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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
3 恋

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79/201

第78話 不自然なピクニック

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 女性は、手入れの行き届いたパーマのかかった長い髪を軽く払うと、美夜と美月に向かってにっこりと微笑み、会釈をした。

 美夜と美月も小さく頭を傾け、「こんにちは」と挨拶をする。

 美夜は、自分の頭の先から徐々に血の気が引いていくのを感じていた。


 栄の見合い相手だ。

 

 と、直ぐに分かった。

 商店街の祭り最終日、美夜は雪から栄の見合いについて聞いていた。雪は嬉しそうに話をしており、美夜はさほど動揺せず、その話を聞いていたのを覚えている。しかし、気になってはいた。相手はどんな人なのか、栄はその人と付き合うのか。想いに蓋をしたとはいえ、気になるものは仕方がない。

 見合いの翌日、栄はいつもと変わらない様子で出社していたのもあり、見合いについて触れる事なく過ごしていた。

 美夜自身は気になって仕方がなかったが、自分は見合いについて知らない事になっていたし、当人がいつも通りなのに「何かありました?」と訊くのもおかしいと思い、何も訊かずにいたのだ。


「栄さんの、お友達?」


 女性は栄の腕に触れ、寄り添うように立つ。

 栄はさりげなく女性の手を避けて、「ええ、うちの従業員です。中西美夜さん。こちらは、美夜さんの双子のお姉さんで美月さんです」と、二人を紹介した。

 女性は「まあ、そうでしたの」と言うと、大人の微笑みで「栄さんと交際させていただいてます、柳原宏美です」と自己紹介をした。

 栄が慌てて訂正しようとすると、「そうだ!」と宏美が大きな声を上げ、栄の言葉を制した。


「お二人も、ご一緒にお弁当食べません?沢山作ってきたんですよ」


 そう言うと「ねえ、栄さん、よろしいでしょう?」と栄の顔を覗き込むように、小首を傾げて訊く。

 栄は「ええ」と引き攣った笑顔を作り、宏美から視線を逸らした。

 何とも言えない栄の顔を見て、美夜と美月は顔を見合わせると、再び栄を見上げた。

 宏美が里々衣を呼びに行った隙に、栄は二人に手を合わせ「頼む、何も訊かないで同席してくれないか?」と早口で囁いた。

 二人が返事をしようと口を開けかけた瞬間、美月の足下に里々衣が駆けよってきて、返事をする間も無く話はそこで終わった。


「みじゅちゃんとみゃあちゃんだ!」


 美月はしゃがみ込むと、「ほっ」と太い声を出し、里々衣を抱きかかえて立ち上がる。


「久しぶりだね、里々衣。元気してた?」


「げんきしてた!」


「そりゃあ、良かった」


 美月と里々衣が笑い合っている姿を見た宏美は「とっても懐いてらして。仲良しなんですね」と、どこかショックを受けたような微笑みを浮かべている。

 美月は宏美に微笑み返し、「大事な友達ですから。里々衣は」と答えた。


「まあ、微笑ましいこと」


 宏美は声を立てて笑った。



 五人はレジャーシートを敷くと、宏美が作ってきた弁当を広げ、「お口に合うと良いけど」と笑みを浮かべながら蓋を開ける。


「うわ、すっごいですね。これ、全部一人で作ったんですか?」


 美月は三段重ねになったお重の中身を見て、驚きの声を上げた。華やかで、手の込んだ料理の数々。


「ええ。今日は朝早くに目が覚めてしまって。外を見たら絶好のピクニック日和でしょう。もう、お弁当作るしかない!って思って、張り切って作ったのよ。沢山あるから、遠慮しないで食べて下さいね」


 宏美は終始笑顔を絶やさず答えながら、隣りに座る栄に、自分が取り分けた皿を手渡した。栄は力の無い笑みで皿を受け取る。

 美月は、そんな栄の顔を一瞥すると、眉間に皺を寄せ小さく首を傾げた。


「はい、りりいちゃんの分」


 宏美が栄の隣りに座る里々衣に手渡そうとした。しかし、里々衣は皿を受け取らずに、むすっとした顔のまま首を横に振り、栄の腕にしがみ付き、泣き出しそうな顔をした。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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