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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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14話 車バス電車

 あの日、あの時間の車、バス、電車、船、飛行機などの乗り物はその一部を切り取られて、鉄の塊としてその地へ落ちた。

 切り取られたそこには『空間』という守りを与えられた幼な子が、居た。



-----(国道にて)-----


 通勤ラッシュでいつものように混み合う国道に車を走らせていた。駅前の保育園に息子を預けてから駅向こうの大型店で働いているから。

 後部座席のチャイルドシートには今朝は不機嫌な息子がぐずりつつおさまっている。


 一瞬、ほんの一瞬、瞬きをしただけなのに、景色が変わった。

 こんな事があるだろうか?車は混み合った国道ではなく樹々の中に、しかも停まっていたのだ。


 まさか、居眠り……?眠ってしまった?

 ハンドルは握ったまま。後ろを振り返ると息子は寝ていた。

 顔を前へ戻す。


 ここ、どこ。


 今の今まで、駅に向かって国道を走らせていたはず。前後の車も見当たらない。それどころか道さえもない。


 ここ、どこ。


 記憶喪失?事故らなくて良かったと思う反面、何でこんな場所に車を停めたのか、全く思い出せない。

 慌ててスマホを取り出したけど圏外だった。


 なんで、こんな森に居るの? ここ、どこ?


 樹々の合間はそれなりに広いけれど道はない。どうやってここに入ったのかしら。覚えてない。

 車のナビも機能していない。エンジンも止まってる。かからない。ライトも付かない。


 運転席から後部座席の息子を振り返る。大丈夫。寝ているだけよね。息はしている。

 息子に触れようとした自分の手汗が酷いのが目に入った。落ち着かなくちゃ、思い出さなくちゃと思うほど混乱してくる。


 どうしよう。何度スマホを見ても圏外のまま。


 車から出て助けを呼びに行く?

 でもここがどこかわからない。どっちへ行けばいいの?それに息子を連れてこの薄暗い森を彷徨い歩くのは無謀すぎる。かと言って息子を車に残してなんていけない。


 どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 ハンドルを握ったまま頭を押し付けた。クラクションもならない?

 何で?

 何度もクラクションを叩く。ならない。何で!


 助けを呼べない。

 とりあえず震える手で椅子の背を掴んで後部座席へと移動した。そしてチャイルドシートから息子を抱き上げてギュッと抱きしめた。




-----(バス)-----


 いつもと同じ時間のバスだけど、数日前から苦労なく座れるのがありがたい。学生が春休みに入ったおかげでバスの車内は若干空いている。

 おかげで子供を抱いた状態で優先席に座る事が出来た。いつもこうならいいのに、と、ぼんやり思う。


 息子も窓から外が見れて機嫌がいい。バスは狭い住宅街を器用に抜けて走っている。

 小さな子供を連れているとどうしても荷物が多くなってしまう。子供と一緒に膝に乗せていたバッグがずり落ちそうになり、慌てて引き上げ……ようと下を向いた瞬間、眠気に襲われたのか寝てしまったようだ。


 息子の泣き声にパチっと目が覚めた。慌てて息子をあやした。

 バスの車内のような狭い空間で子供の泣き声は周りの迷惑になる。早く泣き止ませなくちゃ。


 息子を揺すりながらふと目にした窓の外、風景がおかしい。普段のバスの経路にこんな森林公園みたいなとこ、あったかしら。

 しかもいつの間にかバスは停まっていた。


 事故?

 まさか、運転手が道を間違えた?


 他の乗客も気がつきザワザワとし始めたみたい。通路に立っていた人も窓に顔を近づけて外を見ている。

 具合でも悪いのか、通路に座り込んでいる人もいる。


 何か変。さっきまでは普通に走っていたわよね。ちょっと寝てしまってた間に何があったんだろう?

