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俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?  作者: くまの香


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1話 突然のテンプレ

 ここにひとりの疲れたサラリーマンが居た。


−−−−−−−


 いつものようにだるい朝、駅へ向かう道を歩く。

 会社、休みてぇぇ。電車止まってくんねえかな。そんな思いが頭をよぎる。ちょっとした遅延でなく思いっきり止まってくれたら、会社に連絡出来るな。


『電車が止まってるんで今日休みます』

 うん、仕方ないよな?だって止まってるんでんだから。いや待て、あのクソ(上司)の事だから歩いて来いとか言いそうだ。


 ここらは都会と違い、他の路線に乗り換えなんて出来ない。そもそも他の路線が無いからな。

 そうきたら『っかりましたー。行けるとこまで行ってみます』とか言って駅前のマックでダラダラしよう。


 俺の中ではもう電車は止まってる一択なんだが、地震、起きないかなぁ。地震くらいじゃダメか、隕石が落ちてくるくらいの事がないと……。


 そう思って空を見上げるが、綺麗に澄んだ青空だ。

 そう言えばいつも騒がしい学生どもやガキ(小学生)がいないな?

 あぁ、そうか。世間は春休みか。今日が3月27日だった事を思い出す。


 と同時に決算事務も思い出した。日中は営業で外回り、その後サビ残で事務だ。面倒くせぇ。会社が小さいとそんな事までやらされる。てかあのクソ(上司)、俺だけに面倒くせぇ仕事を回してないか?


 いっそ、会社辞めるか。もう5年頑張ったからいいよな?

 つっても次の職がなぁ。ハロワで暫く失業保険貰うとしても次の職が見つからないと食いっぱぐれる。


 目の前を歩く高校生はいつのも制服ではなく私服だ。春休みだもんな。いいよなー、子供は親が養ってくれるから。

 高校生の3人は男ふたりと女ひとり、きっと駅で待ってる女がもうひとり、ダブルデートかよ!親から貰った小遣いでデートとは!と勝手な妄想が止まらん。


 自分の地味だった高校時代を思い出して少し悲しくなった。


『くっそぅ、電車止まれ、電車止まれ』

 お前らの幸せを阻んでやるぞ。そう思いながら前を歩く3人を見ていると、ふと気がついた。


 何だ?……あれ。


 3人のうちのひとり、少し後ろを歩く男の頭上にゆっくりと何かが降ってきた。

 降ってきたと言うより、降りてきた?


 黒い、小さい丸い何か。4〜5メートル程後ろを歩く俺からはハッキリ確認は出来なかった。最近視力が落ちているのを放置していたせいもある。

 その黒い物、鳥じゃない。虫にしては大きい何か。羽も無い、だいいち羽ばたいていない。


 ただ、スゥっと男子高校生の頭上に降りてきてそこで止まっている。


 何だ?あれ。


 3人は気付かず歩いている。頭上のそれも、一緒に移動している。

 前を歩いていたふたりが話しながら振り返り、頭上の異物に気がつき会話が止まり、足も止まる。


 その時、頭上の黒い物体は、回転し始めた。3人は混乱しつつ飛び退くが黒い物体は付いてくる。

 回転のスピードが上がったのか、最早回転しているのかもわからない。ただ、黒い物体が広がっていくのがわかった。



「おいっ! 離れろっ! そこから離れろ!」



 俺の声が聞こえたのか、パニックになりながらこちらへかけてくる。

 いや、待った、俺にはどうにも出来ねぇ、来んな!そう思うのに俺の足はそこを動けなかった。

 動け!動け、俺の足!


