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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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72/112

72話 まだまだ

 -----(清見視点)-----


 翌朝、大島氏とレスキュー一行は機体のギャレーから食料を運び出して用意をし、昨日発見した病院へと向かう。

 食料の配達及び、合流作戦を伝えるためだ。


 大島氏はいつも大変だな、ご苦労様です。と他人事のように見送ろうとしていたが、何故か俺も参加メンバーに入れられていた。


 ちょっと!何でだよ!

 俺は力仕事は苦手だからそんなに荷物も運べない。体力もないから移動にも時間はかかるぞ?



「向こうのメンバーにもポヨン氏を引き合わせておきたい。それと何でも食べるスライムの特性を利用して、あちらの敷地内に邪魔な木や石があったらポヨン氏に溶解してほしいのです」



 おおぉう。なるほど。役立たずの俺と違い、ポヨン君はさっそく活躍の場があるんだ。



 出発した。レスキューチームと大島氏と俺及びポヨン君だ。レスキューチームが7人いたので、大島氏のボックスには入れないのでは?


 俺もいれると9人だぞ?そりゃあ大島氏を中心に密着した縦横3列ならギリギリ9人いけるが…………。いけないだろ?キツすぎる。マッチョが7人もいるんだぞ?


 どうするんだと思っていたら、安全地帯は大島氏のボックス範囲には入らずに歩いた。



「かなり遠回りになるんですが、この地点までは大島氏の防御無しで進んで大丈夫と思われます。ここからここ、ここで防御範囲に密着して移動します」



 なるほど。どうしてこんなに遠回りするんだろうと思ったら、危険地帯が短い場所があった。そこを通るためにクネクネと移動していたのか。



「この短い距離なら9人密着での移動もありですし、半分に別れてそこを渡るという方法もあります。大島氏にはご面倒おかけしますが」



 その危険地帯を川としたら、大島氏が渡し舟役になる事も出来るのか。大島氏は大変だけどね。

 あ。疲れた顔してる。ドンマイ。チョコ食う?疲れた時は甘い物だよ?いらない? じゃぁポヨン君食べる? 可愛いな。食べとる。



 危険地帯を9人密着で移動した。危険なのは徒歩で5分くらいかな。

 安全地帯に入り、隊長が周りを確認、そこで一旦休憩だ。



「自分らの避難所からその産院に移動するにしても、かなり距離がありますね。大島氏にはまたご負担を強いる事になり申し訳ないですね」


「そうですね。通りやすい場所、なるべく安全な場所を考えるとどうしても距離ができてしまいます」


「いや。いいよー」



 大島氏は諦めたようにため息を吐き出した。完全防御のスキルは羨ましかったが、こうも頻繁に『人のため』に使われる事になるとはな。俺は空間スキルで良かった。


 けど同志である大島氏が不憫だな。何か出来る事ないかなぁ。俺はいつもついてまわるだけなんだけど、ちょっと思った事があり地図を覗いた。



「…………保育園と機体ってどっちが大きいかな」


「ん? そりゃ機体じゃないか? ハーフサイズとは言え元はジャンボサイズだぞ?」


「そっかそっか……」



 人が森を歩く時、どうするか。


 それはもちろん木を避けて進む。よく森で迷う話、あれは直進しているようで、木を避けた時に少しずつ方向がズレてしまうからだ。鬱蒼と木や植物が茂った中だとどうしても歩きやすい足場を探して進んでしまうからな。


