表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
3 恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/201

第95話 光の怒り

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 光は鋭い視線で宏美を睨み付けた。


「俺には理解できないけどさ。あんた、世間体では美人のうちに入ると思ってるみたいだけど、自分をよく見てみた方が良いよ。骸骨並みの外見も去ることながら、性格はゴキブリ並みだ」


 宏美は顔を真っ赤にして目を見開いた。


「ど、どういう意味よ」


「意味?聞きたいの?意味はそのままんまだよ。残飯漁って、図々しく、黒光りな気持ち悪いオーラ醸して、逃げ回って嫌がる人間を、追い回すように飛んでくる。殺虫スプレーをかけてもなかなかくたばらない。油ギッシュで、死ぬ寸前に卵を産み落とし、人をまた嫌な思いにさせる。まだ続ける?」


 光は、にやりと笑うと、宏美の友人に視線を向けた。友人は呆然とした顔で、光と宏美を見ている。


「ついでにあんた。俺は、あんたみたいな女も願い下げだ。誰に紹介されても付き合う気はない。この女のお薦めなら尚のことだ」


 友人は何も言い返せずに顔を赤くした。光は再び宏美に視線を戻す。


「今後一切、俺たちの前に現れるな。また前みたいにハルを追い回すようなことがあれば、今度こそ警察に突き出す。あんた、法は犯していないって言ったけど、大いに、不法行為を犯してるからな。思い当たらないというなら、法律の勉強でもした方がいい。今後、あんたの身の助けになるだろうよ」


 光は美夜の腕を掴んだまま自分達の席に戻ると、美夜の鞄と伝票を掴みレジに向かった。

 光の手は、怒りのためか、微かに震えている。

 本来なら殴りたかったのだろう。しかし、美夜の腕を掴んでいることで、理性を失わないで居たのかも知れないと、美夜は思った。

 レジの前に来ると、ようやく美夜の腕を放した。美夜の腕は微かに痺れていた。美夜は自分の腕をそっと触れる。自分も怒っていたためか、光がどのくらいの強さで掴んでいたのかさえ、覚えていない。


「お騒がせしました」


 光が一言店員に謝ると、男性店員は「いえ」と微笑んだ。


「あの人、よく来るんですけど、いつも横柄で。さっき、お二人が私たちの言いたいことを言ってくれたので、すっきりしました」


 小さな声でそう言うと、光に釣り銭と領収書を渡した。

 美夜が他の店員に目をやると、皆、静かに微笑んでいる。美夜は「すみませんでした」と頭を下げ、光と共に店を後にした。



 店を出ると、光は再び美夜の手を取り、大股で歩き出した。美夜は小走りで後に続く。

 暫くすると、大きな公園に辿り着いた。

 光はようやく美夜の手を放し、ベンチにどかりと座った。背もたれに寄りかかり、深く息を吐き出す。額に浮かんだ汗を、手の甲で軽く拭った。

 美夜は小さく息を切らせ、鞄からハンカチを出すと、額の汗を拭い、光がするように、背もたれに寄りかかる。


 上を見上げると、緑の葉を沢山つけたケヤキの木が、柔らかい風にゆったりと枝を揺らしている。


 不意に、光が笑い声を上げ、美夜は光に顔を向けた。


「中西の言葉、思い出した」


「え?言葉?」


「あなたの立ち居振る舞いが証明してる。分からないんですか?可哀想に。そんなんじゃ、一生、誰とも本当に幸せにはなれないでしょうね」


 光は、美夜が宏美に浴びせた言葉を、美夜の口調を真似て言った。

 美夜は顔を赤くして、自分の手元に視線を落とした。腕に、光が掴んだ手の後が、まだ薄っすらと残っている。


「聞いててすっきりした。……でも、一番嬉しかったのは、里々衣の事を庇ってくれたことかな」


 美夜は顔を上げ、光を見た。

 光は顎を上げて木々を見上げながら、口角をあげた。

 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


「続きが気になる」という方はブックマークや☆など今後の励みになりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