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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第2章 謎の古城

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14.魔法陣の捜索



 

 ビクトリアと話をした、その翌日。

 外から、カーン、カーン、と鉄を打つ音が聞こえてくる、曇天のお昼過ぎ。


 アリスはビクトリアと一緒に古城の中を歩き回っていた。

 ドアの前に到着すると、ビクトリアがノックする。



「はあい」



 明るい声と共に扉が開き、中から若い女性が顔を覗かせた。

 ビクトリアを見て目を軽く見開く。



「まあ! ビクトリア様! どうされたんですか?」



 ビクトリアが微笑んだ。



「こんにちは、実はこのお城にある魔法陣を探していて」

「魔法陣……?」

「ええ、このお城を守ってくれる魔法陣よ。どこかにあるらしいので、アリスさんに見てもらおうと思っているの。――すぐに終わるから、お部屋の中を探してみてもいいかしら?」



 アリスが軽くお辞儀をすると、女性は笑顔でうなずいた。



「もちろんですよ。どうぞお入りください」

「ありがとう。失礼するわね」



 アリスは「失礼します」と言ってビクトリアに続いて中に入った。


 入ってすぐは居間になっており、椅子やテーブルなどが置かれている。

 奥は台所で、床に1歳にも満たない小さな男の子が座り込んでいた。


 ビクトリアがニコニコしながら男の子の前にしゃがみ込んだ。



「ずいぶん大きくなったわね」

「はい、最近つかまり立ちできるようになって、目が離せなくて」



 女性が嬉しそうに言う。


 そんな会話を聞きながら、アリスは床や壁を調べ始めた。

 軽く魔力を流して、反応があるかどうかを確かめていく。


 そして、全て調べ終ると、ビクトリアに向かってうなずいてみせた。

 ビクトリアが立ち上がる。



「どうやらなかったみたいだわ。ご協力ありがとう」

「いえいえ、またいつでも来て下さい」



 女性が男の子を抱きあげると、笑顔でその手をバイバイさせる。


 ビクトリアは笑顔でその手を振り返すと、部屋を出た。

 廊下を歩きながら声を潜める。



「これが最後の部屋です」

「どうやら住居部分にはないみたいですね」



 同じく囁きながらアリスが答える。


 ちなみに、今彼女たちがやっているのは、魔法陣探しだ。

 結界がどうにかできないか調べようにも、まずは魔法陣を見ないことには話が始まらないからだ。


 重要な魔法陣は、建物の壁や床の裏に隠されていることがある。

 というわけで、こうやって住居も含むあらゆる場所の床や壁を徹底的に調べている、という次第だ。



 ちなみに、調査はビクトリアも一緒に行っている。

 アリス1人だと不審がられるかもしれないという理由もあるが、いざという時のために「結界魔法」という名前を馴染ませるのも目的らしい。



「急に結界魔法がなくなると言われるより、事前にそういうものがあると知って置いた方が受け入れられやすいと思うので」



 これを聞いて、アリスは感心した。

 ビクトリアは本当によく考えている。



 その後、2人は建物を出ると、裏庭に移動した。

 ビクトリアが、牛や鶏の気を引いている間に、アリスが小屋の中を調べる。



「ないですね」

「そうですか……。じゃあ、あと残っているのは、尖塔の1階と、裏門の瓦礫の下ですね」



 2人は裏庭を横切ると、尖塔の前に到着した。

 オーウェンが自分の体の大きさほどもある岩を運び出しているのが目に入る。


 ビクトリアが声を掛けた。



「状況はどうかしら?」

「もう少しかかりそうです」

「無理はしていない?」

「大丈夫です。心配いりません」



 そんな会話を交わす2人を置いて、アリスは塔の1階にそっと入った。

 岩だらけだった1階のフロアは半分くらい片付いており、奥にテオドールがいた。

 頭くらいの大きさの岩をひょいひょいと持ち上げている。



(相変わらず人間離れしてるなあ)



 感心しながらアリスが近づいて行くと、テオドールが振り向いた。

 パッと顔が明るくなる。



「アリスさん、お疲れ様です。どうでした?」

「うん、収穫ナシだった」

「そうですか。こちらにあるといいのですが」



 アリスは、石が片付けられた部分の床に手を当てた。

 軽く魔力を流してみる。



(……反応なし)



 彼女が魔力を流して探せる範囲は、せいぜい2メートル四方くらい。

 魔法陣がその範囲にあれば分かるが、その範囲外だと分からない。


 つまり、片付いていない場所は、まだ触っていないから、有無は分からない訳だが……



(どうも、ある気がしないんだよね)



 理由は分からないが、もっと別の場所にありそうな気がする。



(どこにあるんだろう)



 そんなことを考えながら、アリスは上へ向かう階段を登り始めた。

 ここ数日何度も登ったお陰で、ひょいひょい登れる。


 そして最上階に行くと、今日はドラゴンが見えなかった。

 降り出しそうな曇天の下、遠くに見える山の裾野までひたすら緑が広がっている。


 アリスは頬杖をついて、それをながめながら、つぶやいた。



「……この古城って、一体何なのだろう?」



 実を言うと、アリスはビクトリアが古城に詳しいかと思っていた。

 しかし、実際のところ、彼女もほとんど知らなかった。


 少しでも記録が残っていればと思うのだが、本や書類の類はないらしい。



(地道に調べるしかないってことだね)



 ため息をつきながら、そんなことを考える。



 その後、彼女は1階に降りた。

 片付いた1階の床や壁に手を当てて、魔力を流しながら丁寧に調べる。



(うーん、反応ないなあ)



 翌日には、裏門の瓦礫を片付けて探すものの、ここも反応がない。


 それではということで、地下の貯蔵庫や井戸の中、そして最後は天井まで調べるが、反応は一切なし。


 魔法陣探しは暗礁に乗り上げてしまった。







続きは夜投稿します。


誤字脱字報告ありがとうございます! 

とても助かっております!


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