 もちろん俺たちにはレスキューが作成してくれた地図があるから大きな迷子にはならない。

 しかし目の前の生えまくっている木々と簡易な地図を比べると、地図のように単純に移動するのは無理だ。


 ましてやその地図上の道さえ曲がりくねっている。そりゃそうだ。ドローンや衛生写真を使って作成した地図ではないからな。

 でも、安全地帯と危険地帯がわかるのは有難い。


 そして森の中、道がなければ作ればいいのさ。



「どうした、清みん。なんか気になる事でもあるんか?」



 まず大島氏に話を聞いてもらおうと思ったが既に皆に注目されてしまっていた。

 嫌だなぁ、困った。絶対の安全策ではないし何かあった時にも俺には責任を取れない。言うのやめよう。



「何でもない」


「何でもいいから言うだけで言ってみな。大丈夫。みんなは清みんの独り言と思ってるから」


「ええ、大丈夫です。どうぞ独り言をどんどんおっしゃってください」



 独り言をどんどん言えって、そんな……。皆はあからさまに視線を逸らしたり荷物の整理をしてくれてる。言うまで耳を傾けるのをやめてくれそうにない。


 よし、ささっと言ってしまおう。



「あのさ、危険地帯に入るここまでをさ、避難所から真っ直ぐに機体を引っ張ってこれないかな」


「ん? 真っ直ぐとは物理的に真っ直ぐか?」


「そう。クネクネ曲がらず。だって機体や保育園の引っ越しの時に周りの木々を薙ぎ倒してたじゃん? あの跡地っていうか引き摺り跡が道になってた……あの、その。ごめん、何でもない。こんくらい誰でも考えつくよね。素人が口出してごめんなさい」



 皆の視線に耐えられなくなった。俺のばかばかばか。俺はポヨン君の運び屋として参加しているんだから黙ってついていけばいいんだ。



「それだ! 何でいままで思いつかなかったんだ。人が通れる場所、建物が通れる場所をわざわざ探していた。まだ地球の常識から抜けられていませんでした。清見さん! ありがとうございます」


「そうですね、1番大きい箱物で移動して道を造る。その後の引っ越しが楽になる。しかも曲がりくねる意味もない」


「清みん、お手柄。俺ら常識すぎてたわ。俺もオタ界隈の住人としてはまだまだだな。反省する」



 え、あの?え、何?誉められてる?貶されてる?何?



「確かに。ふむ、地図上だと避難所からこの地点へ直進しましょう。あの危険地帯だけは大島氏のお力をお借りする事になります」


「って事は俺はそこで渡し役として待機か。全行程を毎日往復に比べたら断然楽になるな。ありがとな、清みん」


「あちらへの引越しは大きな箱物からにしましょう」


「ですが清見さんの所の仏間は最後に残した方が良いと思います。箱物と人と引っ越しの順番を考えるにしても、一応最後まで寝泊まり可能な空間は残っていたほうが安心でしょう」



 引っ越しの案がどんどんと進んでいくが、とりあえずは産院へ向かいましょうと誰かが言い、皆腰をあげた。



 白樺並木を抜けて産院へ到着した。窓からこっちをずっと眺めていたのか看護師数人が声を上げながら中へと消えていった。

 看護師長さんを呼びにいったみたいだ。


 その後俺は大人しく隊長や大島氏に従った。ポヨン君を紹介したあとレスキューチームは引越し作戦の話になるので、俺と大島氏は病棟の各個室を訪問した。ポヨン君の顔見せ(と、ポヨン君に襲ったらダメだよと言い聞かせ)だ。


 特に怖がったり嫌がったりするママさんは居なかった。流石、母は強しだろうか?

 それと、俺のポケットに菓子を入れるのやめて。俺は27歳の大人なんだから。ニートだけど。



 隊長が作戦を伝え終え、チームの人が食料を渡し、今日はまた仏間の避難所へ戻る事になる。

 産院へはレスキューの中からふたり残った。と言うのも病院から車椅子を2台借りたからだ。それを背負うふたりの後ろには人が立てなくなる。


 大島氏が危険地帯を往復しても良いのだが、今回は真っ直ぐに戻る事になり、そのふたりは明日、危険地帯を挟んだ産院側で待機するそうだ。


 正直俺も疲れてたしここに泊まりたいなぁと思ったが、ポケットいっぱいの菓子を貰った手前、残りたいとは言いづらかった。

 まぁ可愛い新生児や乳児とたくさん会えたからいいか。



「清みんは保育士とかに向いてるんじゃないか?」


「うん。俺も最近そう思う。大学で内定もらう周りの波にのまれて……俺、流されやすいんだ。で、なんとか就職したけど、扱ってる商品が純粋な子供用でもそれを売ってる大人が汚れてたのに、入るまで気が付かなかった」


「そか。まぁ、どこもそれなりに汚れた大人でいっぱいよ。うちもそれなりにブラックだったしな」


「そうなんだ。それでも辞めないで勤めてるって凄いな。それとレスキューの人達。みんな凄いなぁ。俺、ほんとダメダメだ」


「清みんの良さは清みんがわかってなくても周りがちゃんとわかってるから大丈夫だ」


「何それ……」



 帰りは意外とあっという間だった。行きより帰りが近く感じるアレだな。(どれだ?)


