第316話 捜索開始
前回までのあらすじ
ロス、アレクシス、魔王、マジノ、スピットファイアは、ラリアとホッグス少佐、そして謎のエルフと共にブラックエッグに乗り込んだのであった。
ブラックエッグに囚われたパンジャンドラム、ウォッチタワー、ナヤートにトンプソンとアールフォー。
そして奪い去られたエンシェントドラゴンの卵。なくなったヴァルハライザー。
問題は山積みなのであった。
玄関から入る際にも何の妨害もなかった。
ロビーの左右に廊下。窓は全てステンドグラスで、虹色の光を白い床に落としていた。
ロビーの階段はなかなかに前衛的だった。吹き抜けのロビーのずっと上まで、幾つもの階段が乱雑に伸びている。中にはどこにもつながらない、ただ壁にめり込んでいるだけのものもある。
《ウェイブスキャナーのスキルを発動しました》
転生者全員が同じスキルを発動させた。
波動探査により城内の構造を把握しようとしたが……。
「あっ……はっきり見えませんね……?」
そう言ったのはハルだった。
《ウェイブスキャナー》は発した波動の反射により立体の構造を脳内に地図として描き出すことのできるスキルだ。だが俺の頭の中には、ロビーと、左右の廊下それぞれの、せいぜい10メートル程度の空間が理解できるだけ。
魔王が言った。
「うむ……調子が悪いな」
転生者たちの顔を見やってみれば、みんないぶかしげにしていた。
エルフが辺りをキョロキョロしていたが、
「何かの妨害魔法が使われてるのかしらん。魔力の気配を感じるわね」
そう言った。
俺たちは顔を見合わせる。
「さて……ここからどうします、ホッグス少佐?」
アレクシスが、俺の背中の魔力供給獣タンクに乗っているホッグスに尋ねた。
「む……そうですな……」
「私たちは地形を把握するスキルを持っていますが、どうもここでは機能しないようです」
「はい。内部の構造がわからないとなりますと……」
「急ぎましょう少佐。2時間しかありません」
「は、はい……」
ホッグスはどうやら俺の後ろで、ロビーの吹き抜けを見上げたり廊下を見回したりしているようだった。
俺はポケットからコインを1枚取り出して、親指ではじいてから床に落とした。
床に跳ねて高い音がした。吹き抜けに少しだけ反響した。転生者たちがそれを不思議そうに見ている。
コインはしばらく回転していたが、やがて止まって倒れた。コインの図柄は見慣れないしよくわからない。俺は言った。
「表だな。ということは左だ。いこう」
そうして左の方の廊下へ歩き出す。
「お、おいロス……」
「ちょっと、アラモスさん! 少佐の指示を……」
俺は1度立ち止まり、
「少佐に聞いてどうするんだ」
「えっ、だって……」
「ここにくるのは少佐だって初めてなんだぞ。尋ねられても困るだろう」
「いや、ロス、私は別に……」
「アラモスさん、ホッグス少佐は軍人です。プロです。ここはお任せした方がいいでしょう」
「言ったろう、少佐だってブラックエッグのことなどわからないんだ。軍人といっても超能力者じゃない。ひとりに丸投げしてどうするんだ」
「ですが!」
「それに俺たちは寄せ集めで、兵士でもない。少佐だってそんな奴らのリーダーを急にやれと言われてもやりにくいだろう。おまけにこれは俺たちの問題だ。他人任せにするようなことじゃない」
また歩き出す。
「ですが……何もそんな不用心にズカズカと……!」
「2時間しかないから急げと言ったのは君だぞ」
「罠とかあったら……」
「じゃあ君らだけ俺から距離を取って歩けばいいだろう。俺が地雷を踏んだら、君にもわかるようにここに地雷原があるぞって大声で叫んでやるよ」
ステンドグラスの光の中をどんどん歩いていると、後ろから魔王に追い抜かれた。
「即断即決はいいことだが子供を連れているのに無茶をするな。さいわい我輩なら固有スキルのおかげで死なないだろうから、我輩が囮をやろう」
そう言って魔王が歩く。たしかに魔王はどんな体が損傷しても死ぬことはない。適任かも知れなかった。
「もう……何ですかあの人勝手なことして……」
「ま、まあまあ……」
後ろでマジノがアレクシスをなだめているようだ。少し振り返ってみると、エルフが最後尾につくようだった。
ハルは俺の少し後ろ。ハルが言った。
「ロスさん、何から片付けます? 魔女? ドラゴンの卵?」
「当然先に他の転生者だ。君の両親……」
「ナヤートちゃんが心配です。あの子、女の子だから……」
ホッグスが言った。
「ではそれを最優先にするのである。どこに囚われているかわかればいいのであるが……」
「あっ、ふたてに別れて探すとか……」
「俺としてはバラけるのはもういい加減こりたな……」
すると、スピットファイアが言った。
「よっしゃ。じゃあ僕だけコソコソねずみみてーに隠れながら探してくるぜよ。僕は小さいから目立たンだろ」
「ヌルチートがいて見つかりでもしたら君は即死だろう」
「ガハハ僕は死ンでも何度でも生き返るンでね。建物の外は冷たい風が吹いてる。そのマナでクールに復活するさ。そンでまた戻ってくるさ」
言うが早いかスピットファイアは天井の右隅へ飛ぶと、隅に沿って先の方へ飛んでいった。廊下の先には右へ曲がる角があるが、少しばかり止まって角の向こうを確認するような動きを見せると、すぐに奥へと消えた。
我々も遅れて角を曲がる。
少し歩くと、扇状にわかれる5つの別れ道。
1番左はゆるい左カーブ。
2番目は下り坂。
真ん中は直進。
4番目は上り坂。
5番目は右曲がりのカーブで先は見えない。
「どうするロス。またコインで決めるか?」
魔王がそう言う。
スピットファイアが1番目の左カーブを曲がっていったのが見えた。では我々は残りの4本のどれかだ。
すると、最後尾からやってきたエルフが言った。
「よし、ニンポーを使うか」
俺たち転生者がそろって振り返ると、彼女は指を組み合わせて何かブツブツ呟く。
「うぉーむ、臨兵闘者皆陣列在前……喝!!!」
《ミステリアス・エルフはビフォーシャイニングのスキルを発動しています》
エルフの体が金色に輝いた。その光が3つにわかれていく。
そうして、3人の光のエルフができあがった。シルエットこそエルフのものだが、目も鼻もないのっぺらぼう。
「余りの道にはこの分身をいかせるわ。戦闘能力は全然ないんだけどね。何か見つけたり、敵と遭遇したら私にテレパシーで知らせてくれる」
「む、とすると」ホッグスが言った。「敵がいた場合は……」
「ええ。捕まえた転生者の見張りと考えてもいいかもね」
そしてエルフは、光エルフをどの道に進ませるか俺に尋ねてきた。
俺は左以外の道を眺め……、
「真ん中だ。まずは1階を探そう」
そう言った。
ラリアの線画に、ツイッターのフォロワーさんが色を塗ってくれました!
活動報告に画像を載せてあるのでぜひ見てね!




