表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第2章 謎の古城

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/56

閑話:楽しい魔法(2/2)


本日3話目です。

 

 アリスは、外に出た。

 広場の前に紙を置くと、魔力をゆっくりと流しながら詠唱する。



起動(カンターレ)水球:魔法陣(アクア・スフェアラ)



 その瞬間、魔法陣が黄金に輝き、広場の上に巨大な水球が現れた。

 子ども2人がポカンとそれを見上げる。


 アリスは魔法陣に更に魔力を注ぎ込んだ。

 水球がゆっくりと形を変えながら地面に落ちていく。


 そして、気が付くと、広場に水の滑り台付きの小さなプールが出来上がっていた。

 アリスはガッツポーズを決めた。



「やった! できた!」

「おお、すごいな! お前さん、マジもんの天才だったんだな!」



 ガンツが感心したように言う。


 ミルフィと男の子が我に返ったように歓声を上げた。



「すごおい!」

「これなに?」



(そうか、見たことないのか)



 アリスは上着、靴、靴下を脱いだ。

 今日は暑いからすぐ乾くだろうと思いながら、口を開く。



「これは、こんな感じに遊ぶんだよ」



 彼女は木箱の階段を上がると、水の滑り台を滑り、ぱしゃんと下のプールに降りた。

 滑る時の爽快感と、水に突っ込むときの感じが何とも気持ちがいい。


 この様子を見て、ミルフィと男の子が「わあ!」と声を上げた。

 あっという間に下着姿になると、階段を上がって滑り始める。



「すごーい! たのしい!」

「つめたくてきもちいいね!」



 2人の歓声に、もう少し大きな子どもたちがやってきた。

「遊んでいい?」と控えめに許可を取ると、楽しそうに滑り始める。



(もうちょっと拡張した方がいいかな)



 その後、アリスは魔法陣を描いては拡張を重ねた。

 プールはどんどん大きくなり、滑り台も増えていく。


 中庭に子どもたちの楽しそうな笑い声が響き渡った。


 仕事をしていた大人たちが、水の遊具を見て驚愕の表情を浮かべた。

 子どもたちが喜ぶ姿を見て、嬉しそうに微笑む。



 *



 そして、水遊びが始まって、約1時間後。


 テオドールたちが狩から戻ってきた。

 裏門を開けると、そこは洗い場になっており、巨大な石のタライにお湯が張ってある。


 彼らは装備を脱ぐと、お湯を浴び始めた。

 汚れを洗い流し、置いてある服に着替える。


 そして、洗い場を出ると、オーウェンが首をかしげた。



「いないな」

「何がですか?」



 テオドールの問いに、肩までの髪を後ろに結んだ、ややチャラい雰囲気の弓使いの青年――フレッドが答えた。



「子どもたちだよ。いつも出迎えてくれるのに今日は誰もいない」

「……何かあったのか?」



 みんな心配そうな顔をする。


 そして、急ぎ足で裏庭を通り抜けて正面に周り、彼らは思わず立ち止まった。


 視界の先にあったのは、小さな広場いっぱいに作られた水の遊び場だった。

 集落中の子どもが皆下着姿で大はしゃぎしている。



「なんだあれ?」



 ポカンとしながらつぶやくフレッドの横で、テオドールは思わず噴き出した。

 あんなことが出来るのは1人しかいない。



「たぶん、あれ、アリスさんの魔法だと思います」



フレッドが目を見開いた。



「嘘だろ? 魔法ってあんなことできんのかよ?」

「それができちゃうんですよ、あの人は」



 テオドールが、広場の端にいるアリスを見て目を細めながら言う。





 オーウェンたちが、半ばポカンとして見守る中、子どもたちの母親たちが現れた。


「ほら、もう帰りますよ」

「もう上がって拭きなさい」


 などと言って、帰るように促す。


 しかし、子どもたちは、まだまだ遊びたいようで、

「もうちょっとだけ!」を繰り返して、楽しそうに遊び続ける。


 母親たちが困った顔をしていると、そこへビクトリアがやってきた。

 子どもたちに向かって微笑む。



「みんな、お母さんを困らせてはだめよ。寒くなってきたし、風邪をひかないうちに帰りましょう」

「……はあい」



 子どもたちが渋々帰る準備を始めた。

 母親に髪の毛をゴシゴシと拭かれ、乾いた服を着せられる。


 ビクトリアがにっこり笑った。



「じゃあ、最後にアリスさんにお礼を言いましょう」

「はあい! アリスさんありがとう!」



 キラキラした目でお礼を言われ、アリスは頭を掻いた。

 なんか、ものすごく嬉しい。



 そして、子どもたちが去った後、ビクトリアがアリスに微笑んだ。



「ありがとうございます。あんなに楽しそうな子どもたちを見るのは久々です。ご存じの通り、ここは娯楽が少ないので」

「いえいえ、そんなことは」



 アリスが再び頭を掻いていると、眼鏡の男性がやってきた。

 畑の責任者らしく、ため池に水を入れることはできないかと問う。



「できますよ」



 アリスは魔法陣を起動させると、水を空中に浮かせた。

 ため池へと、ざばっと開ける。



 そして脱いだ上着を着ていると、

 テオドールが微笑みながら現れた。



「アリスさん、ただいま戻りました」

「あ、テオドール、お帰り」

「驚きましたよ。あんなことが出来るんですね」

「うん、わたしも初めてやった」



 そして、テオドールから「あれは普通の水魔法ですか?」と問われ、アリスはにんまりと笑った。



「あれはね、楽しい魔法だよ」

「楽しい魔法……?」

「うん」



 アリスがにんまり笑う。


 そしてこの日以来、彼女は子どもたちにせがまれて、たびたび「楽しい魔法」を披露するようになった。






本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました!


誤字脱字報告ありがとうございます。

助かっております!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