 その日俺は疲れて直ぐに休んでしまった。もちろん仏間の押入れで。

 話は皆に展開されたようで翌朝目が覚めた時には、移動準備が着々と進んでいた。

 俺は自宅(仏間)待機でいいそうだ。



 まずは飛行機の胴体が出発した。押入れの中まで地響きが聞こえてきた。あれを引っ張って動かすママさんって凄いなぁ。

 そう言えば俺もこの仏間を持って産院まで引っ張っていくのか。


 うちの引越しの日程はいつなんだろう?急に言われても困るな。前もって仏壇の仏具がすっ飛んで行かないように、一旦は何処かに収めないと。親父達のお位牌もタオルに包んでここ(押入れ)に避難させよう。


 気になったので押入れから出た。仏間の外壁に引っ越しスケジュールが張り出してあった。


【箱物の移動スケジュール】

①機体

②保育園

③キッチン

④トイレ、バス

⑤仏間



 なるほど、ふむ。大きいのから森薙ぎ倒して進んで、あ、トイレとお風呂は一緒に行くんだ。

 そんでうちがしんがりね。


 皆忙しそうに動いている。移動の際に荷物が転げて壊れないように引越し準備だそうだ。

 俺も仏壇を……と思ったら、既に兄貴がやってくれていた。いつもは開いている観音扉も今日はしっかり閉まって養生テープでしっかりととめられている。



「念の為、テープでとめたんだが、ご先祖様に怒られるかなぁ。いちおう手は合わせておいた」



 兄貴から両親の位牌を渡された。俺はそれを押入れにしまいに行く。



「あ、兄貴。襖も養生テープでとめた方がいいかな」


「そうだな。念の為とめておくか」



 テープを取りに外へ出ると、再び大きな音が響き渡る。あれ?機体が戻ってきたのか?何かあったんだろうか?



「おっ、保育園が出発したな」



 兄貴も仏間から出てきた。

 ん?1日ひとつの移動じゃないの?



「保育園も今日移動なの?」


「おう、そうだぞ。あそこに載ってる順番で移動する」


「えっ、え、じゃあ、うちも今日引っ越し?」


「そうなるな。箱物と箱物の間に人も移動するからうちは午後になるかもなぁ」



 ええー!1日で全部移動なんだ。確かにあの危険地帯は5分程の距離だ。大島氏があそこにスタンバイしていて、来る人来る人を渡していけば…………うん、1日で行けない事はないか。

