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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第2章 謎の古城

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02.ビクトリアとオーウェン

 

「どうぞ」



 テオドールが答えると、扉が開いて、2人の人物が入ってきた。


 1人は、白金色プラチナブロンドの長い髪が美しい穏やかそうな女性だ。

 服装は動きやすそうで質素なものだが、どことなく品がある。


 もう1人は、黒髪の眼光鋭い大柄な男性だ。

 先に入ってきたが、すぐに女性の少し後ろに控えるように立つ。


 女性は2人に歩み寄ると、ニコニコしながら口を開いた。



「はじめまして。ビクトリアです。こちらはオーウェン」



 女性の少し後ろで、黒髪の男性が警戒するように軽く頭を下げる。



 2人の様子を見て、アリスは思った。

 この人たちは、ただ者じゃない気がする。



(どういう人たちなんだろう……?)



 テオドールが警戒するように、アリスの前に出た。



「はじめまして、テオドールと申します」



 礼儀正しく挨拶をする。


 緊張感が漂う中、ビクトリアがアリスに目を向けた。

 微笑ながら手を差し出す。



「はじめまして、ビクトリアです」

「はじめまして、アリスです」



 アリスは差し出された手を握った。

 ほっそりとした美しい手だ。



(この人の手、すべすべしてる)



 ビクトリアの方も、アリスのペンだこのある白い手を見ながら、何か考えるような顔をする。


 その後、ビクトリアは、2人に椅子に座るようにと勧めた。

 自身はテーブルを挟んだその向かい座り、オーウェンは彼女を守るようにその後ろに立つ。


 彼女は場を和ませるように微笑むと、口を開いた。



「バタバタして申し訳ありません。なにぶん、こんな辺鄙な場所ですので、来客に慣れていなくて」



 そして、彼女は笑みを深めた。



「……それで、なぜお2人は、こんな森の中に? どうやっていらしたのですか?」



 その場が緊張に包まれた。

 テオドールとオーウェンが警戒を強める。


 そんな空気の中、アリスは首をかしげた。

 なんでそんな分かりきったことを聞くんだろうと思いながら、口を開く。



「はい、歩いてきました」

「……歩いて」

「はい、徒歩です。馬車や馬は物理的に使えませんので」



 アリスの正直過ぎる回答に、ビクトリアが笑うのを堪えるような顔で目を伏せた。

 テオドールが苦笑いする。



「アリスさん、たぶんそういうことじゃないと思います」

「そういうこと?」



 2人のやりとりに、オーウェンが何とも言えない表情を浮かべる。


 その後、どこか気が抜けた雰囲気の中、テオドールが、ここに来るまでのことを説明し始めた。

 誰と誰が、いつどこから森に入って、どのへんをどうやって通ってきたか等を、かいつまんで話す。


 アリスは、説明をテオドールに任せると、顔を軽く横に向けて窓の外を見た。


 外は中庭で、緑色の畑では、何人かが作業をしている。

 その向こうには石でできた小屋があり、風に乗って、カンカンと金属を叩くような音が聞こえてくる。



(あれ、鍛冶場かな)



 小屋の隣に目をやると、洗濯ものらしきものを取り込んでいる子どもたちの姿が目に入った。

 大人が何かを作っている姿も見える。



(ここって、村みたいな感じなのかな)



 アリスが、やや身を乗り出して熱心に外を観察していると。



「……アリスさん」



 横からテオドールの声がした。

 我に返って振り返ると、全員がアリスを見ていた。

 ビクトリアがどこか笑い出しそうな顔をしている。



「……はい、何でしょう」



 つい夢中になり過ぎてしまった、と反省しながら座り直すと、ビクトリアが穏やかに尋ねた。



「今テオドールさんにお聞きしていたのですが、アリスさんも、ここに古城があることをご存じなかったのですか?」

「はい」



 アリスが素直にうなずいた。



「森にお城があることは聞いていましたが、まさかこんな奥にあるとは思いませんでした」

「住人がいることは?」

「はい、知りませんでした」



 そう答えながら、アリスはビクトリアの瞳に違和感を覚えた。

 瞬間的に魔力が宿ったような気配がする。



(なんだろう。身体強化の一種かな)



 そんなことを考えていると、ビクトリアが、つとアリスから目を逸らした。

 後ろを振り向くと、オーウェンに向かってうなずいてみせる。


 オーウェンの表情が、少し和らぐ。


 ビクトリアは柔らかく微笑むと、尋ねた。



「お2人は、これからどちらに行かれるのですか?」

「森を抜けてノルティア自由主義国家に向かおうと思っています」



 テオドールが言うと、

 ビクトリアが、そうですか。とうなずいた。



「それでしたら、今の時期は行くのは止めておいた方がいいと思います」

「……それはなぜですか?」



 訝しげな顔のテオドールに、彼女が涼しい顔で言った。



「満月が近いからです。魔の森の魔獣は、月が満ちるほど強くなります。それと――」



 彼女は言葉を切ると、にっこり笑った。



「満月の前後3日ほど、山からドラゴンが降りてくるのです。この時期に森を歩くのは自殺行為です」



(え、ドラゴン……?)



 突然出た最強の魔法生物の名前に、アリスは目を大きく見開いた。






続きは明日夜投稿します。


誤字脱字報告ありがとうございます!

助かっております (*'▽')


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