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第237話 転生者の会合


「みなさんよくお集まりくださいました。あらためて自己紹介させていただきます。私はアレクシス・アライドと呼ばれています。前世の名は荒井(あらい)(かなめ)といいます」


 アリー家別邸のリビング。

 俺たち転生者 (プラスラリア)が中央のテーブルを囲みソファに座ったあと、アレクシスがそう切り出した。そして互いに名を名乗るよう提案した。


「パンジャンドラムだよ」

「ウォッチタワーだ」

「あっ、ハル・ノートです……」

「アールフォーと申します」

「トンプソンと……呼ばれています」

「俺はマジノ」

「………………ナヤート」

「俺はロス……ロス・アラモスだ」


 それからアレクシスはこれまでの経緯の説明を俺に要求してきた。

 みんなに見つめられながら、俺は話した。


 転生したのちラリアと共にパンジャンドラムと出会い、ヌルチートに捕らえられたハルを解放(曲がりなりにもだ)したこと。

 ガスンバでウォッチタワーと帝国軍の問題に出くわし、魔女の奇妙な計画と、スピットファイアという妖精から伝えられたこと。

 この異世界はスピットファイアの『中の人』である吐院火奈太(はいんかなた)という少年が創ったものらしいということ。

 この世界には終わりが近づきつつあり、全ての転生者を見つけて脱出するようスピットファイアから伝えられたこと。


 そしてその脱出口が、ゴースラント大陸にあるということ。


 俺以外の全員はそれを黙って聞いていた。パンジャンドラムもウォッチタワーも、そしてハルも特に口を挟まず、補足説明だとかもしてくれなかったものだから1人で喋り続けることになり、かなり喉が渇いた。


「……そういうわけだ」


 俺が喋り終えると少しの間沈黙が流れた。

 みな神妙な面持ちでうつむいている。


「ありがとうございました、アラモスさん」


 アレクシスはその沈黙を破り、


「今お話にあったとおり、やはり我々転生者というものは、元の世界日本に帰ることが可能なようです。私もそうではないかと考え、なんとか脱出する方法を調べていたのですが……」


 パンジャンドラムが言った。


「あんた知ってたの? そういう方法……つーか、可能性があるってこと」

「ええ。たしかにはじめは面食らいましたが、やはりここは吐院火奈太君が創り出したヴァルハライザーの世界だと、そんな気はしていたんです。覚えていますか? 私が絵本を読み聞かされたという話」


 パンジャンドラムはうなずいた。

 アレクシスが異世界で物心ついた時の最初の記憶のことだろう。


 それはいいのだが、俺はパンジャンドラムの隣りに座っているマジノの様子が気になった。

 彼はうつむいて、両手の人差し指をこめかみに当てている。そうして目をつぶり眉間にシワを寄せている。


 アレクシスが言った。


「その絵本、この世界の成り立ちについて描かれた本なのですが、ちょっと変わった本だったのです」

「って言うと?」

「異世界の成り立ちは、ヒューマンとエクストリーム・エルフとの戦いにより世界が滅び、それから再興されたということはご存知ですか?」

「まあね」

「それが定説なのですが……私が最初に読んだ本では内容が少し違うのです」


 2人が話している間もマジノはこめかみを揉んでいる。体も前後に揺すり始めた。


「私が読んだ本には、ヒューマンとエクストリーム・エルフが別の世界からやってきたとあったのです。もともと別世界で行なわれた戦争によって世界が崩壊し、三賢者によって救い出されたヒューマンたちが、今のこの世界にやってきたと」


 首をかしげたパンジャンドラムにアレクシスは続けた。


「それから私は様々な本を当たってみたのですが、三賢者が別世界からの来訪者という設定の絵本や、歴史学者の説は見当たりませんでした」

「……じゃつまり、作者のオリジナル設定ってことじゃ?」

「そう思って、何年かしてから絵本の作者を直接訪ねてみたのです」

「行動派だね」

「作者の方が言うには、ある時夢でそういう話を見た、だからそれを本にしてみたと」


 ウォッチタワーが口を挟んだ。


「え……じゃあたんなる妄想じゃねえのかい……?」

「いえ。その時私は思い出したんです。吐院火奈太君も同じことを言っていたと」

「火奈太が、かい⁉︎」

「ええ。そんな夢を見たことがある。はっきりと、現実みたいな夢だったと。そして……」

「そして?」

「……その夢をもとにして、ゲームを作ろうと考えたそうです」

「……ゲーム?」

「自分自身が仮想空間の中に入り込んで遊ぶ、VRゲーム。それを実現するために造ったコンピューターこそが……」


 アレクシスはひと息置いて、言った。


「ヴァルハライザーだと」


 みなが無言で顔を見合わせていた。

 ラリアは通常モードで俺の隣りに座っていたが、話の内容についていけないのかキョロキョロとみんなを見回していた。


 俺はこの子を1度部屋の外へ出すべきかと考えた。

 アレクシスはヤマト皇太子と共にこの別邸を訪れていた。彼は今別邸のどこかにいたはず。

 預かってもらうべきなのでは。

 アレクシスがしている話はつまり……だいたいそもそもがだ……この異世界が、吐院火奈太少年の創り出した仮想の、ゲーム空間……。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 そう言ったのはマジノだった。


 先ほどまで頭をいじくっていた彼だったが、ソファに浅く座り直し、アレクシスの方へ前のめりに向いている。


「えっと……今言ったのは……ヴァルハライザー? でよかったか? それに……吐院火奈太だって?」

「……ええ、それが……?」

「すまない、あなたのお名前、もう1度教えて欲しい」

「アレクシス……」

「いや違う、前世の、本名の方!」

「はあ……荒井、枢ですが……」


 マジノは目を見開いてアレクシスを見つめ、言った。


「……あなたはひょっとして…………経産省の荒井さんか……⁉︎」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 話がでかくなって来た? リアルが上位世界という訳ではない可能性もありのような [一言] 最近エロフが大人しいのが怪しい
[良い点]  何やら受信した。出来た。子供が作った浮かぶ脳。正気が失われそう。親はどう思っただろう。子供が頑張って作ったのが生っぽい人工脳。しかも高性能。上手に出来たね。すごく脳だね。頑張った子を褒め…
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