 しかし、凄いな。民族大移動にならないか? そ、そこまででもないか。



 保育園の移動後に、高齢者と足の悪い旦那さん達のスタートらしい。

 当初はレスキューが背負った車椅子に乗ってもらう予定だったらしいが、機体と保育園の通った跡が意外と綺麗にならされていたので、車椅子を押して移動するそうだ。

 無理そうな場所は担ぐらしい。とは言え、大木が無くなっても草や土なので進むのに時間はかかるらしい。


 一応、1時間後にはキッチンがスタートした。

 現在の仏間は保育園児やママさん達の子供、保育士さんらがいる。


 避難所に居た数名の大人達と高校生や小学生が出発した。少ししてトイレと風呂が出発だ。

 それと入れ替わりに戻ってきたレスキューチームと一緒に病院から看護師チームの応援が来た。


 レスキュー、看護師、保育士により、子供達を背負っての移動となる。

 流石、大人を乗せた車椅子を背負うレスキューさんだ。子供なんて軽々だ。後ろふたりに前にひとり。まるで子沢山パパのようだ。かっこいいな。



 残ったのは仏間と俺と兄貴。裕理君はさっき一緒に連れていってもらった。


 仏間の周りを見渡した。サッパリしちゃったな。

 短い期間だったけど濃い時間を過ごしたこの空間。まるで夢だったみたいだ。



 「時間だ。出発しようか」



 兄貴に声をかけられて頷く。仏間の壁の端っこを掴む。

 そして地面をゴリゴリと言わせなから、皆が進んで方へ、森の中へと足を踏み出した。


 俺たちの明日へ向かって。




 完………。





「清見。浸ってないでさっさと行くぞ」


「ごめんごめん。ちょっと小説っぽい気持ちになってた」



 いやぁ、見事に木が倒されてるな。根っこは残ってるとこもある。よくこんなとこを車椅子で進めたな。タイヤが土に埋もれないか?



「いやぁ、これは車椅子は無理だな。背負ったな」



 兄貴も同じ事を思ってたか。


 異世界転移なんてアニメとか小説みたいなことが起きて、しかもスキルまで貰ったのに、現実は中々にハードだよな。

 レスキューチームのような体力自慢がいなければ、俺たちもここまで頑張れなかった。


 異世界転移と言うよりも、原始時代にタイムワープって感じかぁ。


 ふえぇぇ、はぁふぅ。


 腕を伸ばしたまま物を掴んで運ぶってキツイな。腕も痛いが肩も痛い。これ皆どうしたんだろう。機体ママさん、園長さん、キチママさん、トイレママさん、風呂ママさん。

 皆、へこたれずに産院まで運べたのかな。俺は既にへこたれてる。


「大丈夫か、清見? 少し休むか?」


「う。うん、休む。ごめん」



 兄貴とそれから森で落ち合ったレスキュー(元消防士の山根さん)が俺の護衛をしてくれている。

 俺は仏間を地面に置いて、腕をぶるんぶるんと回した。それから二の腕の肉を揉んだ。(筋肉と言えないとこが情けないな)



「代わりに持って差し上げられないのが残念です」


「ありがとう。大丈夫。自分のスキルだから。でもこれ、一旦しまったりできないのかなぁ。空間スキルって言ったら小説だと無限収納とかで家ごと収納とかありがちなのにぃ」


「レベルがあがったら出来るようになるのかもな」


「えぇぇ………。経験値がかなりえぐいくらいゼロ付いてるんだよ?レベル上げさせたくないのが見え見えだよね」


「この世界には無い文明持ち込ませたく無いのかもしれませんね」



 うわ、山根さん、奥が深い。俺が浅すぎか。



「さて、よいしょっとぉ」



 頑張った。危険地帯まで途中3回は休み、ようやく大島氏の待つ危険地帯へ到着した。



「清みん、ごくろうさん」



 大島氏もご苦労様でした。

 その危険地帯だけ4人は密着して進み、それからはまた離れて、いや、左肩を山根さんに抱えられてようやく産院へと到着出来た。


 そこではみんなが待っていてくれた。


 産科病棟のすぐ横には保育園があった。元は駐車場があった場所だそうだ。

 その保育園の横に飛行機の胴体。翼は森で完全にもぎれたそうだ。おかげで収まりが良くなったと喜んでいた。


 機内にはギャレーもあるし、飛行機の客席がレストランっぽくて産院のママさん達にウケているそうだ。


 産科病棟の正面にスペースが開けられていてそこに仏間を設置した。少し横に置かれていたキッチン、トイレ、風呂も、今までと似た配置に置き直していた。


 そう言えば、産科病棟の個室は全室バストイレ付きだそうだからこっちのトイレや風呂は使わないのだろうと兄貴と話していた。



「最近の産婦人科って凄いんだね。まぁ俺は27歳未婚引きニートだからよく知らないけど」


「うちは普通に街の産婦人科で出産だったから、そんな豪華な入院設備はなかったなぁ」



 そうなんだ。時代じゃなくて病院にもよるのか。


 拠点がグレードアップした。人も増えた。特に若い(若すぎる)者たちが多い。

 地球に戻れる日は来るのだろうか。今はどうでもいいや。疲れたから俺の陣地(仏間押入れ)に篭りたい。



 えっ? これから歓迎会?

 それ、参加しないとダメですか?(泣)

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