19. アリス、滞在を延長することにする
ピアスが2つになったことに驚愕した、数時間後。
アリスが目を覚ますと、すでに日が昇っていた。
ピアスの件で混乱したものの、睡魔には勝てずに眠ってしまったらしい。
「起きなきゃ……」
ボンヤリとベッドから起き上がると、枕元に置いてあるピアスが目に入った。
「1,2……やっぱり2つある」
指を指しながら数えると、彼女はため息をついた。
もともと自分が付けていた方の、少し傷が付いているピアスを手に取る。
そして、いつも通り耳に付けると、もう片方をハンカチに包んでクローゼットの奥にしまい込んだ。
「とりあえず、今は結界の修復に集中しよう」
現実逃避気味に、そんなことを考える。
その後、彼女は身づくろいをして部屋を出た。
明るい廊下を通って、隠し扉があるエントランスに行ってみると、扉は固く閉じられていた。
『老朽化により立ち入り禁止』
という紙が留められている。
(あれ? どうしたんだろう)
扉の前で首をかしげていると、後ろから「アリスさん!」と声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには手にランプを持ったテオドールと、ビクトリアが立っていた。
ビクトリアが微笑んだ。
「おはようございます、アリスさん」
「おはようございます。もしかして、この立ち入り禁止って、ビクトリアさんが?」
「はい、そうした方が良いかと思いまして」
どうやらテオドールからの知らせを受けて、すぐに封鎖したらしい。
アリスは感心した。
さすが仕事が早い。
その後、3人は扉を開けて真っ暗なエントランスの中に入った。
ランプの光を頼りに、壁を押す。
ゴゴゴゴ
低い音が響き、床の隠し扉が開いた。
突然現れたそれを見て、ビクトリアは目を見張った。
「こんなものがあるなんて、全く気が付きませんでした」
そして、地下に潜って、金色に光る魔法陣を見て、彼女は息を呑んだ。
「これが……、この古城を守る魔法陣なのですね」
「はい。そうです」
アリスがコクリとうなずく。
「この魔法陣に何か問題が起こっている、ということですね」
「そうなります」
「まさかこんなものが地下にあったなんて……」
ビクトリアが、信じられないといった風につぶやく。
その後、彼らは今後について話し合った。
魔法陣をながめながら、アリスが口を開いた。
「まずは、この魔法陣を分析してみたいと思います。仕組みが分からないと、修復もできないので」
「どのくらいかかりそうですか?」
テオドールの問いに、アリスは腕を組んで考え込んだ。
「……とりあえず、1カ月やってみて……かな」
正直なところ、魔法陣が未知過ぎて見当すらつかない。
でもまあ、とりあえず1カ月も分析すれば、何か分かるだろう、と考える。
(これは楽しみだ……!)
未知の技術の解析に心が躍る。
明らかにわくわくしている雰囲気のアリスの様子を見て、ビクトリアとテオドールが思わずといった風に吹き出す。
その後、魔法陣を食いつくように見つめるアリスの横で、ビクトリアとテオドールが話し合った。
アリスたちはしばらく滞在を延長。
テオドールはこの集落を手伝い、アリスは魔法陣の分析・修復を試みることになる。
ビクトリアが深々と頭を下げた。
「アリスさん、お任せしてしまって申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いします」
「はい、がんばります!」
「でも睡眠や食事を抜くのはナシですよ」
「……はい」
こんな会話を交わしながら、3人は地上へと戻って行った。
アリスは古代魔法陣を復活させることになった!




