ビクトリア・ガイゼン。

 ガイゼン王国の第1王女だ。


 8年前に母が病で亡くなり、繰り上がりで王妃になった現王妃に、この場所に追いやられた。



(まあ、追いやったというよりは、殺すつもりだったのでしょうけど)



 確かに、魔剣を持つオーウェン、フレッド、エマの3人と、秘密にしていたビクトリアの癒しの力がなかったら、全滅していても不思議はなかったと思う。


 必死の思いで古城に辿り着いた彼らは、とりあえずここで生活を始めた。


 最初の頃は苦難の連続で、衣食住すべてが不足していた。

 それらを何とかしようと奔走しているうちに、いつの間にか8年が経っていた。



(もう王都に戻ることも、王宮と関わることもないのでしょうね)



 そう思っていた時に現れたのが、アリスとテオドールだった。

 突然森の中からやってきた彼らは、魔法研究者と剣士だと名乗った。


 そこから彼らはしばらく滞在することになり、ビクトリアは今の王国の状況を知ることになった。


 8年振りに聞く王国は、かなり酷いことになっているようだった。


 最も胸を痛めたのは、軍拡の話だ。

 テオドールの話によると、国は戦力を拡充に力を注いでいるらしい。



(新しい王妃のせいね)



 王妃の実家は軍事貴族で、大陸統一を悲願としている。

 もともと野心の強い国王をそそのかし、他の国に攻め込むつもりなのだろう。


 そして、軍拡のために民衆への税率を毎年上げており、人々は税金に苦しんでいるらしい。



(なんてひどいことを……)



 ビクトリアがヴェルモア領に来る途中、たくさんの街や村を経由した。

 人々はビクトリアの母の死を悲しんでくれ、元気づけてくれた。



「これを持っていっておくれ」



 そう言って、ビクトリアに美味しい食べ物を分けてくれた。


 母の死を悼む暇もなく追放された彼女は、これに深く感謝した。

 傷ついた心がこれ以上ないほど癒された。


 だから、アリスとテオドールから現在の王国の話を聞いて、ビクトリアは思った。



『本当に、このままでいいのか』と。



 自分は第1王女だ。

 恩義を感じている民衆が困っている状況を、放っておいて本当にいいのだろうか。



(でも……、王都に戻ったところで、何かできる気がしないわ)



 戻ったところで自分は邪魔者。

 どんなことになるのかは目に見えている。




 ――暗い思考に捕らわれそうになって、彼女はそれを振り払うように首をブンブンと振った。

 今は考えるのはやめようと、自分に言い聞かせる。



 まずはここにいる人々が幸せに暮らせるように尽力するべきだ。



(今は、他のことを考えるのはやめましょう)




 ビクトリアはグッと背筋を伸ばすと、机の上を片付け始めた。






ここで第2章は終わりです。

お読み頂きありがとうございました!


ブクマ、評価、誤字脱字報告などありがとうございます。

楽しく投稿できているのは皆様のお陰です ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-


もしここまで少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひ本編の下にある「☆☆☆☆☆」の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!


作者が飛び上がって喜びます!


「イマイチだった」という方も、☆ひとつだけでも付けてくださると、今後の参考になりますので、ぜひご協力いただければと思います。


続けて第3章の投稿を開始します。



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