 前の方の乗客が運転手に問いかけている。


「申し訳ございません。エンジントラブルのようで現在バスが動きません」


「エンジントラブルよりここはどこだよ!」


 運転手の説明に被せるように怒鳴る声も聞こえた。


「私も何が何だか……」


「なんだ、ここ、どこなんだ」


「さっき確かに3丁目交差点前を通り過ぎたわよね?」


「運転手が道を間違えたんじゃない」


「スマホが通じない」


「えっ?あ、本当だ。なんで圏外なん?」


「俺も圏外だ」


 バスの中の騒めきが増していく。私も首に下げていたスマホを手に取った。

 圏外。


「やばいな、遅刻しそうだけど連絡も出来ん」


「運転手さん、バスまだ動かないの?」


 運転手が何かもごもごと言いながら運転席から外へと出ていった。バスのエンジンを見にいったのかな。


 乗客がイライラしてきているのが伝わってくる。それでも運転手が外から戻ってくるのをみんな待っている。


「おいっ、まだかっ!」


「どうなってるんだよ!」


 窓から運転手を怒鳴る人がいた。気持ちはわかるけど運転手を怒っても……と言うか、本当にここ、どこなの。

 もう今日は仕事は休もう。保育園もお休み。バスが動いて駅に着いたら息子とそのまま遊びに行っちゃおうかな。


 なんて気楽に考えていたんだけど、乗客に責められた運転手がヒステリックに叫びながら何処かへ走っていっちゃった。

 助けを呼びに行くとかなんとか。


 バスの中は逆にシンとした。運転手さんを責めたおじさんがバツの悪そうな顔をしている。


「なぁ……おかしくないか? 俺は吊り革に捕まって立ってたから絶対に起きてたんだよ。でも、一瞬意識がなくなって膝がガクンとなって目が覚めてさ。そしたら景色が変わってた。ほんの一瞬だぞ? 住宅街から森林にさ……」


「自分も同じだ」


「俺もだ」


 立っていた人達から声があがった。自分もだけど座ってる人は元から寝ていたりスマホしてて気がついたら……って感じなのかな。


「ちょっと見てくる」


「俺も」


 そう言って乗客の何人かがバスを降りて行った。


 戻ってこない。

 1時間ほど経ったけど運転手も乗客も戻ってこない。

 どうしよう、どうする?そう言いながら、他の乗客もバスを降りていった。


 残ったのは私のような子連れと高齢者が数名のみ。ここに居るしかないじゃない。

 あー、どうしよう。




-----(電車)-----


 ありえない。おかしい。明らかに異常事態。

 そもそも日本の電車は今のところ線路の上を走るものなのよ? それなのに何で、何で車両が森の中に突っ込んでいるのよ。

 おかしいから!


 何が起こってこうなったの?

 しかも前から8両目、運転手も車掌もいないただの1車両が最初からそこにあったみたいに、木に囲まれた場所に置かれている。

 私達はもちろん、その車両に乗ったままなんだけど。


 えっ、あれ?なんかそんなドラマなかった?あれって実話なの?

 あれが実話かどうかは問題じゃない、今のこの現実が問題だわ。


 7両目も9両目も消えて、じゃなくて多分、8両目が消えてここにあるのよね。

 恐らく全員一緒に気を失ったと思う。私は子供を抱いて優先席に座っていたまま気を失った。寝たんじゃない。寸前までしっかり起きていた。だってカバンからミルクを取り出そうとしてたから。


 目があいて、足元に落ちたカバンを拾いあげた時に見た光景、車内の全員が寝ていた、立っていた人は通路に倒れていた。

 驚いたけど、倒れている人を起こす前に電車が停車している事に気がつき、その停まってる場所が駅じゃなかったのでさらに驚いた。




 そうして気がついた乗客はしばらく騒いだ後、電車のドアをこじ開けて外へと出ていった。

 ここが何処かもわからないけど、救援を呼んでくると言って数名がいなくなった。


 数時間が経ち、ここに居ても水も食べ物も無いと言ってまた数人が出ていった。


 残った皆で話し合って出て行く事を決めたけど、私は生後5ヶ月の息子を連れて森を行く事は出来ない。だから、ひとり残る事にした。ひとり……息子とふたりか。

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読み進めれば読み進めるほど、ハードモード過ぎて、ツライ…
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