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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第1章 魔法研究者アリス、辺境に追いやられる

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20/56

16.謎の建造物(2/2)


本日2話目です。

 

 何気なく井戸の下の方に目をやって、アリスは目を見開いた。



「あれって、もしかして魔法陣……?」



 井戸の奥の方の壁に、キラリと光る金属が付いていた。

 内容までは分からないが、彫られているのは明らかに魔法陣だ。


 アリスは、思案に暮れた。

 井戸に魔法陣なんて聞いたことがない。



(なんか凄いもの見つけた!)



 新しい発見の予感に、彼女は夢中になった。

 もうちょっとちゃんと見たいと、思い切り身を乗り出す。


 しかし――



「わっ!」



 思い切りバランスを崩して、井戸の中に転がり落ちそうになる。



「……何やってるんですか」



 その瞬間、アリスはガシッと首根っこを掴まれた。

 上から呆れたような声が降ってくる。



「危ないですから、もう行きましょう」

「も、もう少しだけ」



 首根っこを掴まれながら、アリスがジタバタした。

 もっと見たいと、身を乗り出して魔法陣を凝視する。


 テオドールがため息をついた。



「アリスさん……、ここがどこだか忘れていませんか?」



 彼女はハッと我に返った。

 森の奥から唸り声がすることに気が付く。


 テオドールが警戒するように言った。



「何か来ています。移動しましょう」

「……わかった」



 アリスは、渋々井戸から顔を上げた。

 調べたい気持ちでいっぱいだが、さすがにヤバいと思う。




 ――そして、その日の夕方。


 2人が歩く先、森の向こうが明るくなってきた。

 どうやら開けた場所があるらしい。



「もしかして、お城かな」

「方向と距離的に、たぶんそうだと思います」



 途中で大きな角の大牛の魔獣に襲われるが、何とかそれを倒して先に進む。


 そして、開けた場所に出て、アリスは大きく目を見開いた。


 そこにあったのは、やや崩れかかった城壁に囲まれた巨大な建物だった。

 城壁の向こうには尖塔が見える。

 見たことがない建築様式で、ものすごく古そうだ。


 アリスは、思わず叫んだ。



「これ、城っていうか、遺跡じゃん!」



 テオドールが苦笑いした。



「確かに、どう見ても遺跡ですね」



 アリスがため息をついた。

 ここに住めとか、正気の沙汰とは思えない。


 もうどうでもいいことだが、本当に酷い目にあったと思う。





 ――と、その時。



 グルグルグル……



 後ろの森の奥から魔獣の唸り声らしきものが聞こえてきた。

 テオドールが剣を抜く。



「とりあえず、行きましょうか」

「そうだね」



 2人は、城壁に沿って歩き出した。


 城壁の周囲はちょっとした谷のように凹んでいた。

 底には苔むしたブロック状の石が転がっており、そこから低木や草が生えている。



「これって、なんだろう?」

「たぶん堀だと思います」

「掘って、お城の周辺にある池のこと?」

「はい。見張り塔らしきものもありますし、ここは城塞だったのかもしれませんね」




 その後、2人は足早に城の正面に周った。

 凹みの上に今にも崩れそうな橋が見えてくる。



「あれ入口っぽいね」

「行きましょう」



 そして、足早に橋の前に到着して、



「…………え?」



 アリスはピタリと足を止めた。

 どういう訳か、城の中から魔力を感じる。


 テオドールが剣で警戒しながらアリスを守るように前に立った。

 周囲を見回しながら、ゆっくり口を開く。



「人間の気配がします」

「わたしは魔力を感じた。……でもさ、ここって魔の森の真ん中だよね?」



 2人は思わず顔を見合わせた。

 こんな場所に人が住んでいるとは思えない。



「幽霊だったりして」

「……やめてください。俺、そういうの苦手なんです」



 アリスの言葉に、テオドールが振り返って、真剣な顔で言う。

 そして、アリスが「ごめん」と謝っていた――、そのとき。



「……なにしてるの?」



 突然、前方から小さな声が聞こえてきた。

 テオドールが飛び上がって剣を構えた。

 どういう訳か、ピシリと固まる。



(え、まさか本当に幽霊?)



 アリスが彼の背中からのぞくと、橋の向こう側に、ウサギのぬいぐるみを抱えた小さな女の子が立っていた。

 不思議そうな顔で2人を見ている。



「……え、子ども……?」



 アリスが目を見開いて固まった。

 ありえない事態に、思考が完全に停止する。



 生暖かい風が吹き、森の木々がざわざわと揺れる音がした。






ここで第1章は終わりです。

お読み頂きありがとうございました!


もしこのお話を少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひ本編の下にある「☆☆☆☆☆」の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!


作者が飛び上がって喜びます!


「イマイチだった」という方も、☆ひとつだけでも付けてくださると、今後の参考になりますので、ぜひご協力いただければと思います。


よかったら感想なども、ぜひ!(*'▽')


それでは、明日夜より第2章の投稿を開始します。




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