表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/20

エピローグ

本日投稿二話目です。

ここから見る方はご注意ください(´∀`)



本当のウソは……


 

 ざぱぁん。

 波が、浜に打ち上げる音が静かに聞こえてくる。


 ここは、遥か南にある常夏の無人島。

 サクたちは、宇宙船アルデバランに乗って亜空間ワープを行った上でこの島に到着していた。


「ねぇねぇマリィ! ここ見て、青い魚がいるよ!」

「ええ? あ、本当だ」

「スキありぃ!」パシャ。

「きゃっ⁉︎ み、水をかけるなんて卑怯だぞ!」


 水辺で遊ぶマリィとフリル。水を掛け合ったりしながら、仲良さげにじゃれあっている。


 サクは早速手に入れた《神撃の雷燼ラディヴィナコメディア》を、アルデバランに組み込もうとしている。

 本人曰く、「やっとまともに電気が使えるようになる」とのこと。手に入れた十億エリルも使って、さらにアルデバランに改造を施すつもりらしい。



 そんな連中を眺めながら、ラストは海水に足をつけてぼんやりと遠くを眺めていた。今の自分の置かれた状況が、なかなか信じられなかったのだ。

 自分は夢を見ているのではないか。そんな想いが今も心の中に残っている。

 だが、無邪気にはしゃぐマリィたちや、嬉しそうにアルデバランを弄るサクの姿を見て、ようやく安堵する。


 ──あぁ、自分はついにやりとげたのだ。


 それにしても、とラストは改めてサクの様子を眺める。

 サクは独り言をぶつぶつといいながら、ずいぶんと楽しそうにアルデバランに手を入れている。

 その様子は、まるで──。


「──まるで、おもちゃを手に入れた子供だな」

『ほんっとそうよねぇ』


 ラストの独り言に返事を返してきたのは、いつのまにか傍に来ていたイータ=カリーナだった。実体がないくせに水着姿になり、ラストの周りでプカプカと浮いている。

 どうやら彼女もサクが工作・・に夢中になるあまり、相手にされなくなってしまったようだ。不満げに口をとがらせている。

 放置された者同士、妙なシンパシーを感じてラストは微笑んでしまう。


『ところでラスト、ちょっと聞いてもいいかしら?』

「ん、なんだ?」

『あたしね、一つ疑問があるのよ』

「疑問?」

『ええ。さっきあたしとサクはあなたの《天をも見通す目アマテラス・ヴィジョン》を再構成したじゃない? そのときに分かったんだけどさ、あの術に、あなたが言うほど明確に未来を視る能力は無かった・・・・のよ』


 精霊王の問いかけに、ラストは返事をしない。黙ったまま足元の海水を手で掬い上げる。指先から零れ落ちる海水は、日の光を浴びてきらきらと輝いていた。

 イータ=カリーナはかまわずに話を続ける。


『あたしの見る限り、《天をも見通す目アマテラス・ヴィジョン》の能力は、はせいぜいぼんやりとした未来の映像を見せるくらいだった。あなたが言うほど具体的な映像は、あれでは見れない。ラスト、あなた本当は・・・・・・なにを視た・・・・・の?』

「……イータ=カリーナはどう思うのか?」

『さぁ、あたしは精霊だから人間の気持ちなんてわからないわ。でも、ただひとつわかっていることがある』


 イータ=カリーナは魅力的な笑みを浮かべながら、ラストの肩に手を添える。


『──あなたが、ヤマトの気を引くために命を懸けた一世一代の勝負を仕掛けて、そして勝ったってことよ』



 精霊王とまで呼ばれた存在からのお褒めの言葉を受けて、ラストは満面の笑みを浮かべた。

 そして、答えの代わりに別の話を始める。


「なぁイータ=カリーナ、知っているか? 人間の女の子ってやつは、年ごろになると自分の運命の相手ってものが気になるんだ」

『……へぇー、そうなの。あたしにはよく分からないわね』

「だから、妾が年ごろの時に、自分の将来の運命の相手・・・・・がどんな人なのか、知りたくなるのも仕方ないと思わないか?」


 イータ=カリーナはきょとんとした表情を浮かべると、目をぱちくりさせて、そのあと何かを諦めたかのように首を左右に振った。


『……やっぱりあたしには理解できないわ』

「そうか、残念だ。……サクには言うのか?」

『言わないわよ。何の得もないし、なにより……』


 ぱちり、とイータ=カリーナはラストにウインクを飛ばす。


『あたし、あなたのことが結構好きなのよ』

「ありがとう、イータ=カリーナ。妾もそなたのことが好きだぞ」

『あら嬉しいわぁ』


 二人の美女は、顔を見合わせて笑った。心が通じ合った友人同士のような、最高の笑い声。

 美しき精霊と一人の美女が顔を見合わせて笑うさまは、この場に一流の芸術家がいればきっと絵にしたいと思ったことだろう。


 一通り笑いあったあと、いたずらっ子のような表情でイータ=カリーナが尋ねる。


『ヤマトはつれないわよ? 大丈夫?』

「心配するな、必ず口説き落としてみせるよ。なにせあやつは、妾の運命の相手・・・・・なのだからな」



 ──それに。続けてそう言いながら、ラストはぱっと両手を広げる。


「恋する乙女は、いつだって可愛いウソをつくものなのだよ」






 『最強の魔術師が、TSして姫様のメイドになった理由』


 ──おしまい。







これにて本作は完結です!

最後まで、お付き合いいただいて本当にありがとうございました!大変感謝です!


感想やブックマーク、評価など頂けるととても嬉しいです(*´∀`*)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 良い物語をありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