21話 森の中の仏間
「今更だけどお隣さんもお向かいさんも居ないな。どこにいったんだろ」
「どっちかと言うと、うちが引っ越したんじゃないか? 緑豊かなこの場所に」
「兄貴……前向きだな」
「そうよ、俺はいつもポジティブシンキングなんだよ」
うちの家、仏間の部分が失くなった状態で残ってるのかな。お隣さん、びっくりだろうな。
仏間が消えて、うちが崩れたりしないといいけど……。
「ほら、清見。メシ食え。サバ缶とイワシ缶どっちにする?」
「サバで。イワシは小骨が気になって苦手」
「缶詰のは骨まで柔らかいぞ? あと……白飯は、あ!レンジが無ぇ。台所ごと無いからな」
「えっ、じゃあ米無し?」
「いやいや大丈夫だ。水を入れると出来るのもある。流石だな、お袋。ピラフと炊き込みどっちがいい?」
「んー、ピラフで」
兄貴が準備をしてくれてる間、俺は裕理と遊ぶ。と言っても、おもちゃは居間だから、無い。
仕方がないから語らうことにした。
「裕理くん裕理くん、お気に入りの毛布もわんわんも無いんだよ」
「だぁー」
裕理が居間のあった方向に手を伸ばす。賢いなぁ。あっちが居間で、居間にぬいぐるみや毛布があった事もしっかり覚えているんだ。
赤ん坊って周りが思うより賢いのかもしれない。
あ、だったら。
「裕理くん、スキル貰った? 俺はね、回復と仏間。あの時裕理くんも一緒にのんのんしていたから、もしかして裕理くんも仏間スキル貰った?」
「ダァダァダァ」
「うん? なになに、もっと凄いスキルを授かっただと!」
「ダァァ」
「えっ? ジョブが魔導士? 魔法が使える? それは凄い」
「ダァダ」
「俺はしがない回復士なんだ。でも魔法職同士仲良くやろうぜ?」
「ずるいぞ。俺も仲間に入れろよ」
「えー、だって兄貴は脳筋剣闘士じゃん」
「遣唐使? 何でもいいけどメシできたぞ。裕理くんもスープ出来たぞぉ」
「はーい」
「ダッ」
俺らはいつもよりずっと早い夕飯をとった。昼抜きだったからな。
とは言えまだ6時を少し回った時間だったがとりあえず布団を敷いて転がることにした。
なんか物凄く疲れてしまったのだ。
布団は仏壇側で押入れの近くに敷いた。何しろこの家……家というか仏間の一方は障子扉だし、もう一方は襖。
つまりどちらも紙で出来ている。
仏壇の後ろは壁で押入れの奥も壁だった。なのでそっち寄りに布団を敷いて寝る事にした。
襖も障子も、当然のことだが鍵はない。誰でも開けて入ってこれる。それどころか、森の奥から猪とかが突進してきたら襖ごとぶっ飛ばして入ってこれるのだ。
俺らには隠れる場所がない。雨風が防げる天井があって良かった、くらいなのだ。
雨が吹きつけたら障子なんて直ぐに破れてしまう。柱はあるけど壁だってそんなに分厚いわけじゃないよな。
「兄貴……この家って築何年だっけ? 母さん達の前の婆ちゃん達も住んでたんだよな」
「ああ。あちこち直しているけど築80年以上はいってるかなぁ。けど大丈夫だ。清見は何も気にしないでいい。もう寝ろ」
気にするなって言われても気になって眠れないよ。疲れてるんだけど考え出すと止まらない。
「明日は森を探索する。灯り消すぞ」
兄貴はそう言って頭元に置いていた蝋燭(仏壇の)を消した。
蝋燭の無駄な消費を防ぐためもある。
この先、いつ救助が来るのかわからない。消耗品は大事に使わなくては。
真っ暗な部屋でも外の月明かりで割と見えるもんだな。
てか、この世界にも月あるんだ。やっぱここは地球のどこかなのかもしれない。
ドンドンドン
「すみませーん」