 俺に女子高生がぶつかってきた。その時には男子ふたりもだんごになりすぐ近くまで来ていた。


 黒い渦はどんどんと広がりまるで空間を捻じ曲げているように、景色も渦巻いていく。ふたりの高校生が捻れてひねり曲げられ、渦の中へと吸い込まれていく。


 次の瞬間には女子高生がその渦へと引き込まれて行くが、彼女は

俺の服を掴んでいた。凄い力で引っ張られて俺も渦の中へ、ぐにゅんと肉団子になり意識を失った。





 目が覚めた。


 俺は石がゴロゴロと転がる地面に倒れていた。あの駅へ続く道はこんなに整備の悪い道路ではなかったはずだが。


 そう思いながら身体を起こすと、あー、ヤダヤダ。知らない場所。

 そう、俺は覚えている。気を失う前は駅へ続く道を歩いていた。目の前を歩く親のスネ齧ってる幸せそうな高校生トリオが羨ましくて、つい妬んだんだ。


 電車よ止まれ、とは願ったけどさ、何なんだよ、この状況。

 あの黒い変な物体は俺のせいじゃないよな? そもそも空間を捻じる力とか無い。今流行りの呪物とかも持ってないからな。勿論、呪術師とかでも全然無い、全く無い、俺はごく普通の疲れたサラリーマンだ。



「ステータス!」



 近くから誰かの声が聞こえた。顔を向けると、さっきの高校生だ。いや、後ろを歩いていたらから顔はよく覚えていないがあんな服装だった気がする。



「あれ? あれ?」


「えっ、ステータス出たのか?」


「あんたまた深夜アニメに影響されてんでしょ! 前は忍者になるとか……」


「ば、ばば、ばか、いつの話だよ! あれは小5の時だろ」



 は、はーん。俺はわかった、わかっちまった。


 これは、あの界隈(どの界隈)でありがちのアレだろ。異世界に転移したやつ。

 俺は、異世界に転移、したのか?それ以外考えられない。


 自分の服をペタペタと触り、駅に向かっていた時と同じである事を確認した。そして脇には通勤鞄(たいしたもんは入っていない)。

 これは『転生』じゃなくて『転移』だな。転生なら異世界人に生まれ変わるはずだ。俺のままの転移か。


 さっき「ステータス」と声をあげた少年は俺と同じ匂いを感じた。オタ……ごほっ、これは自分にも刺さる。そういう方面に詳しいやつだな。


 男子ふたりは女子高生に転移やら異世界やらを一生懸命説明していた。一般人に理解してもらうのは大変だな。

 そんな事を考えつつぼんやりしていると、突然、3人がこちらを見た。


 俺も向こうを見ている。見つめ合う3人とひとり。



 そう、俺は最初、『巻き込まれ召喚(転移)』だと思った。


『巻き込まれ召喚からの〜異世界』系の小説ではテンプレの登場人物、武道を嗜む体育会系男子、頭脳を武器とした秀才生徒会長、そして美貌の少女。

 だいたいがその3点セットで、それに巻き込まれたよれよれサラリーマン。

 今や、異世界転移小説の王道だ。


 そして俺は、巻き込まれたよれたサラリーマンだ。(ほっとけ)


 ……にしては、主人公3人組が地味目……通り越して完全に地味?ガタイの良い武道を極めた……やつは、居ないな?

 天才頭脳……の、持ち主っぽいツンデレイケメン高校生もおらんぞ?


 ふたりの男子学生を観察するが、通勤駅のホームにいつもゾロゾロいる高校生の団体の中の一部。運動部のような活気もみなぎっていない。

 これ、映画なら地味顔俳優のダブル主演か?


 そして女子高生……女性に失礼な事を言うつもりはないが、深窓の御令嬢とか何とか財閥のお嬢様……には見えない。待て、実際にそんな人に会ったことはない。実際はこんなものなのかもしれない。ブスではないが普通中の普通。


 俺は自分を棚に上げて何と失礼な発言(口に出していないが)をしてるんだ。

 うんうん、十分かわいいお嬢さんだ。口に出すと変態と間違われるから言わないが。



「……小宮くん、何かあのおっさん、キモい」



 心を読むスキルか!



「倉田さん、解析スキル取ったんだ」



 おお、やはりスキル持ち!

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― 新着の感想 ―
解析スキルじゃなくて、女子高生のスキルだと思うww
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