16.謎の建造物(2/2)
本日2話目です。
何気なく井戸の下の方に目をやって、アリスは目を見開いた。
「あれって、もしかして魔法陣……?」
井戸の奥の方の壁に、キラリと光る金属が付いていた。
内容までは分からないが、彫られているのは明らかに魔法陣だ。
アリスは、思案に暮れた。
井戸に魔法陣なんて聞いたことがない。
(なんか凄いもの見つけた!)
新しい発見の予感に、彼女は夢中になった。
もうちょっとちゃんと見たいと、思い切り身を乗り出す。
しかし――
「わっ!」
思い切りバランスを崩して、井戸の中に転がり落ちそうになる。
「……何やってるんですか」
その瞬間、アリスはガシッと首根っこを掴まれた。
上から呆れたような声が降ってくる。
「危ないですから、もう行きましょう」
「も、もう少しだけ」
首根っこを掴まれながら、アリスがジタバタした。
もっと見たいと、身を乗り出して魔法陣を凝視する。
テオドールがため息をついた。
「アリスさん……、ここがどこだか忘れていませんか?」
彼女はハッと我に返った。
森の奥から唸り声がすることに気が付く。
テオドールが警戒するように言った。
「何か来ています。移動しましょう」
「……わかった」
アリスは、渋々井戸から顔を上げた。
調べたい気持ちでいっぱいだが、さすがにヤバいと思う。
――そして、その日の夕方。
2人が歩く先、森の向こうが明るくなってきた。
どうやら開けた場所があるらしい。
「もしかして、お城かな」
「方向と距離的に、たぶんそうだと思います」
途中で大きな角の大牛の魔獣に襲われるが、何とかそれを倒して先に進む。
そして、開けた場所に出て、アリスは大きく目を見開いた。
そこにあったのは、やや崩れかかった城壁に囲まれた巨大な建物だった。
城壁の向こうには尖塔が見える。
見たことがない建築様式で、ものすごく古そうだ。
アリスは、思わず叫んだ。
「これ、城っていうか、遺跡じゃん!」
テオドールが苦笑いした。
「確かに、どう見ても遺跡ですね」
アリスがため息をついた。
ここに住めとか、正気の沙汰とは思えない。
もうどうでもいいことだが、本当に酷い目にあったと思う。
――と、その時。
グルグルグル……
後ろの森の奥から魔獣の唸り声らしきものが聞こえてきた。
テオドールが剣を抜く。
「とりあえず、行きましょうか」
「そうだね」
2人は、城壁に沿って歩き出した。
城壁の周囲はちょっとした谷のように凹んでいた。
底には苔むしたブロック状の石が転がっており、そこから低木や草が生えている。
「これって、なんだろう?」
「たぶん堀だと思います」
「掘って、お城の周辺にある池のこと?」
「はい。見張り塔らしきものもありますし、ここは城塞だったのかもしれませんね」
その後、2人は足早に城の正面に周った。
凹みの上に今にも崩れそうな橋が見えてくる。
「あれ入口っぽいね」
「行きましょう」
そして、足早に橋の前に到着して、
「…………え?」
アリスはピタリと足を止めた。
どういう訳か、城の中から魔力を感じる。
テオドールが剣で警戒しながらアリスを守るように前に立った。
周囲を見回しながら、ゆっくり口を開く。
「人間の気配がします」
「わたしは魔力を感じた。……でもさ、ここって魔の森の真ん中だよね?」
2人は思わず顔を見合わせた。
こんな場所に人が住んでいるとは思えない。
「幽霊だったりして」
「……やめてください。俺、そういうの苦手なんです」
アリスの言葉に、テオドールが振り返って、真剣な顔で言う。
そして、アリスが「ごめん」と謝っていた――、そのとき。
「……なにしてるの?」
突然、前方から小さな声が聞こえてきた。
テオドールが飛び上がって剣を構えた。
どういう訳か、ピシリと固まる。
(え、まさか本当に幽霊?)
アリスが彼の背中からのぞくと、橋の向こう側に、ウサギのぬいぐるみを抱えた小さな女の子が立っていた。
不思議そうな顔で2人を見ている。
「……え、子ども……?」
アリスが目を見開いて固まった。
ありえない事態に、思考が完全に停止する。
生暖かい風が吹き、森の木々がざわざわと揺れる音がした。
ここで第1章は終わりです。
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