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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第2章 謎の古城

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16.灯台下暗し

 

「……本当に、ここなんですか」

「うん、間違いない」



 新たな音魔法を開発してから、5時間後。

 アリスとテオドールは、ランプに照らされた石の床を見つめていた。


 その場所は、なんと2人の部屋の下――。


 アリスはため息をついた。



(灯台下暗しって、たぶんこういうことを言うんだろうな)




 *




 新しく開発した音魔法を携えて、アリスとテオドールは古城を歩き回った。

 適当な場所で魔法陣を発動させ、パンと手を叩く。


 音に乗った魔力で、この城のどこかに魔法陣を見つけようという魂胆だ。


 しかし、いくら手を叩いてもなかなか見つからない。

 あったと思っても、誰かの魔剣で、お目当ての魔法陣はどこにもない。



「おかしいなあ、絶対にあるはずなんだけど」

「裏庭の方にも行ってみましょう」



 そして、全く見当たらないまま、外が真っ暗になってしまった。

 アリスの魔力も枯渇しそうになる。


 テオドールが心配そうな顔をした。


「アリスさん、今日は無理せず、明日また探しましょう」

「そうだね……」



 2人は、食堂に向かった。

 夕食を食べて、部屋に戻る。


 そして、念のためということで、魔法陣を発動させて手をパンと叩いたところ、



「……え?」



 なんと部屋の遥か下の方から、魔法陣らしき反応があった、という次第だ。




 *




 アリスがランプを掲げる下で、テオドールが丁寧に床を調べた。

 隙間を指でなぞったり、あちこちコツコツ叩いてみたりする。



「……どうやら入口はここではなさそうですね」

「そうなの?」

「ええ。入口だったら、下が空洞なはずですから」



 ランプの光に照らされながら、アリスが考え込んだ。



「……たぶんだけど、入り口は建物内にある気がする」

「なぜですか?」

「前に本で読んだことがあるんだよね。地下に魔法陣を作るなら、入り口は丈夫で雨の入らない場所にしろって」



 なるほど、とテオドールが考え込んだ。



「……だとすると、エントランスかもしれませんね。入り口は構造的に強いですから」

「行ってみよう」



 アリスたちはランプを手に、エントランスに向かって廊下を歩き始めた。

 もう夜遅いせいもあり、館内は寝静まっている。



 エントランスに到着すると、そこは真っ暗だった。

 上へと続く白い石の階段が、ランプの光を受けてぼんやりと光っている。



「とりあえず、調べてみましょう」



 テオドールは、エントランスの隅から丁寧に調べ始めた。

 コツコツ叩いたり、上から足で踏みつけてみたりする。


 アリスは、テオドールの手元を照らすようにランプを掲げながら、注意深く周囲を見回した。

 柱がやたら多いことに加え、窓が1つもないことに違和感を覚える。



(やっぱりここに入口があるのかな)



 そして、彼女はふと壁の一部が気になった。

 なんの変哲もない普通の壁なのだが、ヤケに気になる。



(何だろう……?)



 アリスは、「ちょっと見て来る」と言うと、ランプを持って壁に近づいた。

 ランプを足元に置くと、両手でペタペタと触る。


 そして、そして、何となく押してみた――、その瞬間。



「……っ!」



 突然、右手の部分がグッと凹んだ。

 驚いて手を離した瞬間、地面が揺れ始める。



「えっ! 揺れてる!?」



 アリスは戸惑った。

 どうしよう、と思いながらテオドールを振り向いて、彼女は大きく目を見開いた。



「えっ!」



 目に飛び込んできたのは、床にぽっかり空いた穴だった。


 あまりに突然の出来事に、テオドールも目を見開いて固まっている。

 彼は、首をギギギギッと動かしてアリスを見た。



「……一体何をしたんですか?」

「ええっと、壁を押した」

「壁」



 テオドールがアリスに歩み寄って来て壁を調べた。

 凹んでいる場所を指でなぞる。



「……なるほど、ここを押すと床が開くようになっていたんですね。どうして分かったんですか?」

「なんか気になって」

「普通は分からない、魔力的な何かがあったのかもしれませんね」



 アリスは開いた入口に近づくと、中をうかがった。

 下には階段が続いており、その下は完全な闇だ。


 音に魔力を乗せる魔法陣を起動して、

 手をパンと叩くと、奥から共鳴する気配がある。



「たぶん、この奥だと思う」

「では、行きましょう」



 テオドールが、慎重に階段を降り始めた。

 周囲を見回し、壁に付いている飾りのようなものに触れる。



 ギギギ



 軋むような音と共に、扉が更に大きく開く。



「たぶん、ここが開閉をコントロールする場所ですね。中に閉じ込められることはなさそうです」



 テオドールの言葉に、アリスは感心した。

「とりあえずやってみよう」がモットーの自分とは正反対で、超慎重だ。



(良かった、テオドールと一緒で)



 1人だったら、たぶん閉じ込められていた。



 2人はそれぞれランプを持つと、階段を下り始めた。

 一番下に降りると、細長い通路が奥に続いているのが見える。



「行きましょう」



 テオドールがランプを掲げて進み始めた。


 アリスがそれに続こうとすると、上の方でガタンと扉が閉まる音がした。

 上からの光が完全になくなる。

 どうやら、自動で閉じる仕組みらしい。



(なんか、ここすごい!)



 怖さ半分、楽しさ半分で奥に進んでいくと、空気の感じが変わってきた。

 少し古いが懐かしい感じの匂いがする。



「なんか懐かしい匂いがする」

「確かに、ちょっと魔法のインクの匂いに似ていますね」



 しばらく行くと、通路に面して扉が並んでいるのが見えてきた。

 ほとんどが固く閉じられているが、1つだけ開いているものがある。



(何があるんだろう?)



 おそるおそる中をのぞき、アリスは思わず大きく目を見開いた。



「こ、古代魔法陣!」



 それは、見たこともないほど精巧な魔法陣だった。

 1メートルほどの円形で、記号や古代文字がびっしり刻まれている。


 アリスは、夢中で魔法陣をながめた。

 見たことがないほど高度な上に、とてつもなく美しい。



(すごい! これ!)



 我を忘れて魔法陣を見入っているアリスに、テオドールが声を掛けた。



「アリスさん、これが結界の魔法陣ですか?」



 アリスは我に返った。

 ジッと魔法陣を見て、首を横に振る。



「違うと思う。そういう感じじゃない」

「では、先に進みましょう」



 テオドールの言葉に、アリスは渋々うなずいた。

 解析したい気持ちでいっぱいだが、先に結界の魔法陣を見つけなければならない。


 2人は部屋を出ると、歩き始めた。


 進むにつれ、先が明るくなってきた。

 魔力の感じがどんどん強くなっていく。


 そして、2人はとうとう行き止まりに出た。

 石の頑丈そうな扉がある。



「この先っぽいね」

「では、慎重に開けましょう」



 テオドールが石の扉を掴んだ。

「ギギギ……」と重い音を立てながら、扉がゆっくりと開き、隙間から光が漏れる。


 そして、目を細めながら扉の先を見て、



「……っ!」



 アリスは思わず大きく目を見開いた。


 そこにあったのは、金色の光を放つ、見たこともないほど巨大かつ複雑な魔法陣だった。

 光がゆらめき、空気がわずかに震える。



「これだ、間違いない!」



 アリスの声が、石の部屋に響いた。





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