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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第1部完  作者: 優木凛々
第1章 魔法研究者アリス、辺境に追いやられる

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11.謎の魔法陣


本日2話目です

 

 パチパチと燃える暖炉の前で、アリスが尋ねた。



「ねえ、テオドール。ずっと様子が変だけど、もしかして、何かあった?」

「……いえ、なにも」



 テオドールが、軽く目をそらしながら答える。


 アリスはテオドールをジト目で見た。

 こんなの絶対なにかあるに決まっている。


 何とか聞き出そうとするが、彼は頑として「何もありません」と答えない。

 仕舞には、誤魔化すようにごろりと横になってしまった。



「すみませんが、疲れたので寝ます。アリスさんも早く休んでください」



 そう言ってアリスに背中を向ける。


 その広い背中を見つめながら、アリスは、「むー」と思った。

 絶対に何か隠している! と思う。

 でも、今日1日がんばったテオドールを無理矢理起こしてまで追求するのは、どうかという気もする。



(……また明日聞こう)



 アリスは諦めると、暖炉を木の枝でつつき始めた。

 背後から、静かな寝息が聞こえてくる。



(本当に疲れていたんだね)



 彼女は立ち上がると、壁に掛かっている彼の上着を取った。

 乾いていることを確認し、寝ている上に掛けてあげようと、そっと近づく。


 そして――



「……あれ?」



 思わず固まった。

 どういう訳か、テオドールの体から魔法の気配がする。



(どういうこと……?)



 彼女は、注意深くテオドールの体に手をかざした。

 魔法の気配が背中から漂ってきていることを確認する。



「……ちょっとごめんね」



 アリスは、ゆっくりとシャツをめくった。

 よほど疲れているのか、テオドールは軽く身じろぎをするくらいで目を覚まさない。


 固そうな背中が露になると、アリスはランプを近づけた。

 思わず声を上げそうになる。



(これ、魔法陣じゃん!)



 そこには黒々とした魔法陣が彫られていた。

 かなり複雑なもので、細かく文字が刻み込まれている。



(なんだろうこれ。見たことない)



 アリスの研究者魂に火がついた。

 紙と鉛筆を持ってくると、メモをとりながら解析を進める。


 ランプの光がユラユラと揺れ、外から激しい雨の音が響いてくる。


 そして、解析すること30分。

 アリスは、眉間にしわを寄せて紙を見つめた。



「これって、結構ヤバいやつだよね……」



 場所の探知や、何かをトリガーにして発動する自己攻撃魔法。

 強制的に強化魔法を発動させて、自我を喪失させる仕組みまで入っている。



(これ、下手したら廃人になるじゃん)



 しかも、これがあることにより、テオドールは常に魔力を奪われ続けている。

 もし魔力切れを起こしたら、命を削られることになってしまう。



(なんでこんなものが背中に……)



 彼女は思案した。

 そういえば、前にこんな感じの魔法陣を調べたことがある気がする……と記憶を探る。


 そして、



(思い出した!)



 彼女は、ポン、と手を打った。


 数年前、下級兵士の間で流行った『強くなる魔法陣の入れ墨』の調査を頼まれたことがあった。

 調べたところ、それらの魔法陣のほとんどはデタラメ、――つまり詐欺だった。



(テオドールも下級兵士だった頃があっただろうから、その時に入れたのかもしれない)



 それで、たまたまどっかから持って来て入れた魔法陣がコレだった、というオチだろう。



(そうだよね。こんな昔の奴隷契約みたいな魔法陣、どう考えたっておかしいし)



 きっと消すタイミングがなくて、放置していたのだろう。



(とりあえず、こんな危ない物は消してしまおう)



 彼女は背中をそっと指で触れた。

 ゆっくりと魔力を流し始める。

 皮膚の中に入っている魔法のインクが、ゆっくりと消えていく。


 そして、魔法陣が消えると、彼女は、ほう、と息をついた。

 まだ少し残っているが、これくらいなら自然と消えるだろう。



(これで安心だね)



 彼女は満足げに綺麗になった背中をながめた。

 シャツを元に戻して上着を掛けると、自分も寝ようと、壁に寄りかかってコクリコクリとし始める。


 雨音が響く静かな小屋に、パチパチと薪の燃える音がする。





 ――そして、翌日。


 雨上がりの空気が爽やかな早朝。



「〇×▼※□$!!!!」



 突然、小屋の外からテオドールの声にならない叫び声が聞こえて来た。



「な、なに!?」



 アリスがガバッと起き上がると、上にテオドールの上着が掛かっていた。

 どうやら掛けてくれていたらしい。


 上着を横において、彼女が外に出ると、彼が驚愕の表情で頭を抱えていた。

 どういう訳か、上半身が裸で、手には小さな鏡を持っている。



「どうしたの?」



 眠い目をこすりながら尋ねると、テオドールが真っ青な顔で口を開いた。



「ないんです!」

「え? なにがないの?」

「魔法陣です!」

「魔法陣?」



 アリスが目を凝らすと、テオドールの背中にあった魔法陣が見事に消え去っていた。



(うん、綺麗になったね)



 彼女はうなずくと、明るく言った。



「良かった。あんなもの、百害あって一利なしだし」

「……っ! やっぱりあんたか!」



 半裸でそう突っ込みながら、テオドールが絶望の色を浮かべた。






魔法陣の正体は次です。

